2017年10月20日金曜日

北朝鮮問題の落ち着き先は、米中露関係により決まる。日本は自律的に日米同盟を考えるべき時である

1)日本は選挙戦たけなわである。マスコミも、誰それの戦いだの予想獲得議席だのと、その話題でもちきりである。しかし、その光景はタイタニック号での船中ゲームの様に感じる。氷山が近づきつつあるのに、そんなバカな議論をしていても日本号は大丈夫なのか?

不気味に静まる金正恩と政争真っ只中の中国、その後の展開が非常に気になる。以下の動画での宮崎正弘氏の考えたシナリオは恐ろしいが、一定の説得力がある。https://www.youtube.com/watch?v=9Yh_Y9VJyIc&t=15s
それは、戦争に疲れた米国に東アジアの面倒を見る余裕はなく、中国に全てを任すのではないかというものである。

北朝鮮問題の解決を中国に任すかどうかは、米国が今後の米中露関係をどのように考えるかに強く依存する。民主党政権時代以降、クリミヤ問題などで米ロ関係は最悪である。就任直後のトランプ大統領は、どちらかと言うと中国よりもロシアとの関係を親密(補足1)に考える様子だったが、政権交代後も米国政府の路線は、北朝鮮問題の深刻化の為か従来の親中路線のままであり、ロシアとの関係も従来通りのままに見える。米国での大統領の力は思ったほど大きくなく、大統領の考えだけで米国を大きく動かすことは出来ないと解釈すべきなのか、それとも大統領の考えが変化してきたのか、どちらか分からない。

この北朝鮮問題においては、現状、米国は中国と密接に交渉するが、ロシアの力を殆ど借りようとはしない。その結果、北朝鮮は中国よりもロシアを頼りにしている様子である。

北朝鮮問題を中国に任すとは、中国の習近平政権が、北朝鮮の金正恩政権を潰して、中国の傀儡政権をそこに立て、核兵器の管理を中国がするということになると言う話である。その様な大規模な干渉を中国にやってもらうことになると、米国は現在以上に親中国的姿勢を今後取る必要がある上に、具体的な相当のメリットが中国になければならない。

宮崎氏は、その筋書きの背後にある米国の覚悟とは、韓国を見捨てて米軍が朝鮮半島から撤退することであるという。つまり、中国が朝鮮半島を完全に支配下に置くことに同意するという、大きな利権を米国が中国にプレゼントするという話である。

2)そのような大胆なことを米国はやるだろうか?
それは結果として、米国が、中国のこれまでの主張である「太平洋を米国と二分して管理しよう」という提案をそのまま飲むことになる。つまり、韓国からの米軍撤退の先にあるのは、短い時間内での東アジアからの完全撤退である。それは取り残された日本にとっては最悪のシナリオであるが、ただ宮崎氏はそこまでは言わなかった。(言うまでもないということかも)

しかし、そのシナリオは間違っている可能性がある。これから世界において米国のライバルとなるのは、ロシアではなく中国であるという視点が抜けているのではないだろうか。

冷戦が終わった後、米露或いは米中の新冷戦が始まっているという考えが、現在の国際政治の専門家の間で支配的である。現在、ロシアと中国は親密な関係にあることや、世界最強国家が米国である限り、米国対中露の対立が深刻となり、且つ、人口の大きさや中国のあからさまな米国への挑戦の姿勢などから考えて、米中の対立が新冷戦の最も大きな構造だと思う。http://www.mag2.com/p/news/316788

あからさまな挑戦とは、AIIBの創設と一帯一路構想を進めることで、「人民元」を世界(の一部)の基軸通貨としようという考えである。(補足2)そもそも、朝鮮戦争を温存してきた(補足3)のは、東西冷戦に対応するために米国の支配圏の中に日本と韓国を置くためであった。それならば、新冷戦に備えて、それを維持する筈だと思う。米国がそれを諦めるのは、米国経済が斜陽から破綻に至る時だろうと思う。

しかし、それ以上の課題が中東にあると、宮崎氏は考えているのだろう。石油が国内生産できる今、米国にとって中東が何故それほど大事なのだろうか?米国政治に大きな力を隠然と持つイスラエルとの関係かもしれない。(補足4)その当たりについては、私には良くわからない。

米国が中国との対立の姿勢を崩さないのなら、当てにするのは日本の軍事力だろう。日本は、米国の韓国を見棄てる路線、その次の日本を見棄てる路線を獲らせないようにするつもりなら、日本が中国の太平洋第一列島線以東への進出を食い止めるために積極的役割を担当する姿勢を示さなければならないだろう。それと同時に、米国との連携を失うことが日本国にとって致命的となることを、日本国民に対して明確に示さ無ければならない。
http://mikitogo.at.webry.info/200907/article_14.html
それ以外のより可能性の低い、そして、多分より危険な選択は、緊密な同盟関係の相手を米国からロシアにかえることである。それは、中国の支配下に入るのとたいして変わらないような、日本にとっては苦難の歴史となる可能性がある。中ロ関係がもし緊密であり続けるとすれば(あまりあり得ない状況かと思うが)、第二列島線の近くに線を引き、北の方をロシアの支配下におき、南西の方を中国の支配下に置くようなところまで行く可能性があると想像する。

3)何れにしても、習近平の独裁体制が誕生するのなら、これからの数十年は中国の拡大の歴史となる可能性大である。(補足5)既に、第二列島線上に基地となる場所を確保しつつあるという。グアムやパラオなどの島々にホテルなどを建設している。民間資本といっても、中国の場合は便衣兵みたいなもので、正体は共産党政府の手先だろう。北海道の土地を買い占めているのも、ヨーロッパへの北極海ルートの確保を意識しているという解説を聞くと、空恐ろしくなる。

日本の本当の情況は、常に上記のような二つの帝国的国家(補足6)を隣国に持っているということである。もう一つの世界一の大国と、それら二つの帝国との関係を日本の問題として自分で考える時代が来ている。それを北朝鮮が我々に知らせてくれたのである。その当たりの議論が、選挙というのなら、本当の政治家にしてほしいことである。短期間にそこまで日本が成長しなければ、「ひよわな花」の国は滅びる運命にあると思う。

現在の自民党にはそれが出来ない。現在の情況を考える時、江戸末期を想像してしまう。国難の時、徳川慶喜はあっさりと大政奉還した。しかしその後も、孝明天皇は江戸幕府の統治及び外交能力を高く評価して、それに頼ろうとした。確かに江戸幕府の方が圧倒的に能力が高かった。しかし、もし倒幕がなければ、近代的な国民国家はできなかっただろう。それと同じように、自民党以外は頼りないだろう。しかし、自民党が破壊されなければ、政治が上記のような根本からの思考をしないと思う。

本当は、政治のリセットが日本再生に向けた大事なプロセスのような気がするが、もうおそすぎる。蒸気船はたった4杯で太平の眠りを覚ますことができたのに、北朝鮮の核搭載ミサイルは、それにも劣る位の覚醒効果しかないのか?或いは、日本はそれほど深い眠りについているのか、それとも麻酔にかけられているのだろうか?

補足:

1)国際政治の場面では、「親密である」という言葉は、「その国と協力すれば今後多くの利益が得られる」と考えているが第一の意味だろう。そして、第二に文化的、歴史的、人種的な親近感があるという意味が加わる。そのように考えるべきだと、多くの専門家が言っていたと思う。勿論、第二の意味の方が、基礎的長期的(下部構造的)な意味があり、重要だという考えもあるだろう。
2)シルクロードに沿って、経済協力を行い、インフラ投資を国々にさせる。その工事を中国企業が請負、その支払をそれらの国々に貸し付けた元で行うのである。そこに中国人を移住させて同化させ、深部から中国の影響下にそれらの国々を置くという政策である。
3)東アジアに足場を置く理由として朝鮮戦争を必要としてきたと明言する米国要人の言葉を、本ブログで紹介した。https://blogs.yahoo.co.jp/mopyesr/43411999.html
尚、マッカーサー将軍が朝鮮戦争の完全勝利を目指した作戦をトルーマン大統領に進言したが、それが都合が悪いと考えた大統領に解雇されたという。(馬渕睦夫著、「国難の正体」参照)
4)イスラエルを訪問したトランプ大統領の嘆きの壁でのパーフォーマンスは印象に深い。また、娘夫婦はユダヤ教信者である。
5)中国経済は崩壊寸前であるとの話をされる方が多い。しかし、一度経済破綻しても、共産党の一党独裁体制は変わらないだろう。
6)中国やロシアを帝国と呼ぶのは言い過ぎだろう。しかし、その色彩を明確に持つことは事実だろう。

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