2018年3月11日日曜日

大衆の洗脳は、表向き民主政治の要諦である

米朝会話開催を報じるCNNとBBCの報道に対する日本読者の反応を例に考える 

1)トランプ大統領の米朝会談提案を受諾するとの声明までの経緯:
3月6日、平壌で開かれた南北会談で、韓国代表団と金正恩は4月末に板門店の韓国側で首脳会談を開くことで同意した。2日経たずして、韓国から報告を受けた米国トランプ大統領は米朝対話を行うと表明した。これは文在寅の思惑通りであり、オリンピックへの北の招待などもその計画の一環だったのである。今のところ、第二次朝鮮戦争回避に繋がる可能性があり、大きな成果である。

7日午前にこのブログ・サイトで「日本政府は米朝対話をトランプに進言すべき」と題して記事を書いたが、日本政府の姿勢は最大限の圧力一辺倒だった。日本では過去のように北朝鮮の時間稼ぎに使われるという警戒感に囚われるあまり、政治家やTV等に現れる評論家にはポジティブに評価する人は殆ど居なかった。木曜日と金曜日のBSプライムニュースでの議論の一部によく現れている。(前回記事など参照)

世界中に驚きをもってこのニュースは報じられたが、日本とは違って概ね歓迎の言葉が多かった。その差は何によるのだろうか?戦争になれば日本にも多大な犠牲者が予想されているのに、政府や官僚、元官僚、評論家達は何を考えてあのような否定的見方をするのか、私にはわからない。

北朝鮮相手の外交の場合、約束が単に時間稼ぎと制裁解除に使われることを警戒するのは当然である。しかし、警戒だけして何も積極的に動かなければ、事は最悪のステージに向かうだけである。言葉の裏を細かく分析して、マイナス面の批判に終始するのは、自分で行動する能力がない政治屋の常である。幸い、トランプ大統領はそのような政治屋ではない様だ。勿論、米国には自分の利益を考えた好戦派がおり、その影響下の人間も日本に大勢いると思われるので、注意が必要である。

ここで韓国中央日報の日本語版の記事を紹介したい。そこに以下のような記事が掲載された:

CNN記者が米朝首脳会談の妥結について伝えながら「トランプ氏と金正恩(キム・ジョンウン)氏を同時に導いた文在寅(ムン・ジェイン)大統領を称賛するべきだ」と話して話題だ。
同じ記事で、BBCが報じた以下の文章が紹介されている:
文大統領は平昌(ピョンチャン)オリンピック(五輪)開催前に南北対話を始め、トランプ大統領にボールを渡して「対北朝鮮制裁を継続する」と話すなどトランプ氏と共和党の懸念を払拭させたと分析した。
更にBBCはもし文大統領が核戦争の脅威を減らすのなら、ノーベル平和賞を受賞するかもしれないとも報じている。

私が興味をもったのは、この日本語記事に対する感想の投票結果である。それらは、興味深い:25;悲しい:7;すっきり:5;腹立つ:573;役に立つ:4、であった。(3/10; pm5:20) http://japanese.joins.com/article/417/239417.html?servcode=200§code=200&cloc=jp|main|breakingnews

この腹が立つが全投票数の90%以上を占める投票結果には非常に驚いた。それがこのブログ記事を書く動機である。なお、私は興味深いに一票をいれた。

2)日本語でこの記事を読んだ人たちは、第二次朝鮮戦争になれば良いと思っているのだろうか?話し合いでの解決がなければ、米国による軍事攻撃が行われる可能性が高くなる。その時には、北朝鮮による米軍とそれに協力する勢力への捨て身の攻撃があるだろう。日本人数十万人の命が失われる可能性も出てくる。

それを避ける糸口が、文在寅政権の綱渡りのような外交により見つけられたのである。それを何とか、米国と北朝鮮の和平(正式には国連軍と北朝鮮との和平)につなげるべく、周辺諸国の一つとして日本も協力すべきではないのか。そのように考えるのは普通ではないのか? しかし読者の反応は、兎に角韓国政府が憎いということのようだ。日本のマスコミで報道されている「文在寅政権が、北朝鮮に迎合し金正恩政権(補足1)の存続に手を貸している」という評論家や政治家の意見に洗脳されている様だ。

韓国に対する日本人の反感は、簡単に説明可能である。これまで、例えば怪しげな面もある慰安婦という存在を偶像化し、サンフランシスコなど外国にまで手を広げて反日キャンペーンを展開するなど(補足2)、韓国人とその政府は日本人にとって非常に腹立たしい存在である。

それらの反日運動を報じる言葉に乗せられた感情により、日本人一般の心に反韓感情が醸成された。その感情に支配された結果、日本が多大な被害を受けるかのしれない大問題解決の糸口さえ、それを見つけたのが文在寅政権であると言うだけで、否定することになったのだろう。(補足3)

大衆は洗脳に弱い。そして、民主政の下での政治家は津波のような大衆の感情の動きに弱い。(補足4)この民主主義という怪しげな(理想主義的)培地に、健全な政治を定着させるためにはどうすれば良いか。ギリシャ時代に破綻した民主政治であるが、20世紀の先進国にその名前がかなり長期に亘って存在するのは、政治権力者による大衆の洗脳工作が一応成功しているからだろう。

何度も同じ話を用いてしまうのだが、民主主義の旗頭であるはずの米国も、支配層が大衆を洗脳することでその形式を維持しているのである。インターネットなどの情報伝達システムの発達により、その洗脳がし難くなったと大統領補佐官を務めたブレジンスキーが感じた。つまり、政治的に困難な情況に追い込まれることを危惧したブレジンスキーは、「知識をもった100万人をコントロールすることより、その100万人を殺す方が容易である」と言い放ったのである。https://www.youtube.com/watch?v=Gc9rsvBIh9U 

勿論、一般市民の一人一人がもっと知的で、政治に対する理解と関心が高くなれば、夫々が独立した姿勢をとることにより民主政治が看板通りに機能するだろう。しかし、知識を得られる機会と道具が揃ってきたとしても、それをまともに使い切れなければ、上記のようなアンケート結果になると思う。それは、ブレジンスキーの危惧が正しいことを示しているのだろう。

(3月11日6時改訂)

補足:
1)金正日政権のときに、政府内で後継者としての十分な地位を長期に経験せずに、金正恩は北朝鮮を率いることになった。後見人となった伯父の張成沢に裏切られ、トップの座に金正男を据える工作もあった。https://news24-web.com/north-k/ それらを乗り越えて、6年間以上政権維持ができたのは、一定の能力を証明していると思う。
2)「親日反民族行為者財産の国家貴族に関する特別法」など、反日は韓国の国是なのである。韓国の一般市民も洗脳されており、そのような愚法を廃止できないのだろう。馬渕睦夫氏の「国難の正体」には、米国による東アジア政策がかなり詳細にかかれている。日韓の間に、核の部分で敵対関係を構築しながら、表面での協力関係を定めているのは、その一つである。また、朝鮮戦争は東アジアに米軍を置き日本や中国などの目付役とするための口実に使われている。これらは、朝鮮戦争がアチソンの朝鮮半島は防衛ラインの外という発言とともに起こったこと、マッカーサーは朝鮮戦争を勝利で終結しようとしたが、トルーマンに解任されたこと、そして日本封じ込め(瓶の蓋論)政策などから明らかである。馬渕氏は、トランプ政権でこの米国の東アジア政策が変化することを期待している。
3)日本や韓国など東アジアの言語の出来が悪く、会話における論理の伝達が正確にできず、感情の伝達が優先してしまう。(http://island.geocities.jp/mopyesr/kotoba.html )そして、TV, internet, SNSなどの発達は、会話の量的拡大をもたらし、一般人は相互洗脳に追い込まれるようだ。理系人間は、論理的思考の訓練を受けるため、比較的その傾向が少ないようだ。
4)大衆の感情の波が押し寄せると、内閣官房は国民栄誉賞で融和しようとする。フィギュアスケートの羽生選手はオリンピック二連覇で国民栄誉賞ということになった。感激した大衆は、客観的評価などという物差しには無関心である。http://www.news24.jp/articles/2018/03/02/04386979.html (もし、逆の感情の波が少しでも現れれば、中止になる可能性もある。)

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