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2018年1月7日日曜日

外交のSCF理論:相手の言葉をそのまま信じてはいけない

1)人間が考えだした論理として、数学は殆ど完全である。殆どと言ったのは、数学が專門ではないので、知らない部分があるかもしれないからである。その数学の形式で、人間の言動や行動を表現すると、分かりやすくなることがある。(勿論、複雑になっただけであるという意見も人により出て来るだろう。)

例えば、言葉=f(x,y,z);行動=g(X,Y,Z)という関係式を立てる。数学を少しでも学んだ経験が有る人は、言葉=f(x,y,z)を見た途端に、その“数式まがい”を書いた人は、「全ての言葉は、それを発する人がそう思ったことを口にしたものである。」は、明らかに間違いであると言いたいのだと理解するだろう。

上式で、xはその人の欲望である。yはその人が置かれた情況である。zは聞き手である。つまり、上式の言葉=f(x,y,z)は、言葉は何かの目的を持って、それを達成するために、ある情況下で聞き手に何かを期待して、発せられるという意味である。

この式で、xと書いた言葉を発する人の目的だが、それも単純にはいかない。その目的パラメータ(補足1)xは、その人が頭の中で創り出したもので、本当にその人の欲望と一対一対応しないかもしれない。その人の置かれた情況のパラメータyは、本当の情況というよりは、その情況を発言者が考えて理解した情況である。(補足2)聞き手パラメータzは、あくまで話し手が理解している聞き手とその性質である。

2)上の文章は、最初に書いたように、当たり前のことをグダグダと複雑にしただけのような話であると受け取る人も多いだろう。しかし、韓国が主張する慰安婦問題でも、日本は韓国の主張を全く解析もせずそのまま受け取って、外交に反映してきたことを考えて欲しい。つまり、多くの右派の解説者などは、「韓国の言う慰安婦問題は事実誤認である」と主張しているのである。

しかし、事実は韓国も十分知っている筈だと私は言いたいのである。つまり、上式の言葉=f(x,y,z)において、日本政府や右派の評論家諸氏の大多数は、xというパラメータだけ、つまり韓国政府の慰安婦問題の理解とそこから生じる日本に対する要求、だけを考えていると思う。勿論、一部はy、つまり韓国の置かれた情況、も考えていると言っている。しかし、zつまり自分が韓国の要求にどう反応するかを、韓国に読まれていることを十分承知している人は殆ど居ないのだ。

ここで、自己無撞着場という言葉を紹介したい。英語でself consistent fieldという。量子化学を知っている人はSCF理論という言葉を思い出すだろう。外交で言えば、落ち着く所という意味である。対人関係では、落とし所という言葉が使われるかもしれない。

韓国の言葉=f(x,y,z)とすると、zは韓国が考える日本である。その日本は、韓国の言葉を受けて、日本の言葉=g(X,Y,Z)と言い返す。Zは日本の考える韓国である。外交は、gを受けて、韓国がzつまり日本に対する理解を少し改めて、つまりパラメータzを少し変更し、新たに発言をする。勿論その際、韓国自身のパラメータ(x,y)も変更されるだろう。それを受けて、日本は韓国の(主張など)に対する理解を少し改めて、パラメータZを変更する。(X,Y)についても韓国同様に少し変えるだろう。

その作業を繰り返して、最終的にパラメータ(x,y,z)と(X,Y,Z)が落ち着くところとして得られる。zは、韓国が理解する日本とその最終的主張であり、Zは、日本が理解する韓国と、その最終的主張である。その合意した事を互いに実行することで問題が消滅する。この最終的パラメータである(z、Z)で記述される外交的関係が、自己無撞着場(SCF)である。それが新しい日韓関係となる。(補足3)

慰安婦問題の場合、ややこしいのは、そこに米国が介入していることである。米国が、その時々の事情でこの問題に介入してくる限り、永久に自己無撞着的解決はできない。その典型が、一昨年末の日韓合意なのだろう。

補足:
1)パラメータとは例えば変数xに実際の数字を入れるのだが、その数値をパラメータという。
2)雪原で凍死者が裸で発見されることがあるという。寒さのあまり、生体が精一杯発熱をして、つまり“ほてる”という現象で、暑く感じて衣服を脱ぐらしい。それ程でなくても、人の心理は複雑であり、自分の欲望をそのまま理解できない場合も多い。
3)必ずしも問題はSCF的に解決するとは限らない。しかし、日韓はそのような関係では無いと思いたい。

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