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2018年7月13日金曜日

治山治水事業は通常行政の一環で行うべきで、「国土強靭化計画」などの掛声は不要

1)今回の西日本豪雨での死亡者数は最終的に200名以上になるだろう。被害は西日本全体にわたるが、死亡者の80%以上は岡山、広島、愛媛の3県で出ている。河川の堤防決壊や崖崩れが原因で亡くなった方がほとんどだろう。報道によると、被害地域はハザードマップに危険箇所と記載の場所にほとんど一致している。予想通りの災害であり、対策の遅れは非常に残念である。

一方、この機会とばかりに「国土強靭化計画」を言い出した人がネットで宣伝している。その一例が次の動画である。最初は、経済学者の三橋貴明氏であり、次が内閣参与で京大土木の藤井聡氏である。因みに、三橋氏は藤井氏の親しい知人らしい。
https://www.youtube.com/watch?v=Gtkak7ocZXM
https://www.youtube.com/watch?v=CcDS1mcsS5k

勿論、今回の災害を教訓に、多少の国債増額をしてでも必要だと誰もが納得する治山治水事業は一気にやるべきである。しかし、それは通常の予算を大幅に増加する形で行うべきで、「国土強靭化計画」などという掛け声は不要である。掛け声を用いた行政は、何も考えない人の支持をとりつける卑怯且つ危険なやり方である。(補足1)

上記動画では、南海プレート地震(東海、東南海地震)と首都直下型地震が同時に起こった場合の経済的損失を、土木学会が試算した内容を紹介して、国土強靭化の必要性を主張している。不自然な仮定の下での、不自然なシミュレーションを紹介していると、私には感じられた。

2)対策には緊急避難的対策と基本的対策の二種がある。基本的対策はゼロから多角的に立案すべきである。その際、前提条件を把握しておくことが大事だと思う。例えば、①日本は一人当たりの平地が非常に少ない国家であるということや、②食の安全や国防との整合性も考慮すべき、などである。また誰が考えても、天災を防止することは無理である。従って、③人的被害を減らす基本は逃げることだろう。

豪雨対策の場合:①土砂崩れの危険性のある場所や堤防決壊で住宅が浸水する可能性のある場所では新規住宅建設をさせない、②住宅が浸水する可能性のある場所に止むを得ず住宅を建設する場合は、人が立ち入る場所の一部を、必ず堤防よりも高くすることを義務付ける、などの対策が有効だろう。大幅に人的被害を減らす筈である。

従って、農漁村こそ高層マンションを一定の割合で住居として採用すべきだと考える。(補足2)河川氾濫や津波に対して堤防を高くする工事を考えることは、土木の方は潤うが一般には無駄が多い上に景観を害することになる。

緊急避難的対策は、夫々の箇所を対象に具体的でなければならない。例えば今回被害の大きかった岡山県倉敷市真備町をグーグルマップでみると、南北に流れる大きな高梁川とそれに西から合流する小田川と接し、中央部分に水田地帯と思われる農地が広がっている。両河川にそって堤防があり、今回小田川の堤防が決壊して洪水となったようである。
https://www.jiji.com/jc/article?k=2018071000730&g=oeq

以前から危険性が指摘されていて、小田川の高梁川との合流地域での水位を低下させる工事が計画されていたという。既に計画されているこれらの工事は急いで行うべきだ。冷静な分析による長期的視野の下での対策、緊急避難的問題即応型の具体的対策、何れにしても、大げさな掛け声や標語は不要だと思う。

補足:
1)掛け声で政治を行うのは日本の悪い伝統である。江戸末期の尊皇攘夷、戦前の鬼畜米英、戦中の一億玉砕、戦後の非武装中立などを並べて見ればわかる。大きな振幅で、左右に揺れた日本の政治史が理解できるだろう。掛け声政治は、議論を封じて全体主義を目指す時の方法である。
2)一戸建て住居は田園部の伝統であることは分かる。しかし、その伝統文化が作られた時代、洪水で現代以上の数の人がなくなっていただろう。それは継承したくないが、一戸建ての伝統は守りたいというのがエゴイズムなのかどうかは、都会を含めた全国で考えるべきことである。

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