2016年12月16日金曜日

現在進行している日露両国の平和条約締結交渉はノーマルなものなのだろうか?

1)昨日からプーチンロシア大統領の訪問についてテレビが盛んに報道している。直前の記事でも書いたように、日本ではこの問題を北方領土返還交渉のように考える人がほとんどである。安倍総理がプーチン大統領に旧島民の手紙を渡したということだが、それはこの日本の考え方と一致している。多分ロシアでは、極東経済開発問題として考える人が多いだろう。

  しかし、大事なことは日露平和条約の締結の筈である。それは第二次世界大戦で戦ったロシア(ソ連)と日本の間での本当の意味での戦争終結である。その原点を忘れているのではないのかと思ってしまう。

その原点から見て、今考えられている経済協力はどういう意味があるのか?中国(や韓国)との平和条約(基本条約)の締結の際に約束された経済協力は、戦後賠償金の意味を持っていた。日露の間で戦後賠償金の支払い義務があるのか、もし無いとロシアが言うのなら領土問題だけが残されているのではないのか。

  歯舞群島は、休戦協定後に武装解除の形で乗り込んだロシアにそのまま占領された。その後、GHQにより日本の行政権が停止された。そのようにウィキペディアには書かれている。しかし、このようなプロセスを含めて、日本がサンフランシスコ講和条約を結んだのなら、仮にソ連が署名しなかったとしても日本に領有権はないだろう。

つまり、歯舞島と色丹島については、ロシアは第二次大戦で占領したので領有権は当然ロシアにあると主張すれば、それを覆す権利は敗戦国には無いだろう。そこに異論があるのなら、将来の経済協力ではなく、そこを中心に話し合うべきではないのか。

平和条約は、従来の国際的慣習に従って戦争の清算として淡々と行うべきであると思う。取られた領土に未練がましく縋るのではなく、国際的慣習に照らして最も合理的だと思われるように帰属を決めるべきだと思う。ここまでの段階で、双方が合意に到達するのなら、平和条約締結に支障はないと思う。

しかし、経済協力が平和条約の雰囲気作りのために必要だとロシアが主張するとしたら、それは戦争状態に戻るのか経済協力するのかと言う脅しである。それは平和条約の交渉をする時の話ではない。

安倍総理の8項目経済提案も、ODAのようなものではなく、日本の私企業がロシア内でロシアの法律に従って行うことであり、相互の経済的利益を見込んでのことだとテレビなどで解説されている。そのような経済協力の約束をして、4島または2島を平和条約の締結時に引き渡してもらおうと考えるのは、ノーマルな考えでは無いと思う。

日本政府は、経済援助(ロシア側にプラス)と4島(2島)返還(ロシア側にマイナス)をかき混ぜて液状にし、それに平和条約というネタをつけて、大きな天ぷらを揚げようとしているように見える。ネタが、衣との相性が悪くて、衣がうまくネタに絡まないにも拘らず、そのようなことをしてきたため、今まで平和条約の締結が遅れたのでは無いのか。

別の言葉で言えば、経済の時間軸と政治の時間軸を別々にとりましょうと言うような、インチキの合意は後々禍根を残すことになってしまうと思う。

2) もちろん、休戦協定締結ののち、占領した土地を自分の領土だと主張することが許せないと言うのなら、それを日本側が主張するべきである。それが受け入れられないのなら平和条約締結を諦めるのなら、それは一つの決断である。その代わり、日本は防衛問題をそれに沿って考えるべきである。

これまでの日本の対露平和条約に対する姿勢は、選択項目の中にないことを必死に考えているように見える。

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