2014年4月8日火曜日

定量性と統計的因子を大事にすべき=東北沿岸にバカの壁(巨大防潮堤)を築く卑怯な官僚&自民党政権

 地震による大津波は、宮城・福島沖では今後100年以上起こらないだろう。表題だけで言いたいことは全て言いおえている。以下に、何事の分析においても、定量性、頻度、速度などの視点が不可欠であることを例を挙げて述べる。
 先ず、わかりやすい問題から入る。「貧乏でも構わない、心の充実が幸せな人生に最も大切」という人がいる。この言葉に意味を持たせるには、ここで言う“貧乏”に関して、定量性、頻度、速度などの記述がなくてはならない。経済的には日本より遥かに貧しい、ブータン国民の幸福度が高いと話題になったことがある。各個人の主観であるだけに比較は難しいが、私には正直言って疑問が残る。また、ある知人は自分のホームページで「清貧党宣言」をしている。しかし、その考えも、どの程度の貧を前提にするが明白でなければ意味が無い。日本には、宮沢賢治の「雨ニモマケズ」に記述された“清貧”人生を理想型とする人も居るが、井上陽水と同様、私はこの詩にある様な人になりたいとは思わないし、この詩の考え方には同意できない。(注1)宮沢賢治が歌うような、”奇跡的”な人格を持つ人には普通なれない。それに比較してより確かなことは、発展途上国のネパールやカンボジアなどでは、貧からの脱出こそ人を幸福にし、且つ、社会を安全且つ平和にすると言うことである。(注2)また、先進国での犯罪も、富の不平等な分配により貧困層が一部に存在することが、大きな原因を占めるだろう。再度確認するが、「貧しさと人生(しあわせ)」を議論する場合、定量性において共通の視点がなくてはならない。
 「安全が基本」といっても、絶対的安全などこの世に存在しないし、安全を確保する為に我々に与えられた経済力や技術・知性などにも制限がある。従って、国民の安全を議論する場合には、どの程度の安全と安心感を、(平等に)国民にサービス出来るかという定量的視点が無くてはならない。東北大震災の復興対策についても、”一定以上の知性”(注3)による議論を経れば、1)人は自然の脅威を克服することなど出来ないこと;2)現実的な対策は、住民の大多数がその身に危険が及ぶ前に、早く逃げる様に備えること、であると気付く筈である。ところが、政府は東北地方の沿岸に巨大な防波堤を数百キロに渡って築く予定だというのである。この愚かな政策について、「バカの壁」と揶揄・批難する記事あちこちに投稿されているし、本にもなっていると思う。このような自民党や官僚の利権絡みと思われる政策決定が可能なのは、それを強烈に批判する勢力がこの国には存在しないからだろう。(注4)東北地方の大津波は既に起きたのであり、今生きている人は、そのような津波をこの地方で今後見ることはないだろう。近い時期に大津波が予想されるのは九州から関東にかけての太平洋沿岸である。お金に余裕があるのなら、津波対策はその地方にすべきであり、東北地方は後回しで良い。大規模な高台移転も漁業を営む人の日常を考えずに、土建屋の利権がらみで出て来た発想だろう。一番優先すべき政策は、そして主人公である筈の住民が最も望むことは、震災以前の状態への早い復帰だと思う。(注5)そして、予算に余裕があるのなら、この地方の将来の発展モデルを立案し、それに基づいた投資が次の段階の仕事になる筈である。しかし、政府の“震災からの復興事業案”に明確に存在するのは、建設業と自民党&官僚機構の利権だけであり、本来あるべき、限られた復興予算という制約のもとで、この地方の発展と住民の満足度を最大化するというような思考の跡が見えない。
 原発問題に関する今までの議論や報道も、同じ様に定量性(や確率)の視点を欠いて来たと思う。新型の原発に、福島原発事故の教訓を利用すれば、原子力エネルギーは絶対安全では無いにしろ、今後のエネルギー政策の基本の一つとして数えられると思う。大量の天然ガスの輸入が続くことで、現在電力会社だけでなく(注6)、国家全体でも経常赤字が続いている。それは双子の赤字に転落して大幅な円安から、日本が貧困国家へ転落することの可能性を強く示唆している。これは、非常に低い確率の原発事故とそれによる年間50mSvの放射線吸収よりも遥かに恐ろしい(注7)事態である。両方の悲劇のモデル、低確率だが起こりうる原発事故の危険性と、双子の赤字による国家の貧困の危険性の定量的比較により、どちらかを選択すべきである。(注8)
 以上、言いたいことは、危険性やそれに対する対策に、定量性、頻度(確率)、速度(早さ)が無ければ、夢のようなイラストや美辞麗句があっても、その政策価値はほとんど無いと言うことである。そこに、土建屋の利権が下味として加われば、その価値は大きなマイナスである。
 
注釈:
1) この詩を題材にして、井上陽水は「ワカンナイ」という題の歌をつくった。わかんないのは、「本当にあなたはそのような人になりたいのですか?」という疑問の表明だろう。
2) 一方、あまりにも浪費的な国家、社会、家庭は、資源や資産を浪費し長続きしないし、人を傲慢且つ粗雑にする可能性が高い。しかし、富と共存しがちなこれらの問題の解決は、貧からの脱出より軽い問題であり、解決の可能性も高い。
3)民主主義は、政府の政策に全国民の意見を平等に反映する制度ではない。それでは、国家は破綻し滅びる。民主主義政治の要諦は、如何に国民の知性を国民の代表が吸い上げることが出来るか、それを政策に反映出来るかにある。
4) マスコミの責任が大きいと思う。マスコミを牛耳るものたちも、自民党&官僚の支配層の一部に組み込まれていると思う。そうでないマスコミには、クルクル左派の人しかいない。まともな知性を持つ日本人には、現実的、現世利益的、つまり私利を重んじる人種が多い。(橘玲氏の括弧日本人のインゲルハートの価値マップ参照)
5) 高さが30m以上のマンションを沿岸に建設して、高層部に津波時全住民に開放する義務を負わせば良い。
6)株価に関心の無い方も多いだろう。原発事故の無かった、関西電力などの株価を見れば良い。今でも震災前の半分以下である。北海道電力だけでなく、全ての電力界者の財務情況は極めて厳しい。
7) この数値は、1年間に体重1kgあたり約0.01カロリーの放射線エネルギー吸収を示している。もちろんエネルギーだけで議論は出来ないが、裸で太陽から受けるエネルギーの1/100億に過ぎないのである。紫外線による皮膚がんを恐れないで、海水浴する人が怖がるべき数値ではないと思う。
8) キロワット・時当たり35円の電力では日本はやって行ける筈がない。現在の20円以下の料金でも、工場には重い負担であるという。英米仏などの国では、工場での電気料金は日本の半分位らしい。
(4/8/am; 4/8/pm日本語の修正;4/12/pm修正、最終稿とする。)

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