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2018年9月8日土曜日

悪玉&善玉コレステロール:リポ蛋白の役割について

以下は、自分の知識の整理のために調べて見た結果をブログ記事としたものである。

血液検査に関係して頻繁に話題となる、悪玉コレステロール(LDL)や善玉コレステロール(HDL)は、夫々コレステロールに分類される”純物質”の名称ではない。(補足1)正確にはリポ蛋白(補足2)と呼ばれる複合粒子であり、血液中に存在し脂肪やコレステロールの体内での運搬に関係している。

これらLDLやHDLは、コレステロールや中性脂肪(トリグリセリド、補足3)を中心に抱き込んだ、蛋白分子(アポリポ蛋白;以下ALPと略記する)とリン脂質(細胞膜成分)が作る球状の微小粒子である。その生成と役割を示した図を以下に示す。
以下、①②③で示した部分毎に、説明する。

①脂質の小腸での吸収とカイロミクロンというリポ蛋白について:

脂質(lipids)の消化物からの吸収は小腸で行われる。そこで、リン脂質、トリグリセリド、コレステロール(とそのエステル)は、ALP B-48 (ALPはアポリポプロテインの略記)と組み立てられて、初期カイロミクロン(nascent chylomicrons)というリポ蛋白となる。

初期カイロミクロンはHDLからALP C-IIとALP Eを供与されて、成熟する。成熟したカイロミクロンのアポリポプロテインC-IIは、組織上皮(血管壁に並ぶ)のリポプロテインリパーゼ(LPL)を活性化し、そのトリグリセリドを脂肪酸とグリセリンに加水分解して吸収する。

残りのカイロミクロンは、レムナントカイロミクロン(レムナントは残余の意味)と呼ばれ、ALP-Eを介して肝臓のレムナントリセプターと相互作用し、取り込まれる。その肝臓による取り込みが上手くいかない病気が、III型高リポ蛋白血症と呼ばれる遺伝的病気である。

② LDLが関係するプロセスについて:

最初に肝臓で作られるのは、初期VLDL(超低密度リポ蛋白)である。肝細胞によりリン脂質、トリグリセリド、コレステロール(エステル)などは、ALP B-100と組み立てられて、初期VLDLとなり血中に放出される。

初期VLDLは血液中でHDLと衝突して、ALP C-IIとALP Eを供与されて、成熟する。成熟したVLDLのALP C-IIは、組織上皮(血管壁に並ぶ)のリポプロテインリパーゼ(LPL)を活性化する。その結果、VLDLのトリグリセリドは、脂肪酸とグリセリンに加水分解され上皮から吸収される。

中性脂肪分を組織に渡したVLDLはVLDL remnants(VLDL残余物)、またはIDL(Intermediate-density lipoproteins)と呼ばれる。カイロミクロンの時と同様に、ALP-Eを介して肝臓のレムナントリセプターと相互作用し、取り込まれるか、又はそこで更に加水分解が進む。

IDLのトリグリセリドが加水分解されて、IDL残余物ができる。それをLDLと呼び、コレステロールを多く含む。LDLは血中を循環し、肝臓または末梢の細胞に吸収される。その際、LDLリセプターとLDLのALP B-100が相互作用する。

LDLはエンドサイトーシス(全体が取りこまれる)で取り込まれ、リソゾームで分解される。放出された油性分の多くはコレステロールである。

上述のように、LDLは組織に必要なコレステロールを運ぶ役割がある。LDLが酸化或いは糖化されると肝臓に取り込まれず、血中の食細胞(マクロファージ)により食われる。その結果、血管壁等に垢(plaque)の様に付着するので、悪玉コレステロールと呼ばれていた。

③ HDLの役割について:

HDLも肝臓でつくられるが、脂質(コレステロールや中性脂肪)が少ないために、比重が大きい。組織からコレステロールを肝臓に戻す働きがあると日本語ウィキペディアには書かれている。コレステロールの運搬に関して、LDLとは逆の働きをするのである。HDLのもう一つの大きな働きは、小腸で合成された初期カイロミクロンや肝臓で合成された初期VLDLにリポ蛋白(ALP C-II, ALP-E)を渡して成熟させる役割だろう。

以上の情報は主としてhttps://en.wikipedia.org/wiki/Lipoproteinから採った。批判コメント等歓迎します。

補足:

1)コレステロールは、最下段に示した図にその分子構造を示した。ステロイド骨格を持つこの化合物は、細胞膜の一成分であり、且つ、胆汁の原料でもある。善玉&悪玉コレステロールは、リポ蛋白(本文参照)のことである。このような誤解を生じる命名は、言葉の意味や定義を疎かにして短絡的に用いる日本文化の悪い癖の一つである。

2)このリポ蛋白という言葉も分かりにくい。リポはlipid(脂肪分)を意味し、蛋白は蛋白質の意味である。つまり、脂質を内包した蛋白(アポリポ蛋白;apolipoproteins)と細胞膜成分(リン脂質)の複合体粒子である。中心に脂肪やコレステロールを抱き込んだ球状のナノサイズ粒子である。通常の細胞はリン脂質の二重膜を基本構造とするが、リポ蛋白ではリン脂質の膜は一重である。(下に図を示す。)
3)グリセリンの3つの水酸基(OH)に脂肪酸(R-COOHの形の分子で、Rは長鎖の炭化水素である)が結合した分子を中性脂肪と呼ぶ。脂肪酸は酸性だが、その酸性の由来であるCOOH基がグリセリンとの結合に使われているので、中性且つ油溶性である。グリセリンに結合する脂肪酸分子の数が1、2、3のものは、其々モノグリセリド、ダイグリセリド、トリグリセリドと呼ぶ。通常中性脂肪と呼ぶのはトリグリセリドである。

(2018/9/8)

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