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2014年2月25日火曜日

最近の金価格の上昇について

[金価格についての理系人間の私的メモです。読み流してください。]
 2011年夏には1オンス(31.1035g;ca.1トロイオンス)当り1900ドル付けた金価格は、その後急激に値下がりして昨年5月には1200ドルを割った。しかし、金価格は最近急激な上昇を見せ、現在1300ドルを超えている。この動きについて少し考察した。金は昔から、国際的な通貨(の裏付け)という主役的な意味を持っていた。1971年に米国ニクソン大統領が、国際的基軸通貨である米ドル札を不換紙幣にすると宣言したことにより、金(きん)の地位が脇役になったと見るのが普通の(オーソドックスな)見方である。このニクソンショックの時、金価格は一オンス当り35ドルであったが、現在は一時より安くなったとは言え1300ドルを超えている。金の材料としての主な用途は、宝飾品としての他に電子製品などにおけるメッキ用に使われている。(注1)屢々金(AU)と比較される白金(Pt)は、化学触媒、燃料電池などの電極材として重要であり、工業的利用価値は金のそれより遥かに高い。また、金の<埋蔵量+現有量>は約20万トン程度あるが、白金はその10分の1程度しかない。しかし、白金の値段は金より10%程度高いだけである。従って、金はまだ金融界で特別の地位を保持しているのではないだろうか。
 金の価格であるが、1オンス35ドルでリンクしていた頃は、日本円で1グラム当り400円程であったが、1983年に10倍程度になり、その後ドルが安定したためか1000円程度の価格が長く続いた。そして、2005年から急激に値上がりし現在4500円程度になっている。これをBRICSなどの経済発展により、伝統的な金への憧れによる需要増と見るナイーブな見方も可能であるが、基軸通貨たるドルの不安定化の兆しと見るシアリアスな見方もある。
 上に過去20年間の金価格を図示した(http://chartpark.com/gold.html)。ここで注目されるのは、昨年からの急激な金価格の低下である。米国の評論家や有名な投資家は、金の金融上の役割は終わっており、従って安全資産としての価値はなく、今後も値下がりするだろうと言う意見を発表している。その一方で、この金価格低下は金先物を米国(連銀或いはその意をくむファンド)が売って金価格を下げることで、ドルの基軸通貨としての地位を護るためと捉える人もかなりいる。(http://tanakanews.com/130416gold.htm)少なくとも、世界中の主な国家の中央銀行は、外貨準備として金を大量に保有しており、最近も中国などがその量を増やしている様である。次の図は各国中央銀行の金保有高である。
 米国は外貨準備として金を8000トン以上持っていることになっている。ドイツ、フランス、イタリアも2400-3400トン保有しており、外貨準備に占める金の%は70-80あり、日本の数%とは比較にならない。(注2)ここで、ドイツが外貨準備として保有している3400トンであるが、その多く(2/3程)は実は海外に置かれている。米国が預かっているのが1500トンほどあるが、ドイツはそれを自国に移送したいと申し込んだ。 しかし、交渉の結果、自国に移送できる量は米国に保有する量の数分の1以下だったという。ドイツの金は当然、上表中の米国の金保有高である8000トンには、入っていない。従って、米国が通常”預かる”ということばで表現されるようにドイルの金を保管していたのなら、その全てをドイツに移送することも簡単な筈である。このような情況から、本当は米国連銀の地下倉庫は、殆ど空ではないかという疑いを持つ人が多いようである。(http://www.fromthetrenchesworldreport.com/the-frightening-truth-about-germanys-physical-gold-move-pours-out-on-cnbc/318503)これと似た現象として直ぐ思い出すのは、米国国債を米国に買い戻してもらうことは非常に困難であると言う事実である。「借金を返せと言って返してもらえないのは、使ってしまっているからである。それでは、預けてあった金もなかなか返してもらえないことは何を意味するか?」は小学生でも答えが出せる問題かもしれない。
 上の表は2012年における、各国の債権及び債務額である。日本は未だ世界一の債権国であり、米国は世界最大の債務国である。米国は、基軸通貨を発行するので、世界に流れたドルに対応するだけ、海外からドルと交換した海外資産や金を持っている筈である(注3)し、初期には持っていただろう。しかし、それ以降、毎年の経常赤字を裏付けのないドル札で決済してきたのではないかと疑われている。この場合、ドル札は担保なしの借用書に過ぎないので、基軸通貨としての地位が怪しくなれば、米国の金融崩壊ということになると思う。つまり、この数十年米国は、ドル札という紙切れで世界から消費材を買い込み、贅沢をしてきたのかもしれない。
 最近、中国が多量に金を買っていることは知られているが、それと関連してか 元を金とリンクさせて、金本位制に向かう可能性を示唆する経済学者が表れた。米国の金融緩和策(QE3)のテイパーリング(tapering)が始まってから、そして、米国の株価が上昇しても金価格が上昇することは、その経済学者の予言を裏付けている様な気がする。それらが本当なら、金の最近の価格上昇は全く異なった意味をもってくるのである。
注釈:
1)金のナノ粒子が触媒能を持つという研究が発表されている。まだ、研究段階である。
2)日本は外貨準備を殆どを文字通り外貨でもっているので、米国金融への忠誠度は高い。
3)この米ドルが世界に流れるプロセスについては、実は勉強していないので、間違っているかもしれません。

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