2016年4月21日木曜日

田中角栄の政治を再評価すべき

最近、石原慎太郎氏が田中角栄を天才政治家であるとする本「天才」を書いた。アマゾンの同書に関するコメントを読むと、田中角栄の発想力や実行力を高く評価した内容のようである。田中角栄が行った政治では、日本列島改造計画や日中国交回復が有名だが、これらは確かに時代の要請にうまく答えたように思う。

田中角栄は、日本の昭和にとって大きな存在であったのは言うまでもないが、良い面だけではなく、その後の日本政治に大きな悪影響を残したという指摘もある。最近読んだ本の中にも、戦後政治を決定的に劣化させたという指摘があった(補足1)。

吉田茂の時代から始まり続いていた官僚と官僚政治家のエリート支配の戦後政治を破壊し、大衆の支配するドブ板政治にしたというのである。田中内閣以後、日本の政治にポピュリズムが定着したという。その指摘を頭に入れると、小沢一郎氏の政治は理解できる(補足2)。小沢ガールズなど、永田町を衆愚の大集団で支配する政治である。更に、小泉純一郎内閣もその流れの中にある。小泉チルドレンという未熟な政治家を大量に永田町に押し込んだ。

例えば、米国の政治では、大統領をはじめ政治経済のエリート集団が政治を率いている。日本の政治に、ドブ板選挙とポピュリズム政治が定着してしまっては、今後予想される危機には対応できそうにない。

  ごく最近、鬼塚英昭という人が、「田中角栄こそが対中売国者である」という本を書いた。まだ届いていないので詳細はわからないが、ジャーナリストの大高末貴氏がその中身について動画にアップロードしている。https://www.youtube.com/watch?v=DfU0ac64M2I

日中国交回復で始まった3000億円対中支援金の中から、300億円のリベートをとったというのである。それを資金にして、ポピュリズム政治を日本に定着させた。中国が、空港、地下鉄、などのインフラを日本の援助で作っても、何も感謝も表明しない裏には、そのような日本の秘密を知り尽くしているからだという。

その日中国交回復だが、朝日新聞の広岡元社長が日中国交回復に熱心で、村松謙三が訪中する際に友人の資格で同行(異例の中国訪問;現役社長でありながら株主総会を欠席)、日中国交回復を仕掛け、田中角栄をスターに押し上げたという(補足3)。

日本の現在のポピュリズム的政治を、より健全な間接民主主義に戻すためにも、日本は戦後政治の流れを復習することが大切である(補足4)。その中で、田中角栄の政治を再度検討し、それを有権者が消化吸収することが不可欠だろうと思う。上記鬼塚英昭の本はそのために欠かせない資料となるだろう。(まだ読みもしないで、こんなことを言うのには気がひけるが、直感的に正しいと確信する。)

補足:
1)片岡鉄哉、「核兵器なき改憲は国を滅ぼす」中、“1972年・日本の政変”(ビジネス社、第1章、p38)
2)小沢氏の「日本改造計画」は良書だと思った。個人主義の定着が民主主義には不可欠であるという指摘は正しいと思った。この本の内容と小沢ガールズ大量投入という政治手法は調和しない。実際、この本は御厨貴氏ら小沢氏の周りに集まった知識人がゴーストライターとして執筆した(御厨氏自身がテレビで語った)。
3)歴史的出来事は、いろんな角度から見ることで初めてその真相に迫ることができる。歴史は、単にAからBという理由でCになったという類の、単純な因果関係の鎖ではない。朝日新聞がこのような場面で現れることにビックリしたが、それも別の側面からみた日中国交回復の姿なのだろう。
4)戦後政治どころか、日本は未だに昭和の大戦の評価をしていない。極東国際軍事裁判を戦勝国による敗戦国への復讐と批判しながら、独自にはなにもしていない。戦争末期に、大都市空襲の指揮をとった「皆殺しのルメイ」に対してさえ、戦後の日本国は勲章を与える始末である。 否、大戦の評価だけでなく、明治維新の再評価さえしていない。孝明天皇から明治天皇に代わった時に、何が起こったのか? 日本の支配層が恐れるのは、この件と天皇制の議論にあり、それを避けることが近代日本を暗闇に置く企みの原因なのではないだろうか。

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