2017年10月26日木曜日

自立国家と緩衝国家

1)世界は二つの国家や地域により形成されていると思う。自立国家と緩衝国家或いは緩衝地帯である。自立国家は、他の自立国家と衝突しないという前提で国際政治上の決定を独立的にすることが可能な国家である。一方、緩衝国家は自国の判断だけでは国際政治上の決断ができない国家である。多くの場合、戦争は自立国家の間で起り、緩衝国家や緩衝地域は自立国家の侵略などの対象となる。(補足1)

国の経済の発展は、 その国の政治的“力或いは大きさ”の増大とみなせる。従って、自立国の経済発展により、他国が受ける政治的圧力は増大するだろう。(補足2)有限な地球上で、どの国でも自立国家になれるとは限らない。緩衝国家の自立国家への“昇格”は、地域の力のバランスに影響するので、必ず多少ともトラブルを生むだろう。そのように私(素人だが)は思って居る。

北朝鮮問題は、自立国家へ脱皮することを目指す国家と、それに対する抵抗勢力との間の紛争だとみなせる。中国や米国は、北朝鮮や韓国を緩衝国として見なしているので、その点で利害が一致している。

自立国家の力が、緩衝国の半島に到着すると、逃げる方向はないので、そこで大きな圧力を生み、戦争になる。朝鮮戦争は、そのようにみなせると思う。緩衝国家の機能は、自立国家間の衝突で、両国が直接戦場にならないためのものだと言える。つまり、それらの存在は、強国つまり自立国家のエゴイズムによる。

2)緩衝国家の悲哀:

日本の隣国である朝鮮は、現在でも緩衝国家である。そして、現在の日本も緩衝国家的である。朝鮮は、中国、ロシア、そして明治以降は軍国主義大国となった日本の間の緩衝国だった。そして上記諸国や米国などの衝突の舞台となった。それは朝鮮民族の性質によるというよりも、地政学的位置によると考える方が正しいと思う。

それを風刺したのが、何度も同じ図で恐縮だが、下の図である。(補足3)
緩衝国家として一応安定するためには、自立国家としての国防を放棄しなければならない。それが、朝鮮の李王朝が独自の軍事力をあまり持たず、国防を中国に頼った理由である。軍事力を持つことは、隣の自律国家の中国と衝突することもありうるという(自律国家)の意思表明となるからである。19世紀末にロシアの脅威を感じた朝鮮が、清に応援を依頼したのが、日清戦争の理由であり、それを風刺したのが上の漫画である。

同じ理由で、日本国を緩衝国家とするのが、戦争直後からの米国の戦略であった。それに協力したのが吉田茂、池田勇人、佐藤栄作、中曽根康弘などの長期政権を誇った自民党とそのトップ達だったと思う。彼らとて、日本が自立国家となるべきだとは思っていただろうが、それには相当のエネルギーが必要なことも知っていたし、米国により知らされていた。一旦緩衝国家となった国が、自立国家となるためには多大のエネルギーと多くの犠牲を払うことになる。しかも、それは大抵失敗に終わる。北朝鮮の現在の姿だと思う。

勿論、幸運があればそれは可能かもしれない。幸運とは、これまで自立国家であった国の崩壊である。北朝鮮のチャレンジは、自律国家であった大日本帝国の崩壊と、その緩衝国家への凋落により可能となったのだと思う。

3)国家の生成と崩壊:
自立国家の生成は、一時的に周囲に力の真空状態が生じた場合などを切っ掛けとするだろう。日本の敗戦による崩壊のような場合である。そのほかにも、国家の枠組みが経済発展などの変化に追随できない場合に起こる自己崩壊も考えられる。両方が平行して起こることもあるだろう。

ソ連の崩壊は、共産党独裁という体制が世界経済の発展についていけなかった為の自己崩壊の例だろう。それと対照的に中国は政治的にも経済的にも拡大し安定して居る様に見える。それは共産党独裁を謳いながら、共産主義的政策の放棄を鄧小平が行なったからだろう。その柔軟性は、共産主義自体がもともと東洋のものではなかったからであると思う。ただ、「イデオロギーは国家が大衆を支配する道具に過ぎ無い」という考えもある。(補足4)

中国が崩壊するかどうかは、ある一つの小さいグループや個人による独裁政治が、経済発展した国の体制としてあり得るかどうかにかかっている。民衆の政治的意向と現在の政治体制の不一致は明白であるが、それを習近平は一顧だにし無い。独裁体制を維持したまま、国内に向けた力による支配と、外部への力による膨張の両方を用いて、安定した支配が可能だと考えて居るのだろう。

その路線は、中国国民にとっても、隣国にとっても大きな脅威である。一党独裁から皇帝による独裁へと向かって居る中国の姿は、中世の国家のような印象を与える。一般に、自立国家の崩壊は、多大の犠牲を伴うだろう。ベルリンの壁の崩壊やソ連崩壊のように、犠牲が比較的小さい形で進むのは奇跡的だと思う。

4)世界経済システムの崩壊:
もう一つの崩壊として危惧されるのは、国家ではないが米国のドル基軸体制である。米国政府の赤字体質は先に書いた通り、資産に比較して多額の負債と政府職員あての引当金を抱えて居る。中央銀行も日本よりは怪しげなファンド(サブプライムローンのファンド)を多額抱えて居る。
https://blogs.yahoo.co.jp/mopyesr/43416690.html
https://blogs.yahoo.co.jp/mopyesr/43424501.html

米国の財政が破綻すれば、ドルの暴落とドル基軸体制の崩壊が起こるだろう。(補足5)その場合、米国は世界に展開した米軍を維持できないので、多くの国で米国を中心とした防衛網をあてにできないようになる。 (http://diamond.jp/articles/-/2187)

ソ連の崩壊は終わったが、そのほかの世界的な国家やシステムの崩壊は日本にとって、非常に危険である。それは、独自防衛力を持たない国家の宿命である。李氏朝鮮にとって、脅威だったのはロシアの筈だったが、激動のなかで支配国になったのは日本帝国であった。日米同盟がどの程度のものかわから無い以上、中国がもし崩壊すれば、或いはドル基軸通過体制が崩壊すれば、李氏朝鮮と同じことが日本に起こりかね無いと思う。

補足:

1)勿論、簡単には二分できないので、灰色領域は当然ある。また、国家という枠組みが緩い場合は、簡単に住人が外国に漏れ出す。この考え方は、所詮モデルである。
2)中国経済の発展は、緩衝地域への膨張として現れて居る。その膨張が異常なものなら、別の理由も考えなければならない。石平氏は、習近平による神話つくりと解釈している。https://blogs.yahoo.co.jp/mopyesr/43388268.html
3)日本(左)と中国(右)が朝鮮(魚)を釣る競争をしている。ロシアは横取りを狙って橋の上から眺めて居る。緩衝国家は魚である。
4)北野幸伯著「クレムリン・メソッド」世界を動かす11の原理、P324参照。この本は、世界を見る目を養ってくれると思う。http://rcbyspinmanipulation.blogspot.jp/2015/05/blog-post_23.html
5)米国の債務はドル建なので、国債を発行できる間は財政破綻を避けることは可能である。それには、日本のような属国的な国や中央銀行であるFRBが、国債を引き受ける必要がある。より危険なのは、すでに本文引用のブログで述べたように、FRBが多額の住宅ローン担保債券を保有して居ることだろう。そのローンの破綻で、銀行の救済を必要とするような場合、更に米国債がFRB資産として積み上げられることになるのだろう。それは、ドルの信用低下になり、ドルの崩壊を危惧する声が更に大きくなるのだろう。
なお、FRBのバランスシートについては: http://www.smam-jp.com/documents/www/market/ichikawa/irepo160112.pdf

この記事全体は、素人のメモとしてお読みください。

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