2016年10月7日金曜日

日本語の話し言葉は情報伝達に向いていない

1)小説「永遠のゼロ」にも記述されている様に、旧日本軍は兵士を消耗品の様に使ってしまい、戦争終盤では極めて悲惨な負け方となった。例えば海軍航空隊では、大事な熟練パイロットをほとんど失っており、ソロモン海での戦い(1942年)以降、訓練が十分できていない兵(補足1)を現場に送ったという。この様なことが何故日本軍で起こったのか?

その原因は、戦争をマクロに見る最高幹部からミクロにみる現場将校までの命令系統の間での相互の情報交換が上手く出来なかったことだと思う。言葉が一方的に上から下に流れるだけでは、兵士の状態や環境に変化があっても、うまく対応できない。最高幹部は現場を知らないという批判があるが、それは現場から事実がリアルタイムで伝達されなかったのが重要な原因の一つだろう。

下から上には、上が期待する通りの情報ならスムースに進むが、期待を裏切る情報は上手く伝達出来ず、時として粉飾して伝達される。それでは、上層部が把握している筈の広い視野から現場の状況を改善することは出来ない。つまり失敗から学ぶことが出来ないので、同じ失敗を繰り返すことになる。

日本には「沈黙は金」という諺がある。また、人の仕事などに対する姿勢として、黙って努力することに最高の価値が置かれる。それが、職人的な仕事には高いレベルを維持できたが、相互の情報伝達が必須の組織的な仕事では、強い団結力の割には成果がでない理由だろう。

2)その原因は、日本の話し言葉は①情報を伝えるためだけではなく、②人間関係の再確認の証を常に付け足して使われることにあると思う。そして、その人間関係は、その人の業績以上にその後の人生を決定することになるのである。

英語での二人称代名詞youは情報(話)の受け取り手の意味であるが、日本語になると、②の意味をつけ加えるために、あなた、あなた様、貴殿、おまえ、きみ、など多様である。もちろん、英語圏でもそのような用法はあるだろうが、日本語で特に顕著である。

言葉だけなら問題は小さいが、その人間関係の再確認の重要性に対する過剰な意識は、話の内容に影響する。それが大きな問題となる。つまり、上下で或いは上を挟んだ三者で、精密な情報交換により問題の共有がなされないのである。

日本軍の例を出すと、あの対米戦争の開始に対して海軍は反対意見が多数だった。山本五十六が言ったように、半年くらいなら戦いになるが、それ以上は負ける方向に進むことがわかっていたからである。それにも拘らず、そして米国での野村大使らの努力で戦争を避ける方法もあったにも拘らず開戦となったのは、陸軍と海軍の間で対米戦争という問題が共有されていなかったからである。(補足2)それは恐らく、天皇という一段上の人にたいする関係を陸軍が過剰に意識して、天皇の判断を誤らせる情報を伝えたからだろう。

そのような言語環境にあるため、人事はもっぱら人間関係や出自によって行われ、能力は大きな要素ではない。

最近話題になった一つの例を挙げる。週刊誌で、「学者としては全く実績のないM女史が何故、ある大学の学部長になり、有識者代表として日本国の重要問題である天皇の退位に関する会議に参加するのか?」と報道された。その関連記事のサイトを下に示す。 http://www.excite.co.jp/News/society_g/20160929/Litera_2592.html

学歴詐称についての疑いは晴れた様だが、学者としての実績については全く評価に変化はないようだ。天皇陛下の退位を議論するレベルの学者でないが、人脈の凄さだけは確かなようである。日本とはそのような国なのである。

==以上は素人の見解です。===

補足:
1)「空母から離艦はできるが、着艦は出来ないレベルの兵を戦争に送った」という記述が上記小説にあった。
2)米国のルーズベルト大統領が戦争をしたかったというのは事実だろう。それを抑えることが出来なかったという意味で会うr。

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