2014年5月31日土曜日

拉致問題の解決交渉は米韓の反対で挫折するだろう。

 北朝鮮との長時間の会議により、拉致被害者に関する再調査が北朝鮮で始まることになった。(注1)この件、日本が行なっている独自制裁の一部解除を伴って、しばらくは進展する様に見えるだろうが、何れ米国の圧力で挫折することになると想像する。安倍内閣は、拉致問題解決を最も重要な政策の一つとして考えているので、相当踏み込んだ条件を提示していると思われる。例えば、韓国の中央日報(日本版)では、万景峰号の寄港や金の移動だけでなく、戦後賠償金についても金ジョンウン側は視野に入れているのではないかと書いている。(注2)
 私は、北朝鮮による拉致は国家によるテロ行為であるが、それを可能にした日本国にも責任があると考えている(注3)。それだけに、拉致被害者の奪回は日本政府の最重要課題の一つであると思う。しかし、北朝鮮との国際的交渉システムとしては、核兵器の破棄を要求する六カ国協議の枠組みがある。従って、今回の拉致問題解決だけをテーブルに載せ、日本から経済協力金(つまり戦後補償金)を受け取ることは元々無理である(注4)。唯一可能性があると思うのは、(1)再度6カ国協議を再開すること、そしてその後の道筋として、(2)北朝鮮の国家体制維持を核兵器廃棄と引き換えに6カ国が認めること、などを安倍内閣が橋渡しとなって下準備することだと思う。(2)は北朝鮮には同意が非常に困難なことだろうが、それが唯一、北朝鮮が国家体制を維持したまま存続し、且つ、経済発展を実現する条件だと北朝鮮を説得しなければならない。これは大変な仕事である。しかしそれと同じ程度に大変なのは、米国にも納得してもらうことである(注5)。そんなことが、日本政府に出来るだろうか?
 現実的には、拉致問題の最終的な解決は戦後補償を条件としない限り、絶対に成功しないだろう。また、日本の独自制裁の解除だけでは、北朝鮮は納得しないだろう。安倍内閣は、おそらく、韓国や周辺諸国からの日本と北朝鮮への圧力を視野にいれて、北朝鮮と交渉をしていると思う。拉致問題の解決という点では、米韓の連携に日本は破れることも予想しているだろう。その際、日本国の置かれた情況をあぶり出して日本国民に見せ、日本の憲法と日米安保体制だけでは、22世紀に向けての日本の平和的存続が危いことを示すことを最低限の目標にしているのかもしれない。
 5月30日、日本の反発にも拘らず、米国内に7つ目の慰安婦の像が米バージニア州フェアファックス郡庁舎に設置された。連邦政府と州政府は違うと米国は言うだろう。しかし、諸外国に強い圧力をかけうる米国連邦政府が、自国の州政府に教唆(つまり強要)することは比較的に容易であると思う。現在、米韓両国は徐々に反日姿勢を更に強めていると私には見える。ただし、韓国は表から、米国は心の中においてである。(注6)安倍内閣が拉致問題の進展を模索しているのは、仮に懸案の拉致問題を除けば、北朝鮮が日本の周辺諸国の中ではむしろ反日度が低い国家になっているからだと思う。
 日本を取り囲んでいる、米国、中国、韓国の三角形の一角を崩すとしたら、安倍さんとは逆かもしれないが、私は中国だと思う。中国は脅威ではあるが、日本に対して持つ歴史的感覚は、比較的単純である。先の大戦で日本が中国を侵略したのは事実であるし、尖閣諸島も冷静に地図を見れば、中国に属していてもおかしくはない(注7)。それに対して、日本からみての米国との蜜月関係は、日本が保護すべき児童であることを前提としている。日本が普通の国になったとしたら、注5に書いた様に”小さく見えていたステンレスの棘”が益々二国間関係に大きく影響することになる。また、韓国の反日姿勢は遺伝子レベルの話であり、翻ることはないだろう。

注釈:
1)ヤフーの知恵袋に金ジョンウン体制が出来た時に、以下の題で投稿した。 ”http://note.chiebukuro.yahoo.co.jp/detail/n205130”:北朝鮮と関係を改善し、拉致被害者を取り戻すのは今である。
2)以下のサイト参照:”http://japanese.joins.com/article/917/185917.html?servcode=500§code=500&cloc=jp|article|ichioshi”
3) 2年以上前になるが、以下の題でヤフーに投稿した。珍しく2万件を越えるアクセスがあった。"http://note.chiebukuro.yahoo.co.jp/detail/n62832"; 北朝鮮は日本国にとって大きな脅威か?
4)経済協力金は、現在の体制のままでは核軍備を含む軍事費に使われ、北朝鮮が国際的テロ国家としての性質を変えないで延命する可能性が高くなる。
5)米国は日本の国際的な舞台での活躍を、北朝鮮の核保持よりも嫌っていると思うからである。米国が日本に対して持つ感情は複雑である。旧敵国であったという恨みは壊滅的な打撃を加えたことで消滅しているが、逆に原爆投下という罪を犯してしまったことが、日米間に深く刺さった棘として永久に残るからである。日本は忘れることが得意でも、米国は日本が消滅するまでは決して自分の犯した罪を忘れないだろう。
6)安倍内閣は、普通の国家を目指している。米国は、それを警戒しているのだろう。
7)これは尖閣諸島がどうなっても良いと言っているのではない。”絶対”死守すべきという考え方が、思考の範囲を狭くすると言いたいだけである。仮に、中国を民主化し、敵対する理由の無い国にする経費だとすれば、尖閣は安い代償である。
 共産党独裁体制は何れ崩壊するだろう。その時に、如何に日本の、そして、日本国民の被害をすくなくするかという視点で、尖閣問題も考えるべきである。なぜ安倍さんは、日本を米国の警察犬としての地位に縛りつけようとしているのか?何故、日本国を危険の前面に立たせるような言葉を、敢えて繰り返し発するのか判らない。

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