2016年6月28日火曜日

反グローバリズムの動きをする人たちをポピュリズムという言葉で安易に批判すべきでない

1)今朝の読売新聞の一面に「はびこるポピュリズム(補足1)」というコラムが掲載されている。その記事には、“英国での国民投票の結果は、ヨーロッパ各地で広がりつつある極右政党の勢力拡大の流れに拍車をかけるだろう"と書かれている。そのコラムニストは、“彼らのスローガンは、「反エリート」「反移民」「反EU」である。社会の特定の階層や組織を敵視し、響きの良い言葉で現状に不満を持つ国民の共感を集める、ポピュリズム「大衆迎合主義」に他ならない。”と書く。

更に、“その背景にグローバル化があり、その流れに乗った勝ち組と乗り遅れた負け組の差が鮮明になっている。OECDの2015年の調査によると、先進国で所得が多い上位10%と下位10%の所得格差は10倍となり、1980年代の7倍から拡大したという。しかし、ポピュリズム勢力が、暮らし改善の具体策について支持を得ているわけではない”と記している。

そして、フランス国際関係戦略研究所のカミュ研究員の言葉を引用して、“「感情の民主主義、感情の独裁が出現する恐れがある」”と結んでいる。

2)似たような記述は、多くのサイトに書かれている。しかし何か一方的な批判の様な気がするので、敢えて「むしろ感情の民主主義に走っているのは、EU離脱派を批判している側かもしれない」という見方を書いてみる。(補足2)

上記コラムニストの、「EU離脱派や反エリート支配を主張する彼らは、社会の特定の階層や組織を敵視し、響きの良い言葉で、現状に不満を持つ国民の共感を集める。ポピュリスト「大衆迎合主義者」に他ならない」という批判は妥当だろうか。

先進諸国は普通、民主主義国家と見なされるが、異なる幾つかの政治的経済的階層が存在することは事実である。また、いろんな組織がそれら諸階層の利益を追求すべく存在するのも事実である。従って、非エリート層側に立つ政治家が、エリート層という特定の層と、その利益を追求する組織としてEUがあると考えるのなら、そのEUという特定の組織を批判して、大衆の共感を集めることが何故批判されなければならないのか?

大衆の感情に訴える演説などは、日本の国会議員の選挙などでも普通のことである。下層民は、移民が多くなれば仕事を奪われるので、移民を受け入れるべきでないと考えるだろう。従って、反移民の演説も何の不思議もない。同様に、EUから脱退すべきであるという考えは、移民との関連で出てきて当然だろう。

「ポピュリズムは批判されるべき」というエリート層に響きの良い言葉で、(下層民の団結を恐れる)エリート層の共感を集めるのは、グローバリストやそれを支持するこのコラムニストの方ではないのか?

もちろん、EU離脱派が無責任な人気取りだけの言葉で大衆の票を得て、結局国家の為にも大衆のためにならない結果に終わることになれば(そのような結果に終わることが明白なことなら)、批判されるべきである。しかし、その場合でも「EU離脱派はポピュリストである」という感情的な反論ではなく、論理的具体的に非難すべきである。

つまり、反エリート、反移民、EU脱退が、結局大衆(ピープル)のためにならないことを論理的に説明しなければならない。それが無い以上、EU離脱のチャンスを潰すために、EU脱退後の長期の不景気という無責任な予測で、大衆の恐怖を煽っているという批判もあり得るのだ。

実際、離脱派のボリス・ジョンソン氏はかなり深くこの問題を分析して、英国に勝算ありと思っていたのではないかと言う人もいる。http://diamond.jp/articles/-/93364?page=1 上記記事では、EUに代わって巨大な英連邦経済圏をつくり、その中の中心になって経済及び政治運営をするというシナリオもあり得ると書いている。

EUが弱体化して、日本や米国などがその余波を受ける可能性が高いので、世界に混乱を持ち込んで欲しく無い。しかし、それは英国の直接的事情ではない。もちろん、その影響が反射して英国にも深刻な問題を起こす可能性はある。しかし、もっと長期的視野で英国の関係者がこの問題を考えているとしたら、他の国ができるのは英国と英国のEU離脱派の批判ではなく、如何に自国の被害を最小限にするかということだろう。

補足:
1)ポピュリズム(populism)はpeople (ラテン語populus)とismからなる。
2)私は、昨日のブログにも書いたように、EU離脱の国民投票を公約にして選挙に臨んだキャメロン党首を批判する側である。http://blogs.yahoo.co.jp/mopyesr/42857181.html このような文章を書くのは、批判も正鵠を得たものでなければ、正しく作用しないと思うからである。。

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