2017年6月14日水曜日

加計学園問題:国家戦略特区での獣医学部増設という不思議

新しい大学や学部の増設を国家戦略特区で行う場合、それがその特区の目的に直結したものであり、卒業生の一定数がその特区内で就職することを前提としなければならない。しかし、今治での獣医学部増設がそれにあたるかどうかという、基本的な議論がマスコミなどでなされたことを聞いたことがない。

国家戦略特別区域及び区域方針は総理官邸のHPにある。http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc/pdf/160129_kuiki_houshin.pdf そこに書かれた特区の考え方は、「経済社会の構造改革を重点的に推進することにより、産業の国際競争力を強化するとともに、国際的な経済活動の拠点の形成を促進する観点から、国が定めた国家戦略特別区域において、規制改革等の施策を総合的かつ集中的に推進する」である。(補足1)

全国10箇所の特区の区域方針には、イノベーション、グローバル、チャレンジング、ベンチャー、ビッグデータ、ホスピタリティー・サービス、国際競争力、近未来技術、国際的ビジネスなどの言葉が、官僚の決まり文句的な文章の中に散在し、それを読んでいるとまるで霞ヶ関教のお経のよう感じる。

「広島県・愛媛県今治市」の特区の目標は以下の様に書かれている:
「しまなみ海道(西瀬戸自動車道)」で繋がる広島県と今治市において、多様な外国人材を積極的に受け入れるとともに、産・学・官の保有するビッグデータを最大限に活用し、観光・教育・創業などの多くの分野におけるイノベーションを創出する。

この特区を利用した今治市での事業展開について具体的な議論は、今治市分科会でなされている。この会議の要旨等は、首相官邸>会議等一覧。地方創生推進事務局>国家戦略特区>国家戦略特別区域会議>広島県・今治市>今治市分科会というディレクトリーに掲載されている。 http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc/hiroshimaken_imabarishi/imabari.html

平成28年9月21日及び平成29年1月12日に会議を開いて、道の駅の設置を民間事業者にさせるという提案と加計学園の獣医学部設置の提案の二つについて報告を行なっている。議論らしきものは見当たらない。この提案では、獣医師免許保持者は不足しているという主張がされているが、数字を上げた議論は全くない。実際には以前のブログで紹介した様に決して不足していない(https://blogs.yahoo.co.jp/mopyesr/43295162.html)。

特区の計画にあった、多様な外国人受け入れ、ビッグデータ活用、イノベーションとかとの関連はどうなっているのかも、さっぱり分からない。獣医学部で感染症の研究を行うなんて、この計画とは何の関係もない。とにかく「初めに結論ありき」の話の様に思える。

以上、加計学園の獣医学部を今治に経済特区を設けて設置する計画に関する政府と今治市の計画書を紹介した。私の意見だが、説得力は皆無である。この計画に合理性がない以上、現在の総理周辺のスキャンダル的な疑惑は、真実であると思わざるを得ない。

追加:岸博幸氏がこの件議論している。四国に獣医学科がないから今治に獣医学部を作るのは妥当だとうだけでは、動機を議論するにしては非常に貧弱である。獣医師としての教育には農学部の他学科が近くにある方が良い。愛媛県なら愛媛大に農学部があるのだから、獣医学科を作るのならそこにすべきである。6年後にようやく一期生が卒業するが、一人前になるには人脈もひつようだろう。そう考えるのなら、近くの山口大の獣医学科卒業生をリクルートする方が早い。どうせ半分は獣医と関係のない仕事をしているのだから。 http://www.iza.ne.jp/kiji/politics/news/170612/plt17061223560027-n1.html 岸氏は政権寄りで、この件に関係している師匠の竹中平蔵氏を応援したいのだろう。

補足:
1)内閣総理官邸のHPに国家戦略特区のページがあり、上記概略説明の見出しが“「岩盤規制」改革の突破口”である。こんな表題をつけることに驚く。規制があるとしても、それを岩盤と形容する神経がわからない。長年自民党政権が続いて来ても打ち破れない岩盤とは、一体だれが築いたのか?行政と立法を担当してきたのは自民党ではないのか? 規制撤廃など、やる気になれば一晩でできる権力を握っているのは自民党ではないのか。その権力を持っているからこそ、意味の分からない計画をつくって、総理の仲良しに獣医学部増設させることもできるのだ。

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