2017年8月10日木曜日

貧乏国の子沢山は世界の傾向

1) 昔から言われている「貧乏人の子沢山」という言葉が気になり、世界の一人あたりのGDP(GDP/h)と合計特殊出生率(=一人の女性が平均何人の子供を産むかという指数;以下単に出生率と呼ぶ)の関係を調べた。データは主に世界経済のネタ帳からとった。http://ecodb.net/ranking/imf_ngdpdpc.html

  図(1) 世界各国の合計特殊出生率と一人当りGDP(横軸/1000US$)

GDP/h(名目)が2万ドルを越えると、イスラエル(GDP/hが37000ドルで出生率3人)を例外として、全ての国で2人以下となっている。日本では、GDP/hが38900ドルで出生率1.4である。

出生率4以上の国は殆どアフリカの国々であり、GDP/hは全ての国で2300ドル以下である。出生率の最高はニジェールであり、7.6人であり、GDP/hは411ドルである。この部分の拡大図を以下に示す。
  図(2)世界各国の合計特殊出生率と一人当りGDP(横軸拡大図)

同じくGDP/hが低くても出生率に大きな差がある。しかし、それぞれの国の特徴を見ると、同じ条件では、表題の貧乏国の子沢山は真実であることがわかる。以下にそれを説明する。

2)データの解析

集団から離れて出生率の低い国:
GDP/hが少なく出生率の小さい国として、東欧圏がある。モルドバ、ウクライナ、アルメニア、ジョージアは4000ドル以下で出生率2以下の4カ国のすべてである。ヨーロッパの文明を持ちながら、旧社会主義圏であり、産業の停滞が低いGDP/hの原因である。

その他、GDP/hが少なくて出生率が低い国として、アジアの国がある。ネパール、カンボジア、ミャンマー、バングラデシュ、インド、ラオスの六カ国が、GDP/hが2000ドル以下で出生率3以下の全ての国である。恐らく、出生に対する人工的制限が為されているのかもしれない。これらの国では貧富の差(ジニ係数)は小さいので、同じGDP/hでもアフリカ諸国に比較する場合は、右に多少シフトさせて考えるべきである。この中で唯一イスラム教の国は、バングラデシュである。イスラム圏は、仏教圏やキリスト教圏に比較して出生率は高い傾向にあるので、このバングラデシュの小さい出生率は今回の考察では謎である。

集団から離れて出生率の高い国:
イスラエルの高い出生率(3.0)が印象的である(図1参照)。赤道ギニアも集団から離れているが、この国は2017年にOPECに参加した新しい産油国である。また、首都が本土からかなり離れた島にあり、且つジニ係数が65%と極めて高く(南アフリカは0.62)、大半は貧困層である。この非常に高いジニ係数は図(2)で出生率が高くGDP/hの大きいアンゴラ(ジニ係数0.62)にも共通している。尚、ジニ係数(補足1)の出所は以下のサイトである。http://top10.sakura.ne.jp/CIA-RANK2172R.html

もう一つ出生率が高くなる原因として考えるべきファクターは、新生児死亡率(最大約5%)及び乳児死亡率(最大約10%)である。こられは貧困国では高いので、それが出生率を高くする可能性がある。しかし、それらは無視できないが、それぞれの最大値を見る限り上の統計値を決める主原因ではなく、補正項だろう。

上記特殊例とジニ係数や新生児死亡率などの補正を考えた上での結論は、GDP/hと出生率は逆相関であるということである。

3) 貧困国で出生率が高い理由:
その理由として、バース・コントロールがあまり為されないことや、大家族制で生きる場合には子供は経済的な負担よりも寄与の方が大きくなることなどが考えられる。あまり学校に行かないので就学コストが掛らず、少年期から働き手になる。また、非常に痛ましいことだが、売買の対象になる。女性は性奴隷として、男性は兵士として、夫々売買されて来た。それは現在の先進国では考えられないことだが、人間の歴史である。(補足2)

先進国と貧困国が共存する現代、更に痛ましい例として臓器売買に絡む人身売買もあると言われている。http://blog.goo.ne.jp/grandemperor/e/df1c23e1a03b3f60c9c85b2d55c4eb5c もちろん、これらは出生率をあげる原因なのか結果なのか判らない。

先進国で出生率が低い理由:
先進国ではGDP/hが高くて経済的余裕がありそうだが、出生率が低い。その理由は、やはり子供を育てる経済的メリットがなく、デメリットが多いからだろう。先進国では社会に出るまでに、子供は最低限の敎育を受ける必要がある。もし、高等教育までとなると、親の経済的破綻の原因にもなりかねない。また先進国では、余暇を持つことで生活の幅が広くなるが、子供を持つことによる経済的や時間的な束縛はその恩恵を受けられなくするだろう。バース・コントロールが容易であるので、それを禁ずる厳格な宗教の国(イスラム教やユダヤ教)以外では出生率が低いのは当然だろう。

補足:
1)ジニ係数:所得の低い順に人を並べ、横軸に人口の割合を、縦軸に各人の合計の収入をとり、それぞれを1.0に規格化する図を作る。
上の図で 、ジニ係数はA/(A+B)である。パーセント表示の場合は、これに100を掛ける。なお、上図のAとBの境界を表す曲線をローレンツ曲線と呼ぶ。
2) 現在でも少年が兵士として売られるケースが多いだろう。一例として、ペルー日本大使館人質事件での犯人の少年をあげたい。500ドルでテロリスト集団に売られ、事件では日本人人質の見張り役になった。ペルー当局の強行突入の際、日本人人質に対して銃の引き金を引けずに居たが、当局に射殺された。ペルー事件の真相についての話が非常に興味深いので、是非ご覧いただきたい。報告者は、日本人として唯一真相を知る青山繁晴氏である。https://www.youtube.com/watch?v=ajp41I2p4Ao

0 件のコメント:

コメントを投稿