2014年11月12日水曜日

日本の将来を考える:安倍総理は日本国を脆く、国民の富を減額する

1)円安政策について
 安倍総理の経済政策は、現在のところ、日銀が国債をどんどん買い取り、その金で公共事業をばらまき(地方創生)、更に年金資金も動員して株式を上昇させるためにつかうことである。公共事業に絡んだ土建屋や日経225や400の株を大量に持つ者には、株価の上昇で差し当たり資産額が増加して嬉しいだろう。

 この政府と日銀の金融政策は、世界の基軸通貨を基準に計算した国民の預金額や国債残高の額を減額する政策である。また、労働賃金も同様にドル換算で減額し、国内コストを下げることで輸出企業の競争力をつけようとする政策である。つまり、輸出企業の競争力の無さを、実質賃金の値下げなどで回復させようという政策なのだ。勿論、ヨーロッパや米国での金融緩和による行き過ぎた円高の是正は必要だろうが、その目安は米国の金融緩和前の1ドル100-110円(2008/1ー2008/9の値)くらいではないだろうか。(注1)

 自由主義経済の利点は、競争力なき企業から競争力を獲得した企業への入れ替えがスムースに行なわれることである。ぬるま湯人事などが原因で、競争力の衰えた輸出企業を生き残らせて、健全な内需企業の経営を圧迫することは日本経済の回復に寄与しないのではないだろうか。また、これ以上の国債残高は危険ではないだろうか。

 国民の賃金を開発途上国の賃金に近づけることで、貧民化する政策はグローバルに展開する大企業には、国内生産のコスト低減や外国で得た利益の円換算による見かけの増加など、メリットが大きい。しかし、内需関連企業では、円安は原料やエネルギーコストの増大などによるコスト上昇と、一般国民の実質賃金低下による国内需要の低下という、デメリットの原因となる。従って、円安政策はこれ以上進めるべきではないと思う。更に、家計においては、輸入食品などは値上がりにより、今後益々貧民化を実感する人が増加するだろう。

2)地方創生という政策について

 地方を経済的に元気にする政策を地方創生というらしい。しかし、地方が自力で立ち上がる様に、地方のことは地方にまかせるのが本来のあり方であり、中央政府で地方の企画に口出しするのは愚なことである。多くの権限を移譲して、小さな中央政府を目指すことが大切だと思う。そして、金を使う主体を政府から地方と国民に戻すことが大切である。中央政府の、独立行政法人などは大学を含めて廃止し(地方政府に移譲する)、地方創生は道州制を採用して一極集中の国家を地方分散国家に変換すべきだと思う。

 国民の不安は、政府の無策だけにあるのではない。自分の老後の心配などが非常に大きなウエイトを占めるだろう。近代経済とその一極集中により、親族間の関係、地域社会での人間関係などが希薄化されたのが、その主な原因の一つである。それは、全人口が全国に再配分されたことの結果だろう。そして、地域社会への帰属意識(注2)という人間が本来持つ重要な心的要素も破壊された。その結果、例えば隣地で殺人事件が起こっても、警察より後に知ることになる。

 そのような症状を軽減する出発点としても、道州制は役立つと思う。それにより、人材の全国規模での再配分を減少させることが出来るからである。そして、家族や親族がより近くで生活することになり、人々に自分の地域への帰属意識が育つだろう。また、その地域に芽生えた独立意識は、各地方にオリジナリティーに富んだ、産業や社会風俗などを創りだすことになるだろう。

   道州制の短期間での定着を図るためには、色んな方法があると思う。例えば、大学教育においては、同じ州の出身者の学費は無料或いは大幅に減額するなどして、優秀な人材の他州への流出を防止する。その為に、奨学金制度を大幅に充実させて、同じ州出身の学生には成績順に奨学金を与えるのが良い。教育効果の少ない大学は奨学金付きの学生が集まらず、結果として廃止に追い込まれるだろう。勉学が得意でなくても、他の分野で実力を発揮する道を用意することも大切である。現在の”誰でも大卒”という風習が、熟練技術者など色んな職種に人を配分することを、邪魔しているのである。熟練した技能者の育成は、若いときの訓練が欠かせないのだ。

 一極集中的な社会では、政府の中枢で働くような優秀な人材を育成する能力が、中央にある一つのヒエラルキーの中に限られる(注3)。過去にあった様な国家のカタストロフィックな崩壊は、優秀な人材の枯渇が一つの原因かと思う。州の指導者達は夫々のヒエラルキーの中で互いに競争し能力を磨き、そのまま中央政府のリーダーにもなり得る実力を獲得するだろう。そして、明治維新の時の様に各州から優秀な人材が豊富に社会の表に顔を出すことになる。結果として、道州制は脆い国家から二枚腰の国家に変えることが出来る可能性が高い。

注釈:
1) 中央銀行による通貨供給量(マネタリーベース)中央銀行の当座預金を含むので、実際に市場に流通しているとは限らない。
 ここ10年程の日米欧のマネタリーベースを示す。米国の金融緩和が如何に巨大なものであったかが判る。日本はゼロ金利であるにも関わらず、マネタリーベースを既に2倍以上に増加させている。ゼロ金利ということは、そもそも市場に日銀券の需要がない事を示している。それは、企業が創造性を失い、設備投資などを新たに行なう元気をなくしていることを示している。そのミクロな視点での情報を無視して、マクロな金融政策で景気を回復しようとするのは邪道に見える。ただ、ジョージソロスの作った図で考察すると、円安効果はマネタリーベースの比である程度決る様である。しかし、それは片方の国の金利がゼロの場合、成り立たないのではないだろうか。
2)人があつまり、集団で生きることで、文明が産まれた。(ジャレド・ダイヤモンド著:「銃・病原菌・鉄」)そして、神と祭祀の発明により、地域での人の繋がりが強化されたと思う。そして、人間が文明の家畜なら、我々はその環境に適応しており、現在の団地文化に不適応なのは当然の結果である。
3)現在は中央政府への優秀な人材補給路は、東大法学部卒だけに限られている。
以上は、元理系人の考えです。不十分な点が多くあると思いますので、ご教授歓迎します。

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