2017年5月1日月曜日

北朝鮮問題への対応:日本と韓国の違い

1)北朝鮮が1昨日早朝にミサイル実験を行った。昨日の読売新聞一面(14版)には、安倍総理は訪問先のロンドンで記者会見し、北朝鮮の弾道ミサイル発射について「我が国に対する重大な脅威であり、断じて容認できない」と非難したと書かれている。

「日米同盟の抑止力は不可欠だ。トランプ氏が全ての選択肢がテーブルの上にあることをことばと行動でしめしていることを高く評価する。」「国際社会が一致して圧力を強める必要がある。」安倍総理のこの姿勢で良いのだろうか。

既に何度も書いたように米国等の圧力が、北朝鮮の核兵器開発やミサイル実験を誘発してきたのは、誰でもわかることである。更に圧力が必要だというのは、北朝鮮が暴発するのを期待しているとしか思えない。このままでは“用意された選択肢”の中から、米国が武力行使で対応することになると思われる。もし武力行使をした場合、北朝鮮から日本にミサイルが打ち込まれ、数十万人という死者が出る可能性もある。安倍総理はそれでも仕方がないと考えているのだろうか。

太平洋戦争の時に、米国の経済制裁という圧力が日本の対米攻撃の原因となった。同じシナリオを米国の一部は期待しているだろう。被害の殆どは日本と韓国が受け、ダブついた兵器の消費が出来る。その代金は、何れ日本や韓国から召し上げればよい。しかし、今回韓国はその策には乗らないだろう(後述)。

2)読売新聞の世論調査では、米国の圧力を評価するという意見が過半数であるという。http://www.yomiuri.co.jp/feature/TO000302/20170416-OYT1T50104.html 安倍内閣の対米従属的な考えが主流の日本で、大衆はその考えに単純に追従しているだけだろう。それでも、流石に安倍総理を信頼して良いのか、日本国民の多くに迷いが生じていると思う。それが以下のもう一つの世論調査の結果である。

NHKは、最近世論調査を面談で行った。その結果によると、「憲法改正の必要がある」と答えた人の割合が43%、「必要がない」が34%であった。前回2002年の調査のときより「憲法改正が必要である」が15ポイント下がった。また、「憲法9条の改正が必要」と考える人の割合が25%であり、「改正の必要がない」が57%であった。前回2002年の調査のときより「改正の必要がある」が5ポイント減少し、「必要が無い」が5ポイント増加した。http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170429/k10010966601000.html

最近の北朝鮮情勢を考えれば、そして安倍内閣の路線を素直に国民が信じているのなら、憲法9条改正を必要と考える人の割合が増加している筈である。しかし、世論調査の結果は全く逆であった。つまり、安倍総理が進めている憲法改正の動きに否定的な国民が増加しているということである。国民は日本が正式の軍隊を持てば、そして安倍内閣の路線上を日本が進めば、米国の前面にたって中国や北朝鮮に対峙することになると直感的に理解しているのだろう。

3)この100年ほどの間に急いで欧米から民主政治を輸入した国家のほとんどは、決して安定した国家の骨組みを獲得していない。例えば、韓国の民主政治も日本同様、全く法治国家の政治の体をなしていない。

西欧の民主政治は、表の理想論としての民主主義体制に加えて、裏でそれ有効にハンドリングする為の、「大衆を操作するメカニズム」を置く複合的な制度だろう。それは、大多数を占める弱者の味方であるキリスト教を統治の表看板に用いる、西欧諸国の発明だと思う。(補足1)その西欧の伝統的な政治制度から、表の理想論である民主主義だけを取り入れた(或いは、押し付けられた)国では、そのハンドリング装置(補足2)を持たないので、国家の枠組みが崩壊する危険に曝されることになる。それを埋め合わせて国家を維持するのが、欧米との同盟関係である。それは全く新しい形の変形した植民地政策だと言えないだろうか。

その結果、民主主義は西欧が用いる外交的武器となったと思う。丁度、イエズス会が携えたキリスト教が植民地支配の武器となったのと類似のパターンである。

国家の防衛と国民の安全を保障するのは、他国の攻撃を抑止する軍事的能力である。それを必死に主張している北朝鮮という国を前にして、尚日本国民は軍事力を持つための法的整備の必要性を否定している。荒海に乗り出さなければこの島は沈む。しかし、荒海を乗り切るだけの船を作り出す自信など、この国にはない。

その荒海は自然現象ではなく、ある巨大な国家の作り出したものだとしたら、自信がないのは当然だろう。安倍総理はロシアとイギリスを訪問して、昨日帰国した。戦後レジームからの脱却というキャッチフレーズは、そのあたりの事を考えているのかもしれないが、現実に日本と米国の関係を劇的に変える力には繋がらないだろう。

4)韓国の反応:

北朝鮮の動きに呼応してか、韓国の政治が急展開しようとしている。今朝のモーニングサテライトというテレビ番組で、今月前半に行われる韓国大統領候補の支持率が紹介されていた。4月30日の調査では、北朝鮮に融和的な文在寅氏が42.6%の支持を集めてトップを独走する勢いである。 http://japanese.joins.com/article/640/228640.html?servcode=200§code=200

新大統領が文氏に決まれば、米韓関係は廻角にさしかかるだろう。韓国民衆は既に、米国の策略の危険性に感づいている可能性がある。フィリピンの様に、今後韓国は米軍を追い出す可能性が高いかもしれない。

韓国は日本と違って正式な軍隊を保持している。東西冷戦の一環である朝鮮戦争での死者数は人口比で日本の第2次大戦の死者数の人口比の3倍ほどにも上った。更に、ベトナム戦争でも数千人の死者を出し、米国の世界戦略に付き合いたくないという気分が日本以上に強いだろう。

田中宇さんの今朝配信の記事(有料)では、以下のように書いている。「韓国の5月9日の大統領選挙で勝って次期大統領になりそうな文在寅(ムン・ジェイン)が、北朝鮮の核兵器開発問題に対する新手の戦略を打ち出している。新戦略案の最も注目すべき点は、韓国軍の対米従属からの離脱、つまり在韓米軍が撤退できる状況を作ることと、北が核弾頭とミサイルの開発をやめた場合の和解策を、抱き合わせにしていることだ。」(著作権の問題がありますので、これ以上は引用しません。)

米国は現在日本の同盟国である。この同盟国としての位置を維持したまま、憲法を改正して名実ともに独自軍をもった場合、より高い確率或いはより大規模に、米国と連携して(或いは米国の手先となって)北朝鮮や中国に対峙することになる筈。そのことを国民は感覚で、新しい危機として感じているのだろう。そして、その先に真の意味で日本の独立など存在しないと直感的に感じているのだろう。(以上は、素人のメモです。適当に読み飛ばしてください) 補足:
1)近代の民主政治はギリシャ時代の直接民主主義とは全く異る。議会を間に入れることで、大衆とは無関係の勢力が実質的に政治を動かすメカニズムを可能にしている。
2)既に何度か書いてきたので、ここでは書かない。日本と米国の国家組織の比較対照表を作れば自ずとわかるだろう。

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