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2017年5月28日日曜日

加計学園疑惑に対する官房長官のもみ消し発言は恐怖政治的である&獣医師は不足していない

1)加計学園の今治市での獣医学部設置要求に関して、早期開学は総理の意向であるとして早期許可を要求する文書が存在したと、前川前文部事務次官が暴露した。暴露と書いたのは、菅官房長官が疑惑の否定を裏付ける発言をしたのではなく、逆に情報提供者である前川前次官の人格否定ともとれない発言をしたからである。

この種のやり方は、国家のトップにある内閣総理大臣に行政上不適切な行為があったのではないかと考える者を、門前払いする時にとる方法であり、政治評論家の誰か(サンデーモーニングの寺島実郎氏と記憶する)が言っていたが、恐怖政治を敷く際に用いる方法である。そして、この種の否定の仕方を、我々はすでに森友学園騒動で見ている。

この件について、日本を代表する新聞である読売新聞は5月26日朝刊で、前川前事務次官の発言とそれに対する官邸の反論を詳細に報じている。それらは、前川氏の人格を否定する官房長官の発言の再録を含めて、大本営発表を垂れ流したかのような内容であった。

2)内閣官房の前川前文部事務次官の攻撃の内容:

菅官房長官は、前川前次官が出会い系サイトに出入りしていたことについて、「教育行政の最高責任者がそうした店に出入りし、小遣いをわたすことは到底考えられない」と切り捨て、返す刀で「そのような(加計学園の獣医学部設立申請を急ぎ許可する様に依頼する内容の)文書の存在は確認できない」と否定したのである。(下の図参照)官房長官は相手側をスパッと二度切ったつもりだろうが、その刀は自分自身にも深手を負わすことに気がついていない様だ。

「教育行政のトップが出入りしては行けない場所」とは、社会的に忌避されるべき場所の意味だろう。しかし、そのような場所で働いている人も嘗て教育行政の中で育ち、同じ日本国の行政サービスを受ける権利をもった人間であることを、官房長官は考えただろうか。噂されるように犯罪的なことが行われているというのが国民的常識であるからこそ、「教育行政のトップが、その地位にふさわしくない場所に出入りしていた」と非難出来るのだろう。

もしそうなら、行政全般のトップである内閣は、どうしてそれを放置してきたのか?まるで自分たちの埒外というような発言をする資格があるのか?

日本の内閣は、そのようなところに出入りする人たちのリストをつくり、政権批判が出たときに、そのリストと照合して批判者が含まれていれば、それを暴露することで、政権維持を図っているのではないのか?官房長官の行為は、加計学園の獣医学部設立の許認可のプロセスを正規の姿から歪めたことを示している。正規のプロセスを踏むことができないが故に、官房長官は間違った方法で強引にもみ消そうとしたのだろう。

3)獣医師は不足しているか?

読売新聞26日第13版二面の記事によれば、獣医師会が獣医師は不足していないとして、同学部の新設には反対している。2014年時点で、獣医師免許保持者は39100人いるが、そのうちペットの獣医師が15200人、農家の家畜を見る獣医師が7700人いる。全体の3割が製薬会社や行政で関連業務についているが、一割は獣医師に無関係な場所で生きているという。(読売2017/5/26朝刊13版2面)

この分布は、獣医師免許保持者は既に必要以上存在することを示している。それどころか、獣医師の免許を持ちながら“動物の医者”として仕事をしている人は全体の六割にも満たないのである。非常に近い免許として人間を対象とした医師免許がある。医師免許を持っている者のうち、医師として働くことを希望したものはほぼ全員がその希望を満たせることが、以下の情報から類推できる。(上記獣医師のケースのような統計が見当たらなかった。)

日本医師会は、結婚後に医療現場に戻る人のための女性医師バンクをつくった。女性の医師免許保持者は7-8万人程度以上(医師数の30%)いるが、その登録数僅かで約2200名である。https://www.jmawdbk.med.or.jp/ つまり、免許保持者のほとんどは希望すれば医師として働くことが可能であることを示している。

4)受験生にたいし獣医師の現実を教育すべきである:

読売新聞2017/5/26朝刊第13版二面に重要な指摘がある。それは獣医師免許保持者で人気がある就職先はペットのための医院であるが、ペットの医師となれるのは獣医師免許を取得した者の半分にも満たないことである。

つまり、獣医学科を目指す高校生は、動物好きの子供達が主であり、動物の健康を維持するための仕事を目指して獣医学科に入学するのである。しかし、元々獣医は家畜が対象であり、良質の食肉や鶏卵などを得るため仕事なのである。つまり、動物を愛する仕事としての獣医師は最近の仕事なのである。

岡山理科大学(加計学園)が獣医学部設立を考えるのは、獣医学科の人気に乗じて学生を大勢集め、大学の経営を安定化させたいのだろう。獣医学科の人気は、その入学試験の難易度でわかる。例えば、地方にある鳥取大、鹿児島大、山口大などの獣医学科でも、その入試難易度は大都市の旧帝大の理工系よりもむしろ高く、京都大学の農学部と同程度である。http://www.toshin-hensachi.com/rank/?course=12

更に、唯一独立した学部として存在する北海道大学の獣医学部の難易度は、理工系のトップクラスであり、地方の国立大医学部よりも難関である。この人気は獣医師が“動物のお医者さん”という誤解に基づくと私は考えている。不足しているとしたら、動物を食肉として育てるための獣医であるから、その充足は獣医学科の新設ではなく、受験生に獣医という仕事の現実を正しく教育して、獣医学科受験の意志と将来の仕事との差を無くすることである。

つまり、文科省への獣医学部新設の要請は、まともな動機からでているとは思えない。

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