2019年2月21日木曜日

一島返還で日露平和条約を締結することは、日米関係に悪影響を及ぼし、禍根を残すだろう

ロシアとの平和条約交渉は国境線の線引きで折り合いがつかずに難航している。2月17日の記事において、ロシアは中国圏でナンバー2の位置に甘んじるとすれば、日本との領土交渉は強硬だろうと書いた。つまり、単に日米の間に楔を打ち込むためのパーフォーマンスであり、ロシア当局は「注文の多い料理店」である。(補足1)

一方、もし真剣に地域の覇権国、或いは仮に現在のロシアの領域だけの完全独立国を目指すにしても、一定の譲歩をして、日本と平和条約を締結する筈である。それは2島返還での合意を意味する。ロシアがあくまでも一島変換で合意を目指すのなら、今回はあえて領土を確定しての平和条約締結にこだわる必要などない。

世界がロシアをソ連解体後のソ連との関係をそのままロシアとの関係とみなし、改めて対露平和条約を締結していないのなら、日本も日ソ共同宣言を、領土確定を含まない日露平和条約とみなして良いと思う。日ソ共同宣言は両国で批准をしており、領土問題以外において平和的関係を確認し、国交は樹立されているからである。

つまり、日露の交渉におけるロシアの態度は、今後の東アジアにおいて、ロシアはどのような地位を想定しているかによる。もし、中露関係を最重要な関係と考えているのなら、日本は日米同盟を更に強化する方向で、米国と交渉すべきだと思う。

シベリアにおける人口の大きな非対称性と世界一長い国境線から考えて、米国の著名な戦略家が言うように、中露は本来仮想敵国として互いを想定すべき関係にある。ロシアと中国が、それぞれの文化において多少の異質性を持つのなら、これらの条件は、互いに仮想敵国としての強いポテンシャルとなる筈である。

ロシア文化は、西欧文化の端にあるものの、西欧文化の中に包含される。中国文化に染まり国民が満足することなど有りえない筈である。両国が互いに融和的になり、将来長い国境線が消滅する位の最重要同盟国と考える場合においてのみ、日露の経済協力関係はロシアにとって不要だろう。それが有りえない話なら、日露経済協力が両国にとって最重要課題の一つの筈である。

プーチンが一島返還での平和条約締結を考えているとの説が、一定の説得力をもって語られている。つまり、近似的に昨年晩秋にプーチンが言及した、条件なしの平和条約である。時事ドットコムのニュース解説に、エリツィン政権初期の外務次官として対日外交を担当したゲオルギー・クナーゼ氏の言葉が引用されている。「これほど侮辱的な提案は、ソ連のレオニード・ブレジネフ時代ですら日本に行わなかった。」

日露が本当の友好関係を築くには、ロシアが第二次大戦時にソ連が日ソ中立条約を一方的に破棄し、千島と樺太を強奪したことを思い出す必要がある。何故なら、自分の利益が目の前に現れた時に、あのように簡単に条約破棄をする国と新たに条約を締結しても意味がないからである。

安倍総理は前のめりになることは絶対に避けるべきである。米国に対して日本不信感を与えることになり、日米関係の破壊を誘発して日本破壊につながるからである。

補足: 1)「注文の多い料理店」は宮沢賢治の代表的小説の一つである。その小説の中での注文書は、客として入った人の注文を聞くためではなく、客を料理するための前準備を、その客自身にさせるためのものだった。

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