2016年9月8日木曜日

本気で自殺を考えた人が4人に1人いる?—ある統計への疑問—

1)自殺を考えたことがある人の割合が、4人に1人であるというショッキングなニュースが、日本財団の調査結果として報じられた。 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160907-00000106-mai-soci
朝日新聞の記事:(http://www.asahi.com/articles/ASJ975JVJJ97UTFL00J.html?iref=com_rnavi_srank

調査は今年8月2~9日にインターネットで実施。約4万人の回答を、2015年国勢調査(速報値)の年代、性別、都道府県別の人口比に合わせて分析した。その結果、「1年以内に自殺未遂を経験した」と答えた人は0.6%で、全国では53万人(男性26万人、女性27万人)と推計された。半数以上が20~30代だった。理由は、健康問題や家庭問題、経済生活問題が多く、二つ以上重なることがきっかけになっていた。

更に、
「本気で自殺したいと考えたことがある」という人は25.4%、このうち6.2%は現在も自殺を考えていると答えた。若いほど割合が高かった。一方、身近な人の自殺を経験したことがある人も5人に1人いた。

以上が報じられたニュースの概略である。この調査は、重要だが微妙な個人的情報に関するものであり、正確な数値データとするには、慎重なデータ収集と厳密な解析が必要である。従って、一般に報道するのは、最低限の節度として、学術論文として受理された後であるべきだと思う。その際、情報収集の方法とその分析方法について、専門家の審査を経るからである。

2)そのような“難癖”のようなことを言うのは、気になる点が幾つかあるからである。例えば、回答者をどのように選択したのか(インターネットで実施したというが、インターネットにアクセスできる人のみを対象にしたのか)、質問を択一式で行ったのか、回答回収率(回答拒絶率)はどの程度かなど、正確度を判断する上に重要な情報がほとんど無い(補足 1)。従って、どの程度信頼性がある数値データなのか全く判断できない。

またこのような微妙な情報を得るには、鍵となる言葉の意味を、調査対象に明確に伝達しなければならない。例えば上記文章では、質問者が定義している「本気」「身近な人」「自殺未遂」などの意味を、回答者に正確に伝達できているのか疑問が残る。(補足2)

上記ニュースでは本気で自殺を考えたことがある人が25.4%いるが、最近1年間に「自殺未遂を経験した人」は0.6%である。一方、確実な数値として存在するのは、実際に自殺した人として統計されている0.0185%である。(ウィキペディア参照)

25.4%とか0.6%という数字は、最終的に自死に至った0.0185%に比較して相当大きい値である。データ収集や処理の段階で数値を膨らませるようなことがなされている可能性を感じるのは私だけだろうか? 

回答は質問の仕方に依存する。例えば、択一式のアンケートで回答を得たのなら、選択肢に灰色領域を含ませれば、そこに誘導される人はかなり出る。もし、回答を数値データ化する段階で、灰色領域と黒色領域を合算する様なことをすれば、かなり数値は動くと思うのである。

この種のショッキングなニュースを流すのなら、もっと慎重にしてほしい。何か、組織としての意図を感じるのは、日本財団(旧日本船舶振興会)に対する偏見だろうか。

補足:
1) インターネットにアクセスできる人は、年代が高くなるほど人知的な人が多いだろう。択一式の質問の場合、微妙な気持ちは回答に反映しない。更に、回答したく無い人ほど、深刻に自殺を考えている可能性がある。
2) アンケートがどの程度真剣なものかにより、回答内容が影響される。「本気」「真剣」という言葉の意味が、正確に回答者に伝わる必要がある。「本気で自殺を考えたことがある」と答えた人の割合が若い人ほど多いのは不自然である。高齢者にも若い頃があったのだから、そして、本気で自殺を考えた記憶など簡単には消え無いからである。
(朝日新聞からの引用:©マークがなかったので、引用させてもらいました。)

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