2018年5月19日土曜日

政治は巨大なチームでの戦いである:官僚の体たらくは政権全体の機能不全の一側面

1)政治は巨大なチームでの戦いであり、政治家には大勢の官僚の組織的な助けが付く。そして、チーム戦に勝つには上からの適切な指示と下の忠実な実行が不可欠である。そのためには、下に位置する人間が上を高く評価し、上の人間が下を信頼するという、チーム全体の仕事上の関係が必須だろう。(補足1)

その際、上からの指示が適当でない場合も当然あり得る。その時には、上下で2-3回往復する意見交換が当然だと考える、環境(仕事場の人間関係)が不可欠である。そのことを田中角栄は、大蔵大臣就任時に官僚に向かって就任挨拶の中で訓示している。https://matome.naver.jp/odai/2148553888159033501

チーム戦では、成功や失敗はチームのものであり、一人の人間にその功績や責任を押し付けることは出来ない。つまり、政治において失敗があれば、それは間違いなく全体の失敗であり、トップが責任を先ず明らかにしなければならない。それがなければ、最前線で人生を賭けて仕事ができる筈がない。大蔵省のトップになった田中角栄は、そのように訓示したのだと思う。

その結果として、個人のレベルでの責任や栄誉が決定されたとすれば、それは納得の行くものだろう。その責任や栄誉の人事に於ける反映が、組織の新陳代謝となると思う。昨今の内閣のように、不適切な事がなされたかもしれないが、それは“忖度”により為されたことで、トップに違法性があったわけではないと言い張るのは、上記組織での戦いにおける尋常な姿ではないだろう。

仕事をチーム戦と捉える体制と、その各層が目的を共有して自由で現実的な対応をし、結果を生む政治が自由主義政治(リベラリズム)だろう。失敗を全て下に押し付けるのは、硬直した全体主義の特徴である。

そんな当たり前の図を、佐藤優さんのくにまるジャパンでの話を聞いて、思い出した。現在、日本は非常に深刻な情況にあることがわかる。https://www.youtube.com/watch?v=qdF4OfCXjS8&t=1007s

2)安倍総理がパレスチナ、イスラエル、アラブ首長国連邦など、中東を訪問した時、ネタニヤフ首相の晩餐会で、靴をデザインした容器にもられたデザートが出された。明らかに侮辱的な対応である。https://www.sankei.com/world/news/180508/wor1805080062-n1.html

その10日程経った5月14日、米国はイスラエル大使館をエルサレムに移した。その式典には、トランプ大統領の娘であるイバンカ氏が参加した。チェコなど米国に強く依存する数か国も代表を送ったが、日本は送らなかったようである。パレスチナ自治政府は、この式典に参加した国々から政府代表を引き上げさせた。https://www.jiji.com/jc/article?k=2018051700203&g=int

5月上旬にイスラエルを訪問したのだから、日本も米国のこの式典に参加したらどうか位のことを言われたのかも知れない。そこで快い返答が得られなければ、当然、靴のデザートくらいはあり得るだろう。何故、この微妙な時期にパレスチナとイスラエルを次々に訪問したのだろうか? 外務省はまともに準備を進めてきたのだろうか?

3)更に重要なのは、外務省は北朝鮮問題を巡る外交で、まともに仕事をしていないという指摘が佐藤優氏によりなされている。

米朝会談の後で、マティス国防長官が日本に来て、小野寺防衛大臣と会談するよう調整中だという。また、6月中〜下旬にトランプ大統領が日本に来るという計画もあるようだ。
https://mainichi.jp/articles/20180518/ddm/002/030/137000c 
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO30438010T10C18A5MM8000/

しかし佐藤氏は、「米国から「重要な会談は終わった。その結果だが、日本にはこのようにしてもらうと決まったと、報告と要請を米国から受けるのでは、日本外交が機能しているとは言えない」と言う。

米朝会談において、朝鮮戦争の終結と北朝鮮の核廃絶に関してのみ話し合われるのなら、朝鮮戦争に関与していない日本に出る幕はほとんどない。しかし、核廃絶との絡みで、その条件となる筈の北朝鮮の経済支援とその後の東アジアの平和維持体制について議論されるのなら、日本がその話し合いの中に主要メンバーとして入らなければならない。相当の経済的負担が予想されるのだから、当然である。(補足3)

この重要な件で、日本が完全に外された格好になっているのは、外務省の不作為の罪だという。その様になった原因として、佐藤氏は二つ上げている。

その一つは、日本の対北朝鮮問題の考え方として、拉致問題の解決を前提に置いてしまっている政治姿勢である。この拉致問題の解決を前提におく日本の姿勢が逆に壁になって、拉致問題の解決どころか、日本の北朝鮮外交全体が動かないことになっているのである。それを、「日本外交が、拉致問題に拉致されている」とブログ記事で表現した。https://blogs.yahoo.co.jp/mopyesr/43642299.html(補足2)

そしてもう一つは、安倍内閣の行政を進めるため、「忖度」を含めて一生懸命にやっても、ちょっとうまく行かなければひどい目にあう可能性が高いので、官僚たちはふとんを被って寝ているのだと話している。つまり、日本政府が巨大チームとして機能していないということである。

このような状態では、安倍政権では肝心なところで政治停滞を生じるような気がする。以上、一有権者のメモです。

補足:

1)仕事上の関係であって、そこにプライベートな部分を混ぜるべきではないと、最近のブログ記事に書いてきた。

2)尚、この考え方については、一月前にも独立した記事を書いている。https://blogs.yahoo.co.jp/mopyesr/43631245.html

3)日本の経済援助は、1〜2兆円とも言われる。日韓基本条約では、韓国を朝鮮半島唯一の国家という合意の下に、経済協力が為された。従って、韓国が北朝鮮を併合すれば、そのような経済支援の根拠はない。その日韓基本条約との関係をどのように考えて、小泉政権のとき日朝関係の構築を目指したのだろう。そこから、レビューして、国民に明らかにすべきだと思う。

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