2024年5月8日水曜日

日銀が利上げ出来ないもう一つの理由は新NISAでは?

二度の為替介入にも拘わらず円安が続いている。為替介入は、外れた相場をもとに戻す効果はあるが、理由があって動いた相場を元の値に戻そうとしてもその時点での相場に戻るだけのようだ。ただ、国民注視の前で何もしない訳にはいかなかったのだろう。

 

高橋洋一氏が言うように、100円代で購入した米ドルを150円以上で売ったのだから財務省は大儲けしたことは確かである。もし利上げの前にひと稼ぎしようと言う為替介入なら見上げたものだが、そうではないだろう。

 

日米の大きな金利差で生じたこの円安は、購買力平価で判断した場合は異常である。日銀は、利上げすべきなのだが、円安以外の原因でのインフレが明確に2%以上になっていないから利上げしないと言う。しかし、理由は別にあるだろう。

 

評論家の増田俊男氏は、その理由の一つを語っている。米国は、高金利下での景気の冷却を懸念しており、物価が落ち着き次第に利下げしたい。そのタイミングを待っている。そんな時日本が利上げするとかなりの資金が日本に流れ、米国の景気冷却の切っ掛けになる。米国経済の冷却が始まると、日本等にも影響が及ぶ。日銀はそれを恐れているというのである。

https://www.youtube.com/watch?v=H3uTk9-PU1w

 

ここで日銀が利上げ出来ない政治的理由として新たに指摘したいのは、利上げにより岸田政権の人気急落が予想されることである。

 

今年岸田政権が始めた新NISAは、日本国民の1200兆円にも及ぶ個人預金を米国に逃がす制度になっている。実際、新NISAの積立枠の多くは米国の投資信託に流れ、米国の景気を支えるのに(大きくはないかもしれないが)一役買っているのは確かである。

 

 

全世界の株を対象にしたインデックスファンド(俗称オルカン)でも構成株の60%は米国株である。その他、S&P500とかNASDAQ100などは全て米国株である。岸田政権下の日本は、円安政策と連動させて米国経済の為にも頑張っているのである。

 

今年1月早々に新NISAで米国株投資信託を買った人は、今年1月には140円だったドル円レートが現在155円程になっていることと、米株自体も10%以上の値上がりしていることも合わせて、これまでのたった4ヶ月あまりで20%以上の含み益を得ている。


ここで、日銀が利上げをすると、日本円は130~140円になり、この含み益が吹き飛ぶ可能性がある。そうなれば、密かにほくそ笑んでいた人たちも、あからさまに嘆きと恨みの声を上げることになるだろう。

 

今でも個別株への投資では、そんな嘆き節が聞かれているというのであるから、上記のような場合はすごいことになるだろう。

 

 

 

2)岸田政権への打撃

 

岸田政権は、従来の自民党政権以上に米国に従順である。それが安定的に政権を運営する上で一番簡単だからだろうと想像する。自分の総理大臣の地位と様々なメリットが約束される。第一、安倍さんのようにはならない。

 

 

米国盲従政策の一つが、盲目的なウクライナ支援であり、大量のCovid-19ワクチン購入であり、更にもう一つがこれまで誰も出来なかった世界一の日本国民の預金を米国に流すことである。(補足1)それらが、日本のマスコミのプロパガンダ的報道の支援も得て、素直な日本国民を背後に実行できた。

 

自然に景気後退になったなら、おとなしい日本国民は必死に我慢するだろう。しかし、新NISAと円安政策で国内外の株投資へ誘導されたあと、利上げによる円高で梯子を外されたら、多量に誕生した俄か素人投資家たちの魂胆と怒りの声は岸田総理へ引導を渡すことになるだろう。

 

税金収入を犠牲にしてまで新NISAを実行するのだから、日本株や日本株の投資信託に限るべきだった。それが、政府財政を増加させてGDP上昇を考えるよりも遥かに上策である。岸田政権の愚策と米国隷属の姿勢が、日本の金融を崩壊させようとしているのである。

 

 

終わりに:

 

デフレ脱却の為には、積極的に財政拡大してGDPを増加させるべきという考えもあるが、それは現在の日本では間違いだと思う。5年以上前までは、今回のような通貨安は想像できず、私もその考えに染まっていた。しかし、今日の異常な円安に歯止めが掛けられない程の財政赤字(補足2)では、これ以上の財政赤字の積み上げは日本経済を危うくする。

 

 

同じ金を使うなら、例えば適材適所を促進するための労働の流動化、既得権益の排除、労働生産性を向上させる投資の促進やインフラ整備など、地道な努力をするべきである。それと、健全な競争を社会に喚起する”文化的”政策も、他国同様に成長するには不可欠だろう。

 

三橋貴明氏ら所謂リフレ派の人たちの多くは、今でも「政府の債務を増加させれば経済成長する」という事を理由に、財政拡大を主張している。確かに、日本円で統計を取る限りGDPは成長するだろう。しかし、通貨の実力が崩壊すれば、長期的には逆に貧困化を招く。財政赤字を垂れ流してGDPを上昇させ、暮らしを楽にできる程、この世界は甘くないと思う。

https://www.youtube.com/watch?v=NvSp3uNyoQY

 

彼らが未だにMMTという思想にすがっている理由がわからない。インフレが大きくなるまでは幾らでも財政支出すればよいというMMT政策は、基軸通貨発行国のみが用いることが出来る。日本には適用できないことが今回証明されたと思う。

 

以上は一理系人間の素人分析です。コメント批判など是非お願いします。

 

補足:

 

1)郵政民営化の時、日本の簡保生命のお金を米国に投資させるためだと言われた。その時の郵貯と簡保のお金が350兆円だった。その時よりももっと円滑に且つ大規模に米国に資金が流れるだろう。

 

2)日銀総裁が言うように、日銀の大量保有する国債は元の価格で貸借対照表に掲載する限り、書面上は債務超過にはならないし、満期で償還を受けることができる。しかし、その後その借り換えをするには国債をもっと高利で発行しなければならない。その時は、もっと困難な情況に追い込まれるような気がする。

     

(おわり)(12:30補足1追加、編集)

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