2018年12月4日火曜日

徴用工問題において、「時効のない人道に関する罪」で補償を要求する韓国の傲慢

1)韓国の元徴用工判決(補足1)に関する意見は既に書いている。(11月26日の記事)それに尽きるのだが、そこにコメントをいただいたので、そのポイントについての議論を新たな記事としてアップする。

今回の徴用工裁判において韓国の最高裁判所は、日本の不法な植民地支配下でなされた強制動員への「慰謝料」として賠償権を認め、この「慰謝料」は未払賃金や補償金などの民事的な請求とは異なると位置付けている。

つまり韓国側は、1965年の請求権協定の取り決めがあるため、通常の請求権補償を巡る争いでは負けるとわかっているので、日本の「不法な植民地支配」によって傷つけられた人権・人道問題への補償という新しい争点設定を持ち出したのである。http://agora-web.jp/archives/2035974.html

この「日本の不法な植民地支配」という論点は、全く根拠がない。何故なら、韓国議会の決議により日韓併合はなされているからである。その経緯については詳しく書かれている記事は多くあるが、徴用工判決との関係でのものを以下に引用する。https://president.jp/articles/-/26873

また、仮に「徴用自体が不法で人道に対する罪である」という論理が成り立ったとしても、それに時効がないとするのには無理がある。ウィキペディアによると、1968年の国連総会において、人道に対する罪に時効がないとする議決がなされたが、英米などが反対した他、主要国の多くは棄権しており、条約としての効力はない。

2)「時効を無くした人道に対する罪」(補足2)で世界を裁くという方法は、米国の一部勢力が米国を筆頭とする連合国(United Nations)の背後から打ち出した一つの戦術だと思う。

それは、力(米国の力)で特定の国々をねじ伏せるための道具として用意したのだろう。彼らは、ナチスのホロコーストに対しては、徹底した態度を取りながら、ソ連のポグリムやカチンの森事件にはそれほど騒がない。それは、「人道に対する罪」が彼らにとって一つの武器だということを証明している。武器を用いるかどうかは、相手と状況で判断されるからである。

「時効を無くした人道に対する罪」を掲げて、過去の戦争を裁く権威を、全ての現存人は持たない。その論理によれば、現存人類は過去に滅んだ民族に補償しなければならないということになる。過去の戦争全てにおいて、人道に対する罪の山が築かれている筈だからである。「絶滅した民族には補償しようがない」と逃げることはできない。どこかに民族の末裔が少数残っている筈だからである。

つまり、「時効を無くした人道に対する罪」は、現存人が等しく意識すべき「原罪」と言えるが、平和条約などで未来志向にある両国の国境を超えて、新たに補償を要求する理由にはなり得ない。宣戦布告以外には、その補償要求を貫徹する方法はないだろう。

ナチスのホロコーストも、ソ連のポグリムも、米国の原爆投下も、日本の重慶爆撃も、英仏伊西ポの植民地支配も、全て「人道に対する罪」である。歴史を真面目に振り返れば、そして「時効を無くした人道に反する罪」を持ち出せば、その瞬間に現在生きている我々全ては、その被告席に立たされることになる。

補足:

1)新日鉄住金を相手に争われた徴用工裁判の原告側の人たちは、実際には徴用工ではなく、任意に応募した人だという。西岡力氏がそれを明らかにしている。https://www.youtube.com/watch?v=oCvz8ZjXCWY

2)「人道に反する罪」は、人道という概念が定着してからの罪である。事後法での処罰や遡及処罰は日本国憲法に反するのだが、それは他国でも自明のことだろう。人道に対する罪から時効を無くするということは、人間の歴史と文明を否定するような考え方である。それゆえ、特別に「」付きで、「時効を無くした人道に対する罪」と書いたのである。

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