2017年1月5日木曜日

日本国憲法自民党草案:非常に出来の悪い前文

1)前文において、憲法を新たに制定する動機と日本の将来目指す方向を高く掲げるべきだと思うが、そのようなものは無い。人々の心に迫るものなど、全くない。その第一の原因は、憲法を制定する主体がわかりにくいことである。

前文最後の文章に、「日本国民は、 。。。。この憲法を制定する。」と書かれているが、「日本国民は」は三人称のような感じであり、「我々は」と主語を一人称で書くべきである。その迷いの原因は、天皇を国家元首とするという第1章にある。天皇を元首とするのなら、大日本帝国憲法の様に、天皇が主語になるべきである。しかし後者の選択は時代遅れであり、日本人のほとんどはそれを支持しないだろう。今上天皇ご自身も支持されないだろう。

とにかく、こんな憲法なら改訂には反対である。

2)以後、5つの夫々の文章について考える。

1。日本国は、長い歴史と固有の文化を持ち、国民統合の象徴である天皇を戴く国家であって、国民主権の下、立法、行政及び司法の三権分立に基づいて統治される。

この文章は「日本国は」に始まり、「統治される」と受け身になっている。日本国の定義が国民の意思とは無関係にされている。なぜ、三権分立という西欧の制度を採るのか、天皇を戴く意味がどこにあるのか、わからない。「国民の意思統合が強く望まれ、再度我々が天皇を戴くと決意して、新たに憲法を制定する」のなら、国民多数の賛意を得られないだろうがそう書くべきである。

2。我が国は、先の大戦による荒廃や幾多の大災害を乗り越えて発展し、今や国際社会において重要な地位を占めており、平和主義の下、諸外国との友好関係を増進し、世界の平和と繁栄に貢献する。

先の戦争が終わって久しい。その反省や再出発を視野に入れて憲法を制定するのは、すでに昭和憲法がその役割を果たしている。21世紀の新しい時代を視野に入れて、憲法を制定する動機を明確に述べるべきだと思う。幾多の大災害とは何を意味しているのか不明である。

本来、日本社会の安寧と国民の幸せが第一に来るべきところ、この草案前文では世界の平和と繁栄に貢献することが最初に出て来る。憲法制定の意思も目的も迷走している感じだ。

3。日本国民は、国の郷土を誇りと気概を持って自ら守り、基本的人権を尊重するとともに、和を尊び、家族や社会全体が互いに助け合って国家を形成する。

「日本国民は」という書き出しは、日本国民の定義だと読める。日本国民を説明しているだけで、意思を表明する文章では無い。和を尊ぶのは人間関係においてなのか、国家間のことなのかわからない。基本的人権と和を尊ぶことが矛盾した場合、どちらを取るのか?つまり、「和を尊ぶ」というのは、真実や規則を無視して多勢や上位の者に屈服することを勧めるのか?

4。我々は、自由と規律を重んじ、美しい国土と自然環境を守りつつ、教育や科学技術を振興し、活力ある経済活動を通じて国を成長させる。

自由と規律は相反する概念であるのに、何故同列に重んじるのかわからない。教育や科学技術の振興というが、教育の振興とはどういう意味か?科学技術だけが何故振興の対象になるのか解らない。エコノミックアニマルを目指すということか?

5。日本国民は、良き伝統と我々の国家を末長く子孫に継承するため、ここに、この憲法を制定する。

主語については既に議論した。よき伝統とはどういう伝統なのか? 「良いものを継承する、悪いものは廃棄する」なんて、いうまでもない。

とにかく、レベルの低い前文であり、書いた人の知性を疑う。

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