2018年6月6日水曜日

グローバリゼーションの調整:経済の大変革と世界の危機

1)ピケティが膨大な著書で指摘した、資本収益率が国民所得の増加率より上回るという事実は、資本家が経済成長による“正規な分”よりも、余分に取り分を拡大していることである。従ってその本は、資本家と一般民との貧富の差の拡大をデータとともに示したことになる。

この現象が先進国で拡大するメカニズムは、先進国で蓄積された資本が、発展途上国に投資され収益を上げて本国の資本家の利益になることだと思う。つまり、海外進出のために資本を先ず本国で蓄積するのである。その後、その資本が本国の高い労働賃金を避けて、賃金の安い海外に進出するのだから、本国の労働者の賃金が伸び悩むのは当然である。

食い逸れた労働は安い賃金の仕事に向かうが、生活できない人は政府の社会福祉に頼るだろう。労働賃金の減少や失業は、内需の縮小あるいは伸び悩みの原因となるから、多くの内需型企業が危機に陥るのは当然である。不景気で苦しむ企業を何とかしないといけないという理由で、法人税減税などを行うだろう。その結果、海外進出する会社の利益を増大させる一方、政府の財政は悪化するのは至極当然である。

まるで、経済の主人公は労働者である国民一般ではなく、株式会社つまり資本であるかのような政策を実行している。それは、資本が経済だけではなく政治も支配していることを示している。(補足1)

このグローバリズムの出発点にあるのは、国際政治が国境を跨ぐ経済活動が可能になるように規制緩和を行なったからである。(補足2)英米を中心とした先進国の資本の発展途上国への流れは戦後盛んになった。現地の安い労働力を使い、そこに輸出依存型の経済成長を誘起し、あげた利益の大部分を出資国に還元させるか、発展途上国への更なる投資に向けるのである。

現地政府が、一定期間にその国家の広い部分でのインフラ整備と、経済体制を内需依存型へ進める能力があった場合、その国は先進国へ向けて離陸することになるだろう。そして、それは元の先進国企業にとっても市場としての価値を増す。

2)このグローバリゼーションによる経済発展のモデルは、地球が有限である限り無期限には進行せず、一定のところで行き詰まる。否、それが既に行き詰まっている。それは以下の動画で、評論家の中野剛史氏が話している。

リーマンショックはその行き詰まりの始まりであったというのである。https://www.youtube.com/watch?v=l0BooEwk04M&t=1973sこの“グローバリゼーション”による経済発展での資本のスパイラルな増加メカニズムは、今や機能しなくなっているというのである。(補足3)

そして残されたのは、資本の出所である本国と資本が一定の収益を上げた途上国での副作用である。本国では、デフレの進行と貧富の差の拡大が起こる。これは安い労働力を求めて先進国の国内資本が海外に進出するのだから、ブルーカラー職のかなりの部分が海外に行ってしまう。そこで、その仕事が主だった地域では不況風が吹き、仕事を失った人が大量に出る。米国のデトロイトが良い例である。

更に、上記で発展途上国から先進国に脱皮するチャンスを逸した国々における混乱である。それらの国々において、進出してきた先進国資本及びそれが所属する国に協力的な政権が出来るのは当然である。(補足4)その現地国家での経済発展は、その国の賃金上昇をもたらすのだが、その時点では輸出依存型国家である。そこまで互いにwin-winの関係であっても、先進国資本が賃金上昇を避けて流出すれば、残った政治的混乱が拡大することになりかねない。

このような先進国資本のグローバル展開のあり方が、最終的に世界を豊かにして国境を挟んだ争いが無くなれば、それは人類の偉大なる勝利である。しかし、それは資本家がもともと目指したことではない。何故なら、収益のためには国境を挟んだ争いも起こし、それを利用するという歴史が見え隠れしているからである。

有限な地球の面積と資源の中で、あくまでも私的な利益の拡大を目指したものなら、行き詰まるのは当然である。そしてグローバリゼーションの発祥の地とでも言える、米国で国民の不満が選んだのがトランプ政権である。(補足5)同様の動きが、フランスやイギリスで起こっている。

3)トランプ大統領の出現は、米国の貧富の拡大が病的なまでに進展し、それに耐えられない層が、従来の巨大企業群と国家を牛耳る層に叛旗を翻したという意味を持つ。5月末のNHKクローズアップ現代でも、米国を庶民の日常から変化させているアマゾンとトランプ大統領の戦いについて放送していた。

確かに、ネット通販が盛んになり、その結果町の小売店舗だけでなく、大規模ショッピングモールが閉鎖に追い込まれ、そこでの仕事が消失する。その一方、アマゾンの進出したシアトルでは家賃が高騰して、フルタイムジョブを持つ人までホームレスになっている例が紹介されていた。程度に差があっても、同じタイプの現象は、日本でも確実におこっている。

しかし、ネット通販が盛んになるのは、グローバリゼーションとは無関係に自然な“科学技術文明”の発展方向である。これまでグローバリゼーションの結果としての発展途上国の経済発展や、先進国での労働生産性の向上は好ましいこととして受け入れ、自然な速度でその発展を待つことが正しいと思う。そしてその一方で、今後は台風のように南方の途上国から利益を巻き上げる資本の制限を行うべきである。

トランプ大統領の反グローバリゼーションの動きを高く支持しているのが、日本では元ウクライナ大使の馬渕睦夫氏である。その件については、既に何回もブログに書いた。しかし、その評価は過大であると書いたのが、以下の記事である。https://blogs.yahoo.co.jp/hetanonanpin/64965457.html

例えば、その性急な保護貿易主義や反移民主義は、混乱の収拾のために新たな混乱を生じるという稚拙なレベルの政策だと思う。

現在のグローバリゼーションによる副作用低減の方法としては、先ず政治のあり方を考えるべきだと思う。それは、政治が会社資本から影響を受けないようにすることである。つまり、法人から政治資金が流れ出さないようにすべきである。日本の政治資金規制法では、会社が直接政治資金として寄付することは禁止されている。しかし、間接的に法人の金が政治に流れる可能性まで完全禁止できていないだろう。(補足6)また、グローバリゼーションの家元である米国では、この規制が緩くできているのではないかと私は疑う。

次に、グローバリゼーションへの適応するために、先進国での労働力の再分配を政治的に支援し、また、それにふさわしい教育改革などに力を入れるべきであると思う。日本では優秀な人材が医学部に流れている。しかし、それは好ましいことではない。もっと社会のために、日本国のために、全く新しい産業のために、自分は貢献するのだという野心をもった人間、そして、「人類の歴史を、良い方向に誘導するのだ」という天才的人間を育てる様に、日本の教育環境を育てるべきである。(補足7)

世界は大きなターニングポイントに来ている。グローバリズムという思想の現実政治への展開は、最初世界の社会主義革命を目指すことで始まったと考えられる。しかし、それは独裁者を産み、悲惨な結果を人間歴史に残した。今回は2度目のグローバリズムの失敗だろう。それが更に悲惨な結果として歴史に残らないことを祈りたい。

このグローバリズムの進展と国際金融資本の関係を論じた人は多いだろう。私がそれを知ったのは、元ウクライナ大使の馬渕睦夫氏の著書「国難の正体」を通してである。そこに昨年3月に亡くなったロックフェラー家3代目のデイヴィッド・ロックフェラーの言葉が引用されている。「私たちがアメリカの国益に反する秘密結社に属していると信じるものさえいる。かれらの説明によると、一族と私は「国際主義者であり、世界中の仲間たちとともに、より統合的でグローバルな政治経済体制をー言うなれば一つの世界をー構築しようと企んでいるという。もし、それが罪であるならば、私は有罪であり、それを誇りに思う。」(補足8)

グローバリズムは、魅力ある思想である。しかし、それを急ぎ過ぎるのは良くないようである。グローバリズムは人類の夢なのかもしれない。しかし、将来実現する正夢なのか、惨劇に誘う悪魔の言葉なのかは、判らない。確実なのは、性急にことを実現しようとするのは良くないということだろう。それは多分、一つの民族のルサンチマンの裏返しではないだろう。そして、人類歴史の発展に対するロックフェラーの寄与を、功罪差し引きしてプラスが残るように我々は知恵を絞らなければならないと思う。

補足:

1)資本といったが、株式会社という方が適当だと思う。ただ、株式会社を誕生させ維持させる条件は、株主資本がプラスとして会社の純資産の中に存在することであるから、この様な議論の時に“資本”なる言葉を用いる。資本主義の“資本”も同様であると思う。

2)GATTからWTO(世界貿易機構)の設立などの国際条約や、IMF(国際通貨基金)の設立などは、この国を跨いだ経済活動を容易にしている。社会主義経済の失敗が明確になり、世界経済は米国の一極体制になったことも、その大きな原因である。素人ですが、敢えて補足します。

3)この動画は非常に粗い議論を流している。それはおそらく中野氏の意図するところではなく、情報を売るための宣伝(ブリーフィング)だからだろう。この動画では、グローバリゼーションの定義がうまくできていない。グローバリゼーションの元の意味は、地球規模の展開だが、「人、金、物の国境を跨いだ移動を自由にする」という現代のグローバリゼーションはその一つであり、「」内のように定義するのなら、それを明確に喋るべきである。また英語では、定冠詞をつけるべきである。尚、三橋貴明氏は世界の共産主義活動を第1次のグローバリゼーションとしている。

4)複数の先進国の資本進出があれば、それは先進国の間の政治的対立も取り込むことになるだろう。

5)トランプはこれまでにない一般庶民の味方かもしれない。そのトランプをバカだとか、悪口雑言の限りを尽くして批判してきたのが、日本で古くからいるユダヤ系のタレントである。彼には「お里が知れる」という言葉がふさわしい。

6)会社員が会社の資金援助を得て、政治パーティーなどに参加し、巨額の参加費を支払う行為や、会社や会社員の課外活動的グループなどで政治団体の人物を講演依頼して、多額の講演料を支払うことなどまで、禁止されているのだろうか?

7)一人の天才の周囲には通常10数人程度の理解者が存在するだろう。彼らがコミュニティーを作り、人類の未来を考えてもらいたいと思う。近い例では、20世紀中頃の世界の物理学会がそうだったのかもしれない。西暦の始まった頃の世界宗教も、その様にして生まれたのかもしれない。(十分な知識がないのですが、この補足は背伸びして書きました。)

8)デイヴィッド・ロックフェラー著「ロックフェラー回顧録」(楡井浩一訳)新潮社2007。第27章「誇り高き国際主義者」(517頁)にこの言葉がある。

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