2018年9月21日金曜日

南北朝鮮統一のプロセスについて:

以下は政治に関しては全くの素人の文章です。その点を承知の上で読み飛ばしてください。

1)表面に現れた話と深層や真相とが、大きくかけ離れているのは外交の世界の常かもしれない。従って、真相を探るには表に現れた部分は単なる手がかりであり、両国の大きな戦略を想定し、そこから判断した損得勘定を考えなければならないと思う。

更に特定の外交案件に関して、大統領など直接当事者の個人的性向(好みや判断の方向や能力)が、正しく損得勘定に沿った行動を妨げる可能性もある。ミスが大きな動きの原因になったりするからである。そのように考えると、米朝韓中の4国関係の真相を知ることは非常に難しいと思う。

6月の米朝首脳会談の直前に、米側が北朝鮮の核廃棄に時間がかかると言い出したことから、実は米朝は敵対関係から協力関係に静かにシフトし始めたのではないかと、評論家の藤井厳喜さんが、一つの思いつきとして披露した。それについて、ブログ記事にしたものを引用する。https://blogs.yahoo.co.jp/mopyesr/43676167.html

実際、米朝首脳会談の後三ヶ月経過した現在、全く北朝鮮の核廃絶の道が見えていない。ほぼ同時に米中貿易戦争が起こり、米国にとっては北朝鮮の核保持による中朝分断が、利益につながるようになったのかもしれない。北朝鮮の核兵器は、米国にとってよりも中国にとってより大きな脅威だからである。

この件、今週の文在寅と金正恩の会談に多少期待が持たれた。しかし、会談後に発表された共同宣言は以下の通りで、あまり本質的で重要な話はなかったように思う。

共同宣言の骨子:金正恩の早い時期のソウル訪問、米国の対応次第で寧辺の核施設を廃棄する用意がある、東倉里のミサイル開発施設を永久廃棄、軍事共同委員会を発足させ、南北朝鮮で武力衝突防止の為の協議を行う、2032年のオリンピック共同開催に向け協力、以上5項目である。(20日、中日新聞一面より)

その中で、軍事衝突を防ぐために軍事共同委員会を設置するという話は、統一国家を目指す二つの兄弟国家というのが事実なら、随分後ろ向きの話に見える。つまり、実態は未だに軍事衝突を心配する情況であり、統一国家というのは遥か彼方の話だということだろう。

また、二人の首脳の親密な光景の割には、平和裡に統一国家を作るというプロセスのグランドデザインについては、その片鱗も見えていないのも不思議である。

2)今回の朝鮮南北会談などを含めて南北の統一に関する話し合いの解釈について、一つのモデルをチャネル桜の水島社長が述べている。https://www.youtube.com/watch?v=hrXwHHs5XFc 

それは、米国を利用して中国の影響下から脱却したいと思っている金正恩を、文在寅が中国の意を汲んで中国側に引き込もうと画策していると言うのである。おそらく藤井厳喜氏らとの話し合った結果、作り上げたモデルだろう(上記ブログ記事参照)。

もし、そのモデルが正しいのなら、金正恩は米国の影の支援で中距離核まではこっそりと保有したまま、独立独裁国家を目指していることなる。その上で、朝鮮戦争の完全終結のために、平和条約を米朝(中)間で締結したい。それを察知した中国が、文在寅を利用して中国側に引き戻すために、努力しているということになる。文在寅は、表では朝鮮統一への努力を演出しながら、北朝鮮と中国の仲を修復し緊密化するよう努力しているというのである。

金正恩の反中国の姿勢はつとに有名だが、その背景にあるのが張成沢事件だろう。金正恩は北朝鮮のトップになった2011年12月から1年あまりしか立たない2013年、中国により自分が排除される可能性があった。そのことは、強く心に刷り込まれている筈である。

中国と関係の深かった叔父の張成沢に、中国の助けを借りて金正男にトップをすり替える陰謀があり、それを金正恩が中国の周永康の密告により知った。激怒した金正恩が、張成沢と親中派を一掃した事件である。中国でも、周永康が秘密漏洩の罪で失脚した。 https://www.sankei.com/world/news/150224/wor1502240038-n2.html

文在寅は、中国との関係がそれほど長く深かった訳ではないだろう。中国の奥深くの闇を知る金正恩を説得するのは、それほど簡単ではないだろう。

3)文在寅の統一朝鮮を目指した外交は本心から来ると以下考えて、少し議論する。この文在寅の試みは、成功しないと思う。どうしてそのような難題を設定して努力するのかわからない。

民族の統一という錦の御旗は、国内問題なら効力抜群だろう。しかし、今回は米中二つの大国を巻き込んだ外交案件であり、表では統一の御旗は派手に見えても、深層では役立たないのではないかと思う。無理やり米中朝の間に入り込むのは、さしあたり今後20年程度の韓国国民の安全と福祉を考えた場合、プラスにはならないだろう。

勿論、統一の話し合いをしている限り、米国による北朝鮮攻撃は無いだろうと期待し、本来無理な統一の話し合いを続けているという考えはある。それにしても一定の論理的道筋がなければ、その意味もなくなるだろう。そこで以下に、文在寅がこのようにして統一朝鮮をつくるプロセスを考えているのだろうと、想像して書いた。そのようなことが書けるのは素人の特権だろうと思う。

先ず、民主国家としての統一朝鮮を目標として設定することは無理だろう。何故なら、その体制は金正恩の体制を最初から否定するからである。(補足1)従って、南北統一する場合、自由経済と共産党一党支配の中国型統一国家をゴールとして設定することになると思う。経済は韓国、政治は北朝鮮という非対称だが平等な統一である。しかしそれを拙速に行えば韓国経済はガタガタになるだろう。

そのため差し当たり、一国二制度の連邦制国家を当面の目標とするだろう。その準備として、北朝鮮の経済発展を中国型の経済構造と韓国の資本投下で行う(後述の日本の役割参照)。そして、完全統一までのプロセスを唱う、南北朝鮮統一条約を締結して、統一準備委員会をつくり、そのトップを統一朝鮮大統領と呼ぶ。この大統領には、最初北朝鮮の金正恩次に韓国の文在寅というふうに両国から交互に出す。軍事演習もロシアと中国がやったように形だけでも共同でやる。(補足2)

これら一連の動きは、国際社会の応援を得て、米国もあまり手出しはできないだろう。

最終的に北朝鮮の核兵器を温存した形で、親中国の顔をした統一朝鮮の足がかりをつくり、米軍の韓半島からの撤収を願い出る。南北朝鮮の統一という美談と時間の経過で、国際世論において北朝鮮の核軍備への心理的抵抗が薄くなるのを待つのである。

つまり、北朝鮮の核武装が韓国の経済力と対等の価値を持つ形での南北統一である。これなら、経済的な相当な困難にも韓国の世論は耐えることができるだろう。米国の支配下でなく、親中国と言っても中国の支配下ではない統一朝鮮ができることは、朝鮮民族の勝利だからである。世界の多極化を考えている米国にとっても悪い話ではないだろう。

このプロセスの中で、日本は重要な役割を二つ果たすだろう。北朝鮮との基本条約締結と戦後賠償金の代わりをする経済協力金である。その際、拉致被害者全員を日本に返したとしても、それは北朝鮮にとって何の負担にもならない。北朝鮮への経済協力金は本来日本に支払う義務はないと思うのだが、人質を取られた日本は当然のように勘違いをして支払うだろう。(補足3)

因みに、三選を果たした安倍総理は、平壌に出かけて行き、直接話し合って拉致問題を解決すると、先ほどの(20日夕刻)記者会見でも言っている。それは非常に愚かな考えだと思う。拉致問題を北朝鮮と交渉するのは、泥棒と会って盗んだ品物の変換交渉をするようなものである。経済協力金を支払って3年ほど経過すれば、(何年後になるか分からないが)統一朝鮮は反日国家の本性を表し、その核兵器は日本の最大の脅威となるだろう。反日は統一朝鮮の向心力となるのは今も昔も同じだろう。(補足4)それが二つ目の日本の寄与である。

補足:

1)つまり、米国の要求を受け入れて核廃絶したのち南北朝鮮が統一されたとすると、経済力の圧倒的な差から、文在寅の韓国による併合しかあり得ない。それは、金正恩の地位と北朝鮮軍の韓国軍に対する優位性を放棄することになる。それは受け入れられる筈がない。

2)大統領にはいろんなタイプがある。ドイツやEUにも大統領が存在するが、あまり表に現れない。この共同軍事演習だが、仮想敵国は明かさないだろうが当然日米ということになると思う。

3)日韓基本条約では、韓国を朝鮮半島唯一の政府として承認し、戦前からの諸関係の清算として経済協力金を支払った。突然別の国が半島内に現れて、そこにも経済金を支払うというのは、日韓基本条約の考え方に矛盾する。韓国は半島唯一の国家として経済協力金を受け取ったからには、半島の一部に別勢力に出現して独立国となった場合には、必要な資金は韓国が本来負担すべきである。
また、国交の無い国により拉致された被害者を奪回するのに、経済協力金という形で解決するのは、非常に愚かなことである。本来は、宣戦布告をして取り返すのが筋であり、それができないのなら、国家としての不備の責任を被害者家族に詫び、国家賠償として保障すべきである。

4)日本は1945年までの宗主国である。中国の王朝交代の時でも、より小規模だが韓国の大統領交代のときでも、先代を事実や根拠など無視して批判し貶すのが、これらの国の伝統である。国際法や”科学的”という言葉を信仰する日本は愚かだが、これらの歴史改竄の伝統も汚い。

(2018/9/21)

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