2013年11月8日金曜日

家庭薬のネット販売と楽天社長

 家庭薬がネットで販売されるようになるが、暫くは劇薬を含む数品目に関しては、その中に含まれないことになった。前面解禁でないことに不満をもった楽天の社長が、政府の産業競争力会議の委員(注1)を辞任すると発表して話題になっている。
 この三木谷氏の反応には違和感を覚える。産業競争力会議は規制緩和を一つの旗印にしているが、何でも規制を無くせば良いというものではない。毒物及び劇物取締法では、医用薬品に含まれるものの取り締まりは薬事法に任せることになっている。従って、薬事法を改正する場合は再度毒物及び劇物取締法との関係を考慮する必要がある。例えば、ネット販売では全国の薬店から並行して同じ薬品を購入することが出来るので、一人の人間が大量に単一の薬を入手することが容易に出来る。その場合、家庭薬の不適切使用だけでなく不正使用も念頭において、薬事法の改正を考えるべきだと思う。つまり、対面販売では抵抗を感じても、ネットでは不正使用の為の買い付けであっても心理的バリアーはなくなるのである。薬のネット販売にはこのような微妙な問題が存在するにも拘らず、自分の会社の営業に影響する為か、腹を立てて委員を止めるというのは、まともな動機とは思えない。更に、この薬品販売における規制緩和は、産業競争力向上に殆ど関係がない。(注2)
 産業競争力の向上には、新しい技術や製品の開発、新しい需要の開拓(人生における新しい楽しみ方の提案)、優秀なる人材の育成、各社製品のブランド力の向上などを如何に図るかかが大切である。インターネットの利用促進も確かにその中にあるが、それについてはその負の側面を議論出来且つ利害関係に無い人の議論が重要であると思う。

注釈:
1) 経済に関する民間人を委員にして、国の経済に関する重要な決定に関与させることは、民主主義の原則に反するように思う。それは一つには利益誘導を彼らが行なう可能性があるからであり、もう一つには、国民一人一人が同じ重みで政治に関与するのが民主主義の原則だからである。
2) ネット販売をゆるして、産業競争力をつけるのは楽天やアマゾンなどネット企業である。一方、薬店などは競争力を削がれる。売れるものの量は、不正使用などが無ければ殆ど変わらないので、何処に日本国の産業競争力と関係があるのか解らない。

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