2016年7月16日土曜日

安倍総理は、仲裁裁判所の判断をネタに中国を攻撃しない方が賢明ではないのか?

オランダのハーグにある常設仲裁裁判所(PCA)が、フィリピンの訴えを受けて、中国が南シナ海で岩礁を埋め立てて島とし、その領有権を主張することに法的根拠はないと判決した。これに対し、中国は無視する考えをアナウンスした。その上で、フィリピンの新しい政権との話し合いをする意向を示している。この件、国連のパンギブン事務総長も、二国間の話し合いで解決すべきとのコメントを出した。

この国連事務総長のコメントに怒りの動画を出したひとがいる。https://www.youtube.com/watch?v=aPgpYeYALEY また、以下の動画も同様の主張をしている。https://www.youtube.com/watch?v=DqmdhxLW1ZA 私も最初は、これらの意見と全く同じ意見をもったが、それはPCAと国連の司法機関である国際司法裁判所(ICJ)とを混同したからである。

常設仲裁裁判所は、同じハーグの平和宮(The PeacePalace)の中に入っているが、ICJとは別の機関である。国連とは無関係の機関が出した判断だと考えると、パンギブン国連事務総長のコメントはノーマルなものに聞こえる。そして、上記動画での怒りのコメントは行き場を失うだろう。

PCAは二国間の紛争の仲裁のための機関であるから、他国がそれを国際司法裁判所の判決のように考えて、中国を攻撃するのには違和感がある。そしてそのような行為は、中国政府からは門外漢のイチャモンと受け取られても仕方ないかもしれない(補足1)。アジア欧州会議で安倍総理が李克強首相との会談で、常設仲裁裁判所の判決を受け入れるべきだと声高に言うのは、第三者(他国)が何かを言う資格がないのを承知の上で、米国の提灯持ちをしているのだろうか?

英語のサイトだが、inquirer netというところでは、PCAとICJなどと、平和宮(the peace palace)との関係について書いている。平和宮そのものはカーネギー財団が運営しているとのことである。そこでも、西側の報道では、常設仲裁裁判所(PCA)と国連の国際司法裁判所(theUN’s International Court of Justice ;ICJ)を混同する場合が多いと指摘している. http://globalnation.inquirer.net/141125/arbitral-court-not-a-un-agency

とにかく、安倍総理には日本が根拠のない行為で中国との関係を悪くして、結果として日本国民が損をすることのないようにしてほしい(補足1)。また、マスコミにはマスゴミと言われることが多いのであまり期待はしていないが、できれば期待を回復するように、このような紛らわしいケース(同じハーグの平和宮にあるが、機能も権威も全くことなるPCAとICJの違いなど)は、あらかじめしっかりと説明してほしい。
        (12:00編集)
補足:
1)もちろん国際機関の出した判決だから、中国は従うべきである。従わずに何の平和的合意をフィリピンと構築できないのならば、中国の国際的評判が落ちるだろう。しかし、100%判決を受け入れるのではない形でも、フィリピンと合意すれば、それについて何かを言う資格は他国にないと思う。
2)つまり、軍事力ない国は、大きなことを言わない方が怪我をしないで済む。外交は、論理や原則ではなく、現実を重視して行ってほしい。したがって、日本が一定の軍事力と、それをManageする政治力をつけることが大事だが、それまでは米国にその役割をしてもらう(させる)べきである。

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