2018年7月22日日曜日

中国で進む帝国主義化とその行方

1)中国の習近平国家主席は、憲法改正を行ってその任期制を廃止し、皇帝のような地位になりつつある。しかし、米国の経済制裁的な動きが習近平体制にとって致命的に働く可能性も残されており、最終的にそれが成功するかどうかはわからない。

福島香織さんは、youtube動画において、最近の習近平の姿は権力の座を降ろされる前の華国鋒の姿に似ていると指摘している。華国鋒は、現在の習近平と同様に多くのポストを名刺に刷ったが、鄧小平との権力闘争に敗れたのである。

国家主席という椅子は、外交的には中国という国家のトップが座るのだが、国内的にはその地位に大きな権限があるのではない。そこで、中国共産党総書記や中国共産党中央軍事委員会主席などのポストを兼務独占することで、地位を万全とするのである。(補足1)鄧小平は、国家主席の席を占めなかったが、中央軍事委員会主席のポストを抑えて、自分の権力を維持した。

今も昔も、権力維持には軍を抑えることが非常に重要であるが、習近平による軍の掌握は完全ではなかったと言われている。特に北部戦区となった旧瀋陽軍区(7戦区の内東北部)では、極最近まで江沢民派が力をもっていたという話を、中国に詳しい川添恵子氏が言っていたと記憶する。軍区再編(5戦区)で習近平が軍を掌握できたのかどうかわからない。

また、華国鋒は自分の座った椅子を博物館に展示するというようなことまでして、国民の個人崇拝を進めた。習近平も、G20で自分が座った椅子を浙江省の博物館に飾ったという。それを批判する意味を込めて、最近「華国鋒は罪を認めた」という表題の記事を、新華社ネットがしばらくの間だが、掲載したという。これも習近平の権力の翳りを暗示している。https://www.youtube.com/watch?v=9sVa4IMAoMs

コメンテーターの一人が、個人崇拝を進めることを、趣味が悪いことだと習近平は感じていないのか?という意味の発言をした。(上記福島氏出演の動画)しかしそうではないだろう。華国鋒も習近平もそのような趣味はなかっただろう。どのようにして、危うくなりつつある自分の地位を補強するのか考えた末の行動だっただろうと思う。

最近、8月に開催予定の北戴河会議(現役と長老の親睦会だが、実際には政治的重みのある会議)で、政治局拡大会議を開きたいという噂が流れているという。華国鋒は、その会議で主席の席を実質的に降ろされたと言う。ただ、現在の長老たちは、高齢な上に健康問題を抱えており、そのような波乱は起きないだろうという考えも福島さんは紹介している。(政治局拡大会議の話は、習近平サイドが流したデマの可能性が高いだろう。)

2)更に驚くべき話がある。中国が、国民全員の個人別社会信用度スコアを付けてそれを利用するシステムの導入を計画しているというのである。国家のために奉仕活動をしたならプラス5点、習近平の写真入りポスターに墨汁をかけるような悪態をした者は、マイナス20点と言う具合に点を付けるのである。(補足2)その積算した現在の点数を、例えば非常に高い場合、海外旅行に行くためにパスポートの発行を優先的にやってもらえる、といった具合に使うのである。 https://www.youtube.com/watch?v=AHhnF5ZSjIY

これは、個人スコアを政治的に利用したいという国家首脳の思惑が感じられる、計画である。資本主義経済体制をとりながら、中世的中華帝国を出現させる企みを背景にすれば、恐ろしい計画に見えてくる。(補足3)皇帝はもちろん習近平である。現在、その終着駅に向けた稜線渡りを、習近平は強風を受けながらしているのかもしれない。

「ネズミも虎も叩く」という習近平の方針とその実行は、共産党幹部の恨みを山ほど買っているだろう。将来的にはその手法に取り込むとした場合、中国国民は受け入れられるのだろうか。一族の一人が国家の官吏として出世したときに、その恩恵は一族全体に及ぶという古来の中国文化は、一朝一夕には変わらないからである。(補足4)

それに挑戦した腐敗追放運動は、何人かの重要な人物を葬り去ることに利用され、出世と権力掌握の手段となったのだが、広い深い範囲での不満蓄積の原因となっているだろう。それは双刃の剣であり、権力を失う原因ともなりえる。昔、国家主席の地位をめぐって習近平に挑戦した、薄熙来の「唱紅打黒」という国民に大人気だった政策と、その効果と副作用の点でよく似ている。とにかく、スローガンで政治を行うのは、中国も日本もやめた方が良い。

表題の行方という部分は、冒頭の米国との”経済戦争”の進み具合とも関係があり、よくわからない。しかし、突然トランプが方針転換して、中国いじめも中途半端におわるような気がする。

最近、チャネル桜の水島社長が、“トランプ外交は世界を変えるのか?”[H30/7/21]という題で、一部の人たちを集めて議論している。その中で、ゲストの一人であるペマ・ギャルポ氏が言っていたように、トランプ大統領にプリンシプルがあるようには思えないからである。(補足5) https://www.youtube.com/watch?v=SsEBcBYKFoE(ペマ発言は、20分ころから)

補足:

1)日本では、国家の意思を決定する最高機関は国会である。中国では全人代(全国人民代表大会)がそれに相当し、5年に一度開催される。中国共産党全国代表大会も5年に一度開催され、中国共産党の意思決定の最高機関である。第19回大会は、前者では2017年秋に、後者では2018年春に開催された。これら内向けと外向けの二重の看板は、国を治めることと外交を、組織的に分離できる点で便利だと思う。
2)習近平を礼賛するような習近平の写真入り政治ポスターに墨汁をかけて批判する様子を撮影し、それをネット配信した人がいる。更にその人は、捕まえに来る中国公安の人間の映像も撮影しネット配信した。その後、その人は逮捕されたのか行方不明となった。この話は、文革時代、毛沢東の写真が掲載された新聞を地面にしいて座った老婆が逮捕された話を思い出させる。(多分”ワイルドスワンズ”に書かれていたた話だと記憶する。)
3)佐藤健志氏は、このポイント制は便利な面もあるだろうと言っている。たとえば、自動車保険のゴールド免許での割引、何年間か無事故の場合の割引などは、類似した制度である。デジタル時代の今、条件が揃えばそして使い方を誤らなければ、面白い制度かもしれない。いずれ世界中に普及するような気がする。
4)この中国文化を適当なところで放置した方が中国経済には良いと、富士通総研と言う会社の柯隆という人が言っていた。しかし最近このかたをマスコミでみることはなくなった。
5)私は50分まで視聴して、以下のようなコメントを書いた。
ペマさん以外は、皆似たり寄ったりの見方をしているのは、日本の弱点そのものです。トランプは、米国貧民白人層を救済するという米国改革をやっているだけかもしれないのに、「グローバリズムから主権国家体制への回帰を目指している」なんて、深読みをする傾向も、ペマさん以外は共通している。中国潰しは、米国から富を奪い取る国、そしてドル基軸体制を破壊する可能性のある国だからであり、或いは、訳のわからない黄色人種の国だから、破壊すべきだと考えているのだろう。日本にも、米国にとってマイナスな部分は相当言ってくるだろう。アメリカファーストは、ジャパン・ファーストでもあると言う意見のようだが、アメリカの影響を取り去った時、何も残らない日本をどうするのか? ここの出席者は考えているのだろうか?

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