2017年7月20日木曜日

日本は、ウエットな労使関係を止めて、開放的な社会をめざすべき

新国立競技場の工事の関係者で過労自殺があった。https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170720-00010005-bfj-soci 亡くなったのは23歳の新卒男性であり、自殺直前の1カ月で徹夜が3回もあり、夜22時以前に仕事が終わったのは5日だけだったという。若干不思議に思うのは、「何故そんな会社からさっさと退職しなかったのか?(補足1)」ということである。

以前にも広告代理店電通の東大卒新入社員が過労自殺したことが報じられた。http://ironna.jp/article/4218その際も同じ感想をもった。極端な過重労働を強いられた場合、誰でも退職すべきだと考えるのだが、それでも退職できない事情があった筈である。仕事に特別の責任感を要求する日本の道徳観が背後にあるのかもしれないが、やはり、次の職場が見つけにくいのだろう。

このような事件は日本に独特の現象だろう。恐らく労働者と雇用者或いは上司との人間関係が、非常にウエットであることと関連しているのだろう。最近の記事だが、日本では労働者と雇用者の関係は封建領主と領民の関係であり、労働と賃金の関係ではないとブログに書いた。そのウエットな、労使関係や同僚間の人間関係が有るがゆえに、就業後の飲み会などの付き合いや、仕事を離れた場面でも仕事場の上下関係がついて回る現実がある。https://blogs.yahoo.co.jp/mopyesr/43274988.html

仕事場を労働と賃金というドライな関係の場(空間)にすれば、新卒の一斉採用や、中途採用や転職を目指す人間への差別待遇などが無くなる筈である。更に、年齢差別や男女差別の他、正規雇用者と臨時採用の職員との給与差別もなくなるだろう。セクハラ騒動も減少する筈である。

会社側にも、年功で高給取りになった役にたたない人間の解雇が容易になる一方、気がつけば定年という幸福なのか不幸なのか分からない情況から、労働者を追い出す(或いは解放する)だろう。(補足2)この仕事に於ける一定の厳しさは、日本を人間関係よりも仕事の能力において上昇志向を持つ労働者の社会にするだろう。

その結果、年功序列ではなくスキルを向上させることで高い給与を目指す人が増加するので、被雇用者全体の労働の質の向上に繋がる。それは、日本国全体の生産性向上をもたらす。全体的に労働者の給与は上昇する一方、会社は高い給与を避ける意味での設備投資を余儀なくされる。人不足はすぐに解消するだろう。移民や外国人労働者を入れようという風潮は消え、将来の治安の悪化は防げるだろう。 

現在、毎年剰余金を積み立てて、配当にも出さず設備投資もしない会社が多い。また、デフレ経済の一因に実質賃金の減少がある。それは労働の質が低いからであり、人脈と年功序列で出世する日本社会の伝統が関係している。

同じ会社で人間関係を駆使して出世し年取った無能な経営者を抱えて、倒産の危機にある会社は多いだろう。東芝やすでに倒産したシャープ、身売りののちに外人社長で業績を回復した日産自動車など、一流の企業にもその日本独特の遺伝子病であるが多い。日本の労働市場の改善は緊急の課題であることは明白である。

この病気が重病且つ万年流行しているのが、霞ヶ関や永田町だろう。各省庁の上級公務員は、くだらない公務員試験を受けて採用される。その狭いなかから、次官レースが始まるのである。どう考えても優秀な事務次官が生まれるとは思えない。その官僚たちの中から、戦後の与党政治家が供給されてきた。日本のなさけない現在の姿は、東芝やシャープの姿と同じ遺伝子病患者の姿である。

この理屈が分からない人が、この国に多い。古い労使関係を日本の守るべき伝統と勘違いしている向きが多いのは非常に残念である。オープンな社会の実現は、この労使関係の改革が第一歩だろう。過労自殺の解説記事の殆どは、一方的に会社を攻めるものであり、解析のレベルが全ての報道機関で極めて低い。

以前にも似た事件を異る角度から議論をしたことがある。内容は書いた本人も忘れてしまっているので、引用だけしておきます。
https://blogs.yahoo.co.jp/mopyesr/43009756.html
https://blogs.yahoo.co.jp/mopyesr/43005301.html

補足:
1)最初、退社ということばを使ったのだが、退社は普通夕方仕事を終わって家に帰る事を言うので、退職に代えた。会社が労働者を”クビ”にする場合には解雇という言葉があるが、労働者が会社を”クビ”にする場合、退職以外に言葉がない。違う会社で同じ職に着くという言葉が、日本語の中にはないのだ。
2)筆者は、一般会社の厳しい労働環境を知らない。一方的な見方である可能性もある。従って、批判や議論等特に歓迎します。
=== 編集あり(7月21日午前6時)====

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