2013年11月15日金曜日

小泉元首相の無責任反原発宣言

 文芸春秋12月号に、山田孝男氏(毎日新聞専門編集委員)による小泉元総理の反原発の提言とそのマスコミに語る経緯が掲載されている。小泉氏の原発反対の根拠は核廃棄物の保存場所が無いことである。要約すると:1)核廃棄物の放射能の半減期が10万年位あるので、それ以上の長期に亘って廃棄物を保管する必要がある;2)日本は地震国であり、その地盤は安定しておらず、10万年間安全に保管する場所はない;3)廃棄物の保管場所が無い限り、原発はゼロにしなければならない、という論法である。一見明確な論理のように見えるが、少し考えればずさんな論理であることに気付く。また、小泉氏は原発推進から原発ゼロ派に換わったのは、大震災が契機であるとしている。しかし、上記論法は、東日本大震災による原発事故とは本来無関係である。巧妙に震災による事故と反原発を結びつけるやり方は卑怯である。私は、動機不純を感じる。(注1)
 上記3つの命題であるが、先ず1)の核廃棄物の半減期については科学的なもので、疑問の余地はない。2)の前半、「日本は、地震国であり地盤は安定していない」についても、場所により差があるものの、大陸に比較して地盤は安定していないだろう。しかし、それ以降の論理は、直線的で幼稚である。地盤が安定しているフィンランドでも、10万年間、最初の保管形態のままで、廃棄物が漏れ出ない保証などない。著者が、小泉氏の意見に対する補足として、「現在の技術で、十万年持ちこたえる構造物が作れるのか。そもそも十万年の耐久性を夢想すること自体ナンセンスではないのか」と書いている。その通りである。つまり、彼らは単純に一度コンクリート詰めしてトンネル内に放棄し、10万年以上放って置くと思っているのである。私は、当然一定期間毎のチェックとメンテナンスが前提とされていると思う。例えば「100年毎のチェックと数百年毎の補強」などのメンテナンスを予定している筈だと。そう考えれば、日本においてもフィンランドにおいても、その保管の方法に大差はないだろうし、フィンランドで出来るのなら、日本でも保管は可能な筈である。核廃棄物のガンマ線は1m程度のコンクリートでブロックできる。数百年後人類が死滅していなければ、優秀なロボットが出来ている筈であるから、数百年に一度、新しいコンクリート容器にロボットを使って入れ替えるなどの方法で、永続的に保管できるのではないか。
 著者が「潜在的核武装能力を失うと、国の独立が脅かされませんか?」と問いを投げかけたところ、小泉氏は「もともと核戦争なんか出来ないのだから。核武装なんて脅しにならない」と簡単に切り捨てている。この無責任さには呆れる。インドやパキスタンが核武装し、北朝鮮が核武装にこだわるのは、国体護持のためである。日本国民は北朝鮮や中国の核におびえてないというのだろうか? 
 現在、日本や世界の経済が順調に見える人も多いだろう。しかし、米国の通貨発行量(マネタリーベース)はリーマンショック後に4倍近くなっており、世界中の国もそれを模倣して、通貨安競争になっている。(通貨安競争の終着駅は、国民の富の収奪である。)米国だけでなく、世界中の国が、深刻な財政問題を抱えている。また、経済発展と不可分の関係にある貧富の差は、中国や米国だけでなくあらゆる国の政治を不安定にする可能性がある。例えば、株価が上昇し続けて一見景気が良さそうな米国では、食料配給に頼る人が10年間でほぼ倍増し、5000万人近い数に上っているとのことである。(注2)原発といった個別の比較的小さな問題よりも、国家の経済(そして世界の経済)こそ、最もその国を(そして世界を)危険で不安定な状態にするのである。
 世界規模の戦争は起こり難いだろうが、東アジアだけといった地域限定的な戦争が起こる可能性があると思う。私は、核兵器保持国において経済混乱がピークに達した時、その国をそのような状態に落し込んだとして、核兵器を強力な外交の道具として用い、日本国を支配するかもしれない。その際、日米の同盟などのメッキは簡単に剥がれるだろう。そして、“平和裏に”例えば多量の移民を送り込み、そこで要職に就かせる形で富の略奪をおこなうかもしれない。或いは、一気に核攻撃をして、豊かな列島をevacuateし、そこに数年後移民として乗り込んでくる可能性もある。世界の人は小泉氏が夢想するほど優しい人ばかりではない。(注3)数百年後、この地球上に生き残る国は、核兵器保持国だけになるかもしれない。
注釈:
1)週刊新潮、10月17日号、22ペイジ参照(週刊新潮、10月17日号、22ペイジ)
2)例えば:http://tanakanews.com/131111ushunger.htm を参照。
3)最近読んだ、ワイルドスワンに書かれている、毛沢東の大躍進運動や文化大革命の様子にはショックを受けた。人は、動物以上に残酷になれる動物なのである。

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