2018年11月4日日曜日

韓国最高裁の徴用工問題判決:政治を法と論理の世界だと思う日本の愚かさ

1)徴用工の問題で日韓関係が揺らいでいる。韓国最高裁は、韓国人元徴用工の主張を認めて、元徴用工に対し当該日本企業に賠償を命じる判決を出した。原告の要求は、未払い給与の支払いなどではなく、劣悪な環境で働かされた苦痛に対する賠償要求であり、当時の日本国家の決定に基づいてなされた徴用工制度に直接関係する。従ってそれは、日韓基本条約と同時にむずばれた請求権協定で、韓国側が一括放棄した権利である。この件、昨年8月のブログに既に議論している。https://rcbyspinmanipulation.blogspot.com/2017/08/blog-post_18.html

今朝(2018年11月3日)のテレビ番組ウェイクで、中央大法科大学院教授の野村修也氏は、「韓国は三権分立の国だから、大統領もこの判断を覆すことは出来ないだろう」と言っていた。この発言は、意味不明である。司法の判断を大統領権限で覆すことなど、出来る訳がない。多分、野村氏の発言は、「大統領はその最高裁の判断に従って、日本企業へ賠償させる様に動かざるを得ない」という意味だろう。しかしそれは単純な解釈だと思う。通常なら、大統領がその司法判断に従って行政を動かすだろうが、国家にとって非常に重要な影響がある場合、それを無視することも考えられるからである。

民主国家における行政の最終判断は、主権者の国民によりなされるべきである。しかし、国民全体の意思を直接確認することは通常不可能であり、それを国民の選任による国家元首が行う。つまり、大統領が日韓関係を破壊し、国民全体が多大な損害を被ると考えた場合、特例として司法の判断をそのまま行政に直接反映させないことも可能だろう。

以上述べたことは、通常大統領と呼ばれる地位は国家元首であり、単なる行政官のトップではないということを根拠にする。つまり、大統領の権威は三権の上位に位置する。極端な例をあげれば、国家存亡の時には国家元首は、憲法などの国家の法体系を停止する国家緊急権を行使する。(補足1) https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9B%BD%E5%AE%B6%E7%B7%8A%E6%80%A5%E6%A8%A9

もし韓国がそのような国なら、当然文在寅大統領は、韓国の今後の行政に今回の最高裁判決に従った措置を取るかどうかの判断が可能である。それは、福田総理のときのダッカでの人質解放の時にとった措置と同類である。

この問題が大きくなるとした場合(この放送を観た感想だが)、テレビが国民に正しい情報を与え、考える材料を与える役割など出来そうにない。日本の電波は、レベルの低い人達や、仮面を被った反日スパイ的な人に支配されているからである。

おそらく文在寅大統領はベトナムのような統一朝鮮を考えているだろう。その場合、韓国経済はひどい情況になる可能性がたかい。また、北朝鮮は日本と日韓基本条約に相当する条約を結ぶことになる筈である。その際、巨額の戦後賠償を得るには、この問題を大きくしておくことが有利だろう。

韓国は消滅するのだから、韓国に相当する地域は、二度目の賠償金を日本から手にするチャンスであると考えているかもしれない。

2)今回の韓国最高裁の判決は、文在寅大統領の顔色をうかがって出された判断だろう。今後それを利用して、無から有を出す日本相手の韓国風錬金術として利用するためである。そのようなことをすれば、国際的な悪評を世界にばらまくことになると、ナイーブに日本人は考えるだろう。

Youtube動画などでも、韓国批判をして溜飲を下げるような内容の動画がほとんどであり、テレビ同様に視野の狭い内容を流布している。その中で、日本の多くが簡単に片付ける程には単純な問題ではないと指摘したのが、佐藤優氏である。佐藤氏は、以下のような問題点を指摘している。 https://www.youtube.com/watch?v=T6vJjPpQnw4&t=1068s 

①日本企業は、保障をする法的義務が無いとしても、人道的観点と企業イメージの毀損を防止する観点から、個別に保障をしてきた例がある。今回の判決で、それが出来なくなるだろう。それが、韓国内に日本に対する不満を更に大きく醸成することになる。

②韓国が、日本企業の韓国内資産を差し押さえることになれば、日韓の経済交流は大きく縮小し、多大な経済的損害を生じることになる。更に、韓国は米国に存在する資産を差し押さえるべく、弁護士を使って活動した場合、米国での経済活動においても、日本企業は韓国リスクを背負うことになるだろう。もし、中国が韓国に習って、同様の行動をとれば更に大変な問題になる可能性がある。

③法理論としては日本側に利があるとして、安閑としていては日本が巨大な罠にハマってしまう可能性がある。その方法は、日本の徴用工の悲惨さを慰安婦問題と同様に捏造宣伝することである。その様に、米国市民の感情に訴えた場合、日本の国際的イメージを大きく悪化させることになる可能性がある。中国と韓国がこのようなプロパガンダを展開することになれば、慰安婦問題との相乗効果で、日本が窮地に立たされる危険性もある。

世界は衆愚政治の時代に入ったと思う。その兆候は、米国や最近のブラジルなど、到るところに現れて来ている。法と論理による政治参加ではなく、感情と怒りによる政治参加を主張し、それを扇動することで利益を得ようとする勢力が世界に台頭している。日本はそのような世界の動きに鈍感である。未だに、法と論理で物事が運ぶと幼稚に考えている。

貧富の差の大きい中国と米国(補足1)で、そのような衆愚政治の嵐が吹けば、世界は混乱の時代に入る可能性が高い。経済のグローバル化と先進国での大きな貧富の差が、そのような素地を一層強く世界中に作り出した。高い貧富の差に苦しむ世界の衆愚は、生贄を必要としている。そこで、最初の犠牲に日本国がなる可能性がかなり大きいかもしれない。非常に心配である。

補足:
1)貧富の差を表す統計数値にジニ係数がある。主要国の中でそれが大きい代表的国家は、米国、ブラジル、中国である。低い国家として北欧諸国がある。http://top10.sakura.ne.jp/CIA-RANK2172R.html

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