2015年6月11日木曜日

日銀総裁の不愉快な口先為替介入

黒田日銀総裁が今日6/10の国会答弁で、「さらに円安に振れることは、普通に考えればありそうにない」などと発言したことを受け、東京市場でドル/円レートが124円台半ばから122円台まで急落した。あまりに大きい効果に驚いたのか、経済産業大臣が黒田発言について“「趣旨が曲解された」などと述べたことが伝わり、今度は黒田発言の1/3ほどの効果だが、急上昇に転じた。

この種の為替への介入ととられかねない予定外の発言は、市場に混乱を持ち込む。今回の黒田総裁の発言そのものは、「”実質実効円レート”からみてこれ以上の円安はない」と言ったそうで、その通りであると専門家は言う(注1)。しかし、市場は発言者の地位から考えて、何か意図があっての発言と受け取る。日を改めてもドル/円相場に大きな変化がないことは、日銀は今後金融緩和をしないと市場に受け取られたことになる。

この発言によるナーバスな為替の変化は、日銀による(そして世界的な)異常と言える程の通貨量増加策が原因であると思う。つまり、正常に投資などに向かわないお金が金融機関などにあふれていることが、このような不安定な為替の動きの原因だろう。

  上は日銀及び米国連銀が銀行へ送りだした金(マネタリーベース)の総量の変化である。日銀はこの図の端で約270兆円、米国連銀は4.5兆ドルであり、経済規模から考えて、日銀の方が大きい位である。かなりの部分が日銀当座預金に0.1%の金利(付利という)を貰って眠っているとしても、世の中お金であふれていることには違いない。

夢遊病の様な状態の大量のお金が、株式や為替の市場に流れ込んでいれば、株価はバブル的になる。そして、今回の日銀総裁の一言の様に何か金融に影響しそうなことがあると、それら相場に大きな影響を与える。今回の混乱はそれ程大きくはないが、今後更に大きな問題が生じる可能性がある。それは、連銀の利上げとそれに伴って起こるかもしれない混乱である。これは、テイパータントラムtaper tantrum((米ドル量の)先細り癇癪)と呼ばれ、新しい経済用語となっているようだ。

テイパータントラムの可能性が示唆される様になった切っ掛けは、たぶん2013年5月下旬に当時ニューヨーク連銀の議場だったバーナンキ氏が量的緩和を終了すると発表した後の出来事だろう。その発表直後に新興国のドルが流出し、それと呼応する様に各国の金利が上昇した。日本の株価は1日で1000円以上下落し、その後3000円ほど下げて底値になった。このことで、今の世界の金融は非常に恐ろしい情況にあることが判った。昨日の件も、同様の教訓を与えたと言えるのだろう。

兎に角、近い未来に何か大きな混乱があるかもしれない。遠くで眺めるだけで済む様に祈っている。(素人のメモですので、批判歓迎します。)

注釈:1)黒田総裁の発言の中の、”実質実効円レートが低い”とは、要するに外国から日本に来た人は平均して安く買物が出来るということだろう。

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