2019年3月3日日曜日

辺野古埋め立て反対の投票結果とそれに対するある憲法学者の考えについての反論

1)中日新聞3月2日の3面、移設断念が憲法の要請と題した記事が掲載されている。関口という記者が、憲法学専攻の小林節慶応大学名誉教授氏に聞き取って記事としたのである。

その本文の書き出し「県民投票で、辺野古移設の反対票は7割を超えた。」からして、事実を曲げている。これが憲法学専攻の学者の意見なのだから、日本の大学は狂っている。それが、日本の病気の重大な症状の一つである。

今回の県民投票とその結果を利用した県知事の行動や、それを報じる新聞などの報道は、多くの誤魔化しを含む。この記事もその一つである。住民投票は、「辺野埋め立てに反対」「賛成」「どちらでもない」の三択で行われた。7割を超えたのは「辺野古埋め立て反対」の票であり、「辺野古移設反対」の票ではない。

言葉の上では些細な違いのようだが、この違いに今回の投票の本質が現れている。

一旦埋め立てを仲井真県知事の時に許可している。まだ工事開始前なら、今回の住民投票を利用して、辺野古埋め立て許可の取り消しを行うことは可能だろう。しかし、既に事業は開始されており、その国家事業の中断を要求する「辺野古移設反対」という選択肢を立てた県民投票はできないのである。

地方自治体が、国家行政を妨害するのは違法であり、従ってそれを要求する類の住民投票は実施できない。県民投票の選択肢は、県知事の権限内の地方行政にふさわしいものにしながら、それを利用して辺野古への基地移設妨害を企てたのが、今回の知事の行動であり、それは法の範囲を超えて国家行政を妨害するテロリズムに似た行為である。その事実を新聞等は全く報道しない。

翁長知事が、仲井真知事の「辺野古埋め立て許可」の決定に瑕疵があるという根拠で一度国に対する埋め立て許可を取り消そうとしたが、裁判で敗訴して取り消すことに失敗している。それでこの件は、結論が出ている。

2)小林節氏が、上記記事にあるとおり喋ったのなら小林氏は憲法学者というより政治プロパガンダをするのが商売のようだ。

小林氏が問題としているのは、憲法95条の規定:「特定の地方に関する特別法を制定する場合、住民投票で過半数の同意をえなければならない」である。小林氏は、「普天間飛行場の辺野古移設は法律によるものではないが」と言いながら、今回の投票と憲法95条は無関係という反論を形式論だとして退ける。

そして、この憲法の規定を無理矢理、「辺野古埋め立て反対」住民投票の結果と結びつけ、政府は「普天間を辺野古に移設すべきでない」とおっしゃる。(補足1)小林氏は、住民投票の選択肢の文言「辺野古埋め立て反対」と、政治的主張の文言「普天間を辺野古に移設すべきでない」の違いなど、素知らぬ顔で無視するのである。

更に、憲法13条の「国民が幸福追求の権利」に照らしても、その考え方が正しいとおっしゃるのだ。憲法95条の地方自治と政府の法令に関する条文と、憲法13条の幸福追求権に関する条文の「精神」に、辺野古への基地移設は反するという驚きの主張である。

小林慶応大名誉教授の、「法は条文を厳密に解釈して適用するのではなく、法の精神に照らして適用すべき」という発言は、法学者として正気の沙汰ではないと思う。「法の拡大解釈は厳に慎むべきである」という人間文化の根幹すら、どこ吹く風である。

勿論、「法の解釈は立法者意思に沿ってすべき」という指針はある。しかし、それも言葉の壁(言葉の意味)を超えてはならない。つまり、「辺野古移設が法律によるものではないが」と言っているのだから、当然憲法95条を適用して、移設は中止すべきという話はトンデモナイ無理筋解釈である。

憲法13条の精神「個人の幸福追求権」だが、その条文の後半に「公共の福祉に反しない限り」を完全に無視している。(補足2)政府は、日本の防衛のために、そして、普天間での重大事故を警戒して、辺野古移設を決定したのである。それは公共の福祉の向上に寄与し、もし沖縄に他の多くの基地がないならば沖縄県民にも反対の理由は無いはずである。

憲法13条の前半だけと、沖縄に過剰に負担をかけるべきではないという一般論でもって、国家の安全保障政策を邪魔しようというのは、憲法学者の解説ではなく、左翼の政治運動そのものである。

沖縄の基地負担が重くなるのは、その地政学的位置の所為であり、沖縄県民に対する差別意識があってのことではない。どうしてもその重い基地負担に我慢がならないという人には、県や国に何か別の対策をとってもらうしか無い。(補足3)それは沖縄に特別の事情であるから、それこそ沖縄県に関係する特別法つくり、特別の経済的援助の措置を国はとるべきである。沖縄県民は、国家への要求をそのように変えればどうか。

補足:

1)辺野古移設反対の根拠として、以前テレビで盛んに流されたのは、サンゴ礁の保護であった。サンゴ礁の保護という考えで埋め立て反対に投じた票の全てを、基地移設反対の票として、彼ら左翼の人たちは利用している。

2)憲法13条:すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

3)沖縄県民のなかで、基地の多く在る島に住みたくないと考える方は、日本国の何処にでも移住は可能である。我々も多くは故郷に住みたいが、仕事などの事情で遠く離れて住んでいる。故郷に住むことと仕事の両方を同時に選択する幸せを、憲法13条をたてに要求するようなことはしない。また、本土から老後は沖縄に移住するという人が増えても良い。

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