2016年2月15日月曜日

人類が宗教を必要とした理由

宗教が生じた原因について若干考えてみたい。もちろん、素人なので戯言のように思われる方も多いと思うが、遠慮なく叩いてもらいたい。

1)人は生き残るために集団化した。そして、その集団(一つの部族)には動物の群れと違って、複雑な社会的構造と一組みの規範や習慣が存在する。その部族の安定的維持に中心的役割を果たすのが戦力と宗教であると思う。宗教の一大特徴は、死して天国あるいは極楽に行けるという教えであり、それは幼児からの”刷り込み”と強制で部族構成員が共有する(補足1)。

あらゆる宗教において、戒めを守れば死後天国に行けること保証するのは何故か。私は部族の戦力維持の為に、若者の命の供出が必要だからだと思う。つまり、部族(や民族)が戦う場合に当然死者がでる。その部族の為に戦って死んだ者こそ、真っ先に天国に入ることが宗教で保証されるべきだからである。

戦争に勝ち残る為には、若者が命を差し出すだけでは無理である。その宗教に対する信仰心で、部族の結束を強くする必要がある。そして、それら要求にあった最も優秀で説得力ある宗教を作った民族が、戦争を勝ち抜き生き残る確率が高くなるだろう。優秀な武器を作り、戦術を工夫する必要がある。従って、生き残る為には技術(や文化)の発展も大切である。武力と宗教と文化の三重の鎖の発展が、部族の生き残りの為になくてはならないと思う。

宗教の基本は、若者に命を部族の為に差し出させることであるが、それを合理化する為の道徳や規範、及びその説明に信憑性を持たせる為の部族の神話、更に(後の世で分離する)実用的な自然と社会に関する知識、などを含んだより高度なものに進化する。宗教の進化は、戦争などによる部族の淘汰で起こる。

生物の進化と部族の進化は相似であると思う。生物の進化では、頭脳や四肢などの個体の機能変化が起こるが、部族の進化は社会の組織化、宗教を含む文化の発展、軍事を含む技術の発展などを伴う。

従って:軍事と宗教は、ペアとなって他部族との戦争の為に生じ進化したと思う。

2)有史以来、人口は食料生産量で決まる。人も動物も食料が十分あれば、その数は幾何級数的に増加する。従って、下図に現れている近世の急激な人口増は、農業の発達などによって食料生産量が増加したことに対応している。
上の図(内閣府のHPより)によれば、1世紀から11世紀まで、世界の人口はほとんど増加していない。従って、幼児の段階で死亡したり、疫病で死亡したりすることも相当あるだろうが、多くは飢えた部族間の戦争で命を落としたのではないだろうか(補足2)。人口増加の裏には、必ず農業の広がりと改良がある筈である。人口が急増するとき、戦争で死ぬ人間の数は減少し、軍備開発の停滞や宗教の堕落が起こっているだろう(補足3)。
上図は考古学及び歴史学的に調査された、全死亡の内戦争でなくなる割合を示している。(池田信夫氏のブログhttp://ikedanobuo.livedoor.biz/archives/51795121.html から転載;原著、Steven Pinker著、The better nature of our nature) 例えば、AD1325ころのSouth DakotaのCrow Creek(一番上)では60%にもなるっている。西欧文明が入り込まなかった地域では、南北米でもオセアニアでも、最大60%、平均して20%程度の戦争死亡率である。一方、20世紀の世界では平均2%以下の死亡率しかない。

つまり、近代文明前までは戦争死亡率は非常に高く、従ってこのデータは上記仮説の背景を説明している一つの資料であると思う。

グーグルグローブを見ると、温暖で緑に覆われた土地は、アフリカ中部、インドから東アジア、それに中南米である。アフリカで生まれた現世人は全地球に広がったが、部族の生き残りの理由となった農業など新技術の発生・発展は、東西に広がったユーラシア大陸で起こった(補足4)。http://www.s-yamaga.jp/nanimono/seimei/jinrui-01.htm

そして、もともと肥沃な土地であるインドや東アジアなどの人口密度が非常に高い地域は、人のプールの様な役割を果たしただろう。つまり、干ばつなど自然災害が起こって世界中の人口が減少しても、その後その土地へ人を移動させる役割を果たしたと考えられる。そして、部族の境界が明確にできる、中東など砂漠地域やヨーロッパなどの寒い地域において、戦争と宗教と文化の三重の鎖の戦いと発展があったのではないだろうか。

3)日本での例:
日本で戦争死を救う役割を果たしたのは、明治維新以降では靖国神社である。自爆攻撃を玉砕と呼び、最後に靖国で会おうと言い残して飛行機に乗ったのだから、それに異論のある方は皆無だろう。

日本の神道も、アニミズム的なものから、朝廷の英雄である天照大神を祀る神道に進化した。そして支配層は、古事記のような伝説とともに、出来れば聖書としてまとめたかったのではないだろうか。そうなれば、天照大神は日本製の人格神となる(補足5)。

武士が支配した中世、江戸時代以前の武士の戦争での死亡率は相当たかかったのではないだろうか。その戦争での死の救済のため、武士道が出来上がったと思う。儒教や仏教などから作り上げられた武士道は、思想というより宗教だと思う。

補足:
1)哲学の方でも死や、霊魂不滅などは考察されるが、来世がアプリオリに仮定されるわけではない。e.g., http://www.edv-consult.com/drwolf/lang_ja/Essay/Philosophia_mortis.html
2)致命的な病気の多くは、農業の発展特に家畜の飼育により生じた。従って、先進国と接触しなかった上記2番目の図の民は、ペストなどの疫病で死ぬことはなかった。(ジャレド・ダイヤモンド著、「銃・病原菌・鉄」)
3)現在はこの時期だと思う。武器の発展が停滞していたが、今後の歴史の大転換に備えて、新兵器の開発が進む時期に入ったかもしれない。おそらく、兵器ロボット、ドローン型殺人機、地球周回型の攻撃基地などが研究されているのではないだろうか。また、月面基地は人類による最初の大規模な月利用となる可能性が高いと思う。
4)これも、「銃・病原菌・鉄」に記載された考え方である。
5)その神道聖書が編纂されれば、聖徳太子の17条憲法は聖書におけるモーセの十戒に相当する形で載ったかもしれない。

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