2013年12月1日日曜日

日本政府は民間へ干渉すべきでないー中国防空識別圏他ー

 中国が周辺諸国との調整無しに新たに防空識別圏を設定したことで、東アジア全体の緊張が高まっている。米国や日本の自衛隊機がそれ以前と同様に、中国に通告しないで飛行し、中国はスクランブルをかけたと報道した。
 この件に関し、私は11月26日のブログにおいて、日本政府が民間航空機に飛行計画の提出をしない様に要望したことを批判した。何故なら、民間航空機は乗客の安全を第一に考えるべきだからである。昨日、米国政府は米国の民間航空機に対して中国政府の求めに応じて通行計画の提出を進めた。そして同時に「防空識別圏における運用に対する中国の要求を、米政府が受け入れることを示すものではない」とも指摘した。この米国の対応は、自由主義の国では、通常政治と民間の経済活動をわけて考えるという趣旨から当然のことである。隣国のように、国を挙げてある国と対立するように政治が動くことは、政治の越権行為であり、本当の非常事態の時以外は慎むべきである。(注1)日本政府もこの米国の姿勢を見習うべきである。
 これと関連して、以前にも似た様な政治の動きがあった。それは、民間企業に賃金を挙げるように政府が直接要望したことである。賃金は民間企業と労働者(労働組合)が交渉すべき事であり、調整役として政府が間接的に関与する事があっても、直接企業に要望すべきことではない。(注2)これも自由な経済活動に政府が立ち入るという越権行為であると思う。政府の要望を受けた経済会と企業は、政府の要望を無視すれば、反政府的企業として国民から厳しい視線を受け、営業活動に悪影響が出るのではと考えてしまう。日本の社会主義的文化の傾向から考えて、そのような罠に陥ることはあり得ることであるが、それは外国から見れば、(自由主義を国是とする)我国政府の知性を評価する物差しの役割を果たしてしまう。
 次に、中国が米国機や自衛隊機に対してスクランブルをかけたという報道に関して、菅官房長官の何の利益にもならない発言が気になった。それは、29日夜、中国の通信社が伝えた中国軍機による自衛隊機と米軍機に対する緊急発進(スクランブル)について「特異な事例は報告されていない」と述べ、事実関係を否定した、ことである。中国が国内向けに、スクランブルをかけたと言っているのだから、そのまま放置すれば良いと思う。この発表は、スクランブルをかけるのなら、もっと真面目にかけるべきだと言っていることになり、非常に危険なことである。(注3)官房長官が、中国の悪口を国民に告げ口するような軽々しい行為は止めた方が良いと思う。

注釈:
1) 非常事態の時、どのように政治が動くかは予測不可能である。非常事態なのだから。
2) 要望は指導ではなく、何ら強制力を有しないので、あなたの批判はおかしいという意見があり得る。しかし、「政府の要望」は一般人の要望よりも遥かに重みがあり、半強制的な力がある。強力な武器を片手に持っていては、丁寧な言葉使いであっても、お願いは強制になるからである。
3) 中国から、「本当に喧嘩したいのか?」と居直られたらどうするのか?喧嘩を買う覚悟はあるのか?その時に、「親分助けてくれ」という台詞しか用意がないのなら、中国の国内向けの報道は無視すればよいと思う。

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