2016年4月9日土曜日

習近平の弱体化

BSフジのプライムニュース(20:00-22:00)をみた。習近平が中国共産党の中で人気(権力)を失いつつあるのではないかというのがテーマである。習近平の腐敗摘発政策と、それを利用して政敵を追放し、毛沢東的に個人崇拝的な政治を目指しているのではないかという疑いが、共産党の中で人気がなくなりつつあることの原因だろうという内容だった。

腐敗摘発は、人民の人気を獲得するかもしれないが、共産党幹部の間では孤立することになる恐れが強い(補足1)。それは、昨日から頻繁に報道されているパナマ文書の件でもわかるように、習近平自身も腐敗にまみれているからである。習近平の蓄財は10年も前から把握され、外国でも話題になっている。以下は4年前のBloombergの記事である。http://www.bloomberg.com/news/articles/2012-06-29/xi-jinping-millionaire-relations-reveal-fortunes-of-elite

また、腐敗とは直接関係しないが、習近平一族の多くが外国籍を取得している。姉はカナダ国籍、弟はオーストラリア国籍、娘は在米でグリーンカードを取得していると言われている。前妻はイギリスに逃げ(補足2)、習近平夫妻だけが中国に残っている。 パナマ文書で出てくるのは義兄(姉の夫)である。(冨坂聡「習近平と中国の終焉」角川、2013)

最近では、腐敗摘発に当たっている王岐山中央規律検査委員会書記の力が増し、習近平に対して同僚的な(部下に相応しくなく)態度を、党大会で周囲に見せつけたという話が、ゲストの石平氏により紹介されていた。

また、以前同じ番組に出演した富士通総研経済研究所の柯隆氏は、中国の経済慣習(文化)として賄賂は根付いており、過度な腐敗摘発運動は経済活動に支障をきたしていると発言していた。習近平の打黒作戦は行き詰まりなのかもしれない。

その代わりに、権力掌握を確かにしようとしている手段が、南沙諸島や西沙諸島での強硬な対外姿勢なのではないだろうか。石平氏によると、それも墓穴を掘る行為だということである。

中国の西太平洋(第一列島線から第二列島線を目指す)と南シナ海への海洋進出は日本にとって脅威となる。中国の具体的な目的であるが、東南アジアでの国益確保(棍棒外交)や、中東からのエネルギー補給路を支配するためだと思う。

現在石油は安価であるが、人類は今後エネルギー危機を迎える可能性がある。その時には中東の石油も奪い合いになるが、その際に中国の競争相手は日本である。その時になって慌てては遅いので、日本にとってシーレーン確保の為の外交と原発や自然エネルギーなどの利用によるリスク分散などが大切であると思う。

中東の政治環境は益々流動的になり、エネルギー源の確保も北朝鮮の核兵器と同様に、日本の安全保障の問題である。(山内昌之氏と佐藤優氏の討論:https://www.youtube.com/watch?v=50OFAKWWitE)

補足:
1)2007年の第17全国代表大会で、若い習近平と李克強が次期政権を担う地位につき、重慶市書記にしかなれなかった薄熙来には、政権を担う可能性はほぼなくなった。そこで挽回を図ったのか、歴史に名を残したかったのかはわからないが、薄熙来が行ったのが重慶市での打黒、つまり腐敗撲滅である。それは市民の間で人気が高かったが、薄熙来の政治寿命を縮める結果になった。(富坂聡氏の著書、第1章)
2)前妻(元駐英大使、柯華の娘) は、共に英国への脱出を提案したが、習近平が断った為に離婚して逃げたという。(富坂聡氏著書、114頁)

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