2021年6月11日金曜日

新型コロナのワクチン接種の是非(III) 宮坂昌之さんの日本記者クラブでの講演について

新型コロナのワクチンを打つか打たないかは個人の基礎疾患とも関連するので、個人としては、メリットとデメリットを自分で考えて判断すべきである。その際、5月11日に日本記者クラブで行われた宮坂昌之さんの講演は、メリットを考える上で非常に参考になる。

 

 

この講演で私が初めて明確に知ったのは、脂質ナノ粒子の中に封入された今回のm-RNAワクチンが直接リンパ節に入ること、そして、樹状細胞からヘルパーT細胞が情報を受取り、キラーT細胞による細胞免疫機能が短時間で発現することである。(補足1)

 

ただ、この講演で若干不満に思うのは、個人的メリットと社会的メリットを峻別して議論されていない点である。例えば、年代毎のメリットとデメリットを比較する図(講演の53分頃ではそれが中心課題)があるが、これによると20代がワクチン接種する個人的メリットは殆どない。

しかし、20代はもっとも感染者が多い年代であり、彼らが感染を広げるのなら、20代へのワクチン接種の社会的メリットは非常に大きい。勿論、53分から始まる議論では、20代は別のワクチンを接種すべきだと言っておられるが、それだけでは同様の図でメリットがデメリットを超える図は描けない。従って、この講演を聞いた20代の健常者は、ワクチンを接種しないだろう。

 

今回のパンデミックで社会が新型コロナと戦う際に重要な点は、世代間の協力である。つまり、5月9日に書いたように、若年層にこそワクチン接種をさせるべきである。5月9日の記事

 

今回の講演のもう一つの不満は、将来起こり得るかもしれない抗体依存性増強(ADE)について言及が無かったことである。その危険性も、変異株が発生した時に変異株用に開発されたワクチンを、感染前に打ち続けられるのなら、問題は克服されるようである。なぜなら、m−RNA型の新型コロナワクチンの有効性は1年ほどで弱くなるので(補足2)、その新しいm-RNAワクチンの免疫で自身の免疫を上書きすれば良いからである。

 

宮坂さん自身も昨年の11月頃には、自分はワクチンを打たないと発言していたが、今年5月の講演のときには意見を変えたようだ。(動画の1時間25分頃から)その根拠として、「ファイザー社やモデルナ社から発表された安全性のデータが少なかったからである」と発言されている。

 

ただ、当時でも「生命に関わるような重大な副作用は無い」という両社の話を聞いたというので、ワクチンが生命に影響するウイルス病から守ってくれると知りながら、「今は、打たない」とSMSで意志表明されるには、もっと他の理由があった筈である。

 

兎に角、今までに現れた変異株を含めて、ファイザーとモデルナのm-RNAワクチンの有効性は90%を超えるので、基礎疾患の無い方で将来の変異株におけるADEを恐れない人(新しい変異株用ワクチンができるまで感染しない人)は、上記二社のワクチン接種が勧められる。

 

その他参考になったのは、今回のウイルスの場合、感染メカニズムとして重要なのは飛沫感染のみであると明確に言及されたこと(補足3)、更に、エアロゾル(極小さな飛沫)感染を防ぐには二重の不織布マスクがより効果が高いという指摘であった。これも、目からの感染が気になるので、外出後は目と鼻をあらうべきだろう。

 

補足:

 

1)インフルエンザワクチンなど生ワクチンでないワクチンでは、キラーT細胞による細胞免疫機能が直接発現しない。中国製ワクチンの効き目が今ひとつなのは、不活化ワクチンだからだろう。

https://www.kojirakawa-shiseido-hp.com/health/%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%95%E3%83%AB%E3%82%A8%E3%83%B3%E3%82%B6/

 

2)42分30秒の図では、55歳以上の人の中和抗体濃度は、200日後に約1/5になる。

 

3)インフルエンザなどでは接触感染の重要性が強調されている。欧米のマスク不要論の根底には、このインフルエンザの感染メカニズムが念頭にあるようだ。昨年1月29日の記事において紹介した、米国のジャーナリスト ローリーギャレットさんの記事では、マスクの有効性を非常に低く紹介していた。

 

 

 

 

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