2022年8月12日金曜日

統一教会問題は、その中心の反社会的行為を議論すべき

安倍元首相の暗殺に絡んで、旧統一教会が2015年に行った「世界平和統一家庭連合」へ名称変更の経緯と政治との関係が連日マスコミ報道されている。名称変更が「認証されたのは政治圧力があったからだ」という当時の文科省の審議官前川喜平氏の言葉があったのも、これほど続く一因かもしれない。

 

私は、旧統一教会(以下、旧は省略)はまともな宗教団体ではない(つまりカルト集団)と思う一人だが、日本政府はまともな対応をして来なかったと思う。そこで、名称変更プロセスの問題はたいした問題ではないこと、及び統一教会に対してとることが可能な対応などについて短く書く。

 

結論から言うと、前川氏が宗教法人の担当課長だった1997年に最初の名称変更の申請があったのだが、その際、申請を門前払いしたのは法的に正しくないと思う。一旦は受理して、認証しない決定のために宗教法人審議会の意見を聞くべきだった。恐らく、無駄な抵抗だっただろうが、改名に反対するのなら、法に定められた本来の手続きをとるべきだった。

 

つまり、2015年に文部科学省・文化庁への申請が為された際の統一教会の主張「名称変更の申請を受理・認証しないのは違法行為」は正論であり、文科省側も機械的に認証したという。これは正しい判断であり、伊吹文科大臣の政治判断が背景にあった云々は、本来成立しない主張である。

 

マスコミが報道すべきは、何故18年間申請をしてこなかったのかについてである。恐らく、マスコミの“予断”(補足1)に基づいての、名称変更の真の意図は「国民一般に過去の悪辣商法の報道で刷り込まれた悪い印象を消し去るため」であるとの報道が、統一教会には打撃になると考えたからだろう。

 

既に宗教法人として認証してしまった以上、国家が出来るのは、解散命令を裁判所に出してもらうことしかない。その為には、不法な金集めの例を幾つか取り上げて、刑事裁判を起こすのが正しいやり方である。

 

実際、Flashのネット報道によれば、「全国霊感商法対策弁護士連絡会」(全国弁連)の集計では、2010年から2021年の12年間で、確認できた被害金額は138億円、相談件数は2875件にのぼる。ところが、この期間中、「検挙」はなかったと報道されている。https://smart-flash.jp/sociopolitics/194770/1

 

そこで、マスコミが報道すべきは、この不思議な現象の裏に、「政治家の検察への介入」が無かったのか?という問題である。実際、オーム真理教の”ガサ入れ”(家宅捜索)が行われた後、特捜部はその準備を統一教会に対しても行っていたが、政治に潰されたという情報がネットに流されている。

 

「警視庁は当初、統一教会の松濤本部までガサ入れする方針だったのに、警察庁出身の自民党有力議員から圧力がかかり、強制捜査は渋谷教会などにとどまった。この話はいろんなところから何回も聞きました」と。この山口広(「全国霊感商法対策弁護士連絡会」代表世話人)の言葉=>

https://news.yahoo.co.jp/articles/136905b4a7f198d4746581e75c9e649ed684c2ff

 

これこそ、テレビがとりあげ、この関与した政治家をあぶり出す作業をして報道すべきなのだが、その努力をしていない。名称変更問題を報道することで、この統一教会にとって真の弱点を庇っているのである。ウィキペディアには、すでに政治家とのかかわりに関する詳細な記述が出ている。=>以下のサイト参照。

 

昨日のTV放送のゴゴスマでも、名称変更時の文科省審議官の前川喜平氏、東国原英夫氏、丸田佳奈氏らの出席の下で、議論らしきことを行っていたが、中途半端な議論に終始していた。本当にくだらない。

 

次に宗教法人法から、関係個所を抜粋して示す。

 

 

2)宗教法人法における宗教法人設立認証、認証取消、解散命令に関する記述の要点

 

宗教法人の設立の目的は、行政側からは宗教法人法の第一条に書かれている。その規定は、憲法の信教の自由に若干過大な配慮が為されている様に見える。私が考える宗教法人設立の目的は、簡単に書くと以下のようになる。

 

宗教団体が財産を所有し、業務及び事業を運営する際に、法人格が在ると権利義務の明確化が可能となる。つまり、銀行口座を持ち、会社等との契約をするなどの法的行為がその宗教法人名義で可能となる。宗教団体としても、税法上の優遇があり、法人化した方が何かと有利である。

 

設立の手続きとして、第一に宗教団体の「規則」を作成しなければならない。規則とは、宗教活動の目的、宗教法人としての名称、所在地、代表者と役員とそれらの職務権限、事業を行う場合はその詳細、財産の設定と管理、会計に関する事項、など団体の細部を明確にしたものである。

 

規則というが、それは「行政が把握すべき宗教法人の内容」である。そして、その所轄官庁からの認証を受けて、その後法務局で登記を行うのである。(補足2)宗教法人の所轄庁は、複数の都道府県にまたがる場合は、文科大臣となる。

 

所轄庁は、要件を備えていると認めたときはその規則を認証する旨の決定をし、要件を備えていないと認めたときは、申請人或いは代理人に意見を述べる機会を与えたのち、その規則を認証することができない旨の決定をしなければならない。所轄庁が文科大臣のケースでは、あらかじめ宗教法人審議会に諮問してその意見を聞かなければならない。(第14条)

 

宗教法人が名称変更をしようとする場合は、宗教法人法第28に従って、変更の認証を受けることになる。認証できない旨の決定には、第14条の規定が準用される。

 

宗教法人審議会の認証取り消しは、認証書の交付から一年以内に限り可能となる。(第80条)

 

法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為があった場合、或いは宗教団体の目的を著しく逸脱した行為があった場合などには、所轄庁、利害関係人若しくは検察官の請求により又は職権で、裁判所は解散命令を出すことが出来る。(第81条)(補足3)

 

以上がエッセンスである。更に追加すれば、“宗教法人の名称が実体を反映していなければならない”などの記述は無い。つまり、実体に変更がなくても、名称変更は可能である。他の法令を参照しないと詳細は分からないが、事業や金集めなどは一般の法人同様に可能である。法人税は免除され、所得税も公益法人として優遇税制の対象となる。

 

(9:25編集あり;18:20、編集、表題一部修正)
 

補足:

 

1)改称の目的など幾らでも言える。その内、行政側はもっとも疑わしいものでも、統一教会の改称の目的と指定できない。マスコミは、自分たちの考えで、つまり統一教会が予断と偏見と言うかもしれないが、正しく痛い所を突けるのである。

 

2)その認証申請の少くとも一月前に、信者その他の利害関係人に対し、規則の案の要旨を示して宗教法人を設立しようとする旨を新聞、機関紙、掲示板などを用いて公告しなければならない。(第12条)認証申請は、その規則の他に、その団体が宗教団体であることを証する書類、公告をしたことを証する書類など、所定の書類を沿えて申請する。(第13条)

 

3)ここで裁判所は、利害関係者の訴えによって、更には独自の判断でも、宗教法人の解散を命令することができる点が注目される。

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