2014年9月12日金曜日

塩野七生氏の「朝日新聞の告白を越えて」を読んで

 文芸春秋10月号に掲載された、塩野七生さんによる上記表題の記事を読んだ。朝日の8月5日に出された、慰安婦誤報に関する検証記事に、どう日本(注1)は対処すべきかについて書いたものである。朝日新聞を虐めることで鬱憤を晴らすレベルの低い話ではなく、それを好機として世界に広まりつつある、「日本軍は性奴隷を伴って行軍していた」という誤解を、如何に解くべきかについての塩野さんの考えである。以下は私が理解した内容を“である口調”で書く。

 先ず、朝日の記事を分析すること、そして、朝日側からオリジナルな情報を全部提出させること、それに加えて、他の情報源からも集めることが大切である。その一例として、元オランダ兵士でインドネシアジャワ島に於いて日本軍捕虜になったウィレム・ユーケス氏を探して、当時のインドネシアでの日本軍の様子や、性奴隷と日本軍の拘わりなどについて、証言を得たらどうか。朝日の記事に「インドネシアでは現地のオランダ人も慰安婦にされた」とあったが、この部分は特に注意して対処しないと、日本国の本質に拘る形で(つまり、政治的だけでなく本質的に)欧米を敵にまわしてしまうことになるからである。ユーケス氏は、現地で日本軍の通訳として働くが、その後スパイ罪で終戦まで服役することになった。氏は、インドネシアでの日本軍と現地の両方の情報に詳しい筈の数少ない存命中の知識人だからである。

 その上で、朝日新聞社の関係者を、更に、この問題に関係した与党現議員や元議員をも召喚して、国会において証言させ真相解明をすべきである。また、そのプロセスを、全て公開すべきである。言論の自由との関係で、国会召喚に慎重になることは間違っている。例えば米国において、クイズ番組での不正な番組作り(つまり、やらせ)が問題になり、上院で査問委員会が開かれた例がある。その結果、コロンビア大学の著名教授の息子で同じ大学の講師であったその番組の回答者の一人が、大学から解雇されたという。報道の自由には報道の責任を伴い、その責任に拘る今回の件は、国会召喚してでも解明すべきである。この問題で、日本は徹底的に膿みを出し切るチャンスである。

 この問題は日本人が考える以上に重大である。それは、官憲が組織として、若い女性を性奴隷とした(しかも白人を)などという事実があれば、西欧諸国はくちに出せないレベルの深みから(注2)、日本人(文化)を侮蔑忌避することになるだろう(注3)。これは、長い間の在外経験から、キリスト教徒である彼らの心理の深いところに関する理解による。

 以上出来るだけ短く書いた。私は、全くこの塩野七生氏の意見に賛成である。世界の信用を得るには、日本国も矢面に立って、オリジナル情報と西欧的論理によって全てを表に提出する(裁くと同時に裁きを受ける)ことが必要である。ただ日本は、そのような”世間を波立たせること”を行なう能力に欠けるかもしれない。この国では、中身も持たなくても”人柄がよい”人が出世して、上の地位に就くので、国家の指導者や各方面のトップには、実行力はもとより実行する根拠を示せる人が少ないからである。しかし、幕末の時の様に、日本国の全ての”物を考える習性のある人”が危機感を持てば、何処かからその能力が出てくるかもしれない。そして、そのような危機感を持つ時であると私は過去のブログhttp://rcbyspinmanipulation.blogspot.jp/2013/09/blog-post_22.htmlにも書いた。

注釈:
1)日本政府と書くべきだが、政府だけに任せておけばでは何もしないだろう。日本国民、日本の会社、日本の大学、など日本すべての意味である。
2)口に出せるのは、自由(宗教のなど)、人権、平等、男女同権など表の世界に陣取る考え、一方口に出せないのは、表の世界の論理に矛盾してでも優先される、女性、子供、キリスト教、白人を大切にする気持ちである。
3)それは、”表に出ない”大きな損害の理由になりうる(これは私に寄る追加)。

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