2019年10月15日火曜日

ウクライナを舞台にする米国政界の争い(編集あり)

1)ウクライナ疑惑を一般論的見地から見る:

今、米国はウクライナ問題で揺れている。トランプ大統領がウクライナの大統領選に勝利したゼレンスキー(Zelenskyy)に祝いの電話をしたとき、"おめでとう"の言葉だけでなく、ウクライナを舞台にした米国人の不正疑惑(補足1)を調査するように依頼したことが、憲法に違反するというのである。

その不正疑惑の主がバイデン父子で、バイデンは次期大統領選の有力候補とみなされているからである。しかし、その疑惑の対象が大統領候補になり得るので、捜査対象から外すべきだということにはならない筈である。バイデン父子の疑惑が明らかになれば、大統領選挙で有利になるかもしれないが(別に強敵が現れなければ)、不正を働く人が相手の選挙なら、有利になるのは当然ではないのか。

何よりも、不正が疑われる件に関して、事実の解明が第一である。もし、バイデンに不正の自覚がないのなら、そしてトランプがそんな方法で選挙を有利にしようとしたのなら、それは汚い選挙干渉だという批判が起こり、トランプにとっては非常に危険である。

従って、今回のトランプを攻撃する側(民主党支持者の)反応は、バイデン側に不正があったという自覚があるからのようにも思える。 バイデンが、徹底した捜査でも真っ白になる自信があれば、そして実際に真っ白になればなおさら、次期大統領選に大変有利ではないのか?

また、そのトランプを攻撃する一派は、バイデン一家の不正への調査要求をちらつかせて、予定されているウクライナへの軍事費支援を遅らせたのではないかとトランプを攻撃している。しかし、それも明確に脅しの言葉が無く、それが実質的に被害を生じないレベルなら、問題にする程のことではないと思う。

それが問題なら、バイデン当時副大統領がウクライナに対して保証していた10億ドルの貸与を片手に持って、ウクライナ側に検事総長の交代を迫った可能性(トランプやジュリアーニらの指摘;補足2)に対し、バイデンやトランプ非難の側が明確にすべきである。

前回の記事にも書いたが、現状説明できない金を外国から政府要人の周囲がもらったのなら、それに匹敵する国益に反する取引があった筈である。それは物理法則を適用する場合に似ている。物体が運動エネルギーを持ったのなら、それは誰かが動かしたのである。動かした人がわからなくても、誰かが動かしたのは事実である。そのエネルギーに相当するのが、今回の場合ハンターらがもらった説明できない多額のお金である。

つまり、不正捜査の鉄則は、「誰かが不正な利益をあげたか」と「次に誰がその利益を上げたのか」をその順に明確にすることである。明らかにバイデンの息子(ハンター・バイデン)やケリーの義理の息子(デバン・アーチャー)には、十分説明できない利益が、支援対象であったウクライナの企業からもたらされただろう。それは、何処かで米国の国益を害している筈であり、何らかの不正はあったと考えるべきである。

ウクライナも米国の支援という利益があったのなら、自発的には米国高官の周辺の不正は喋らない筈である。つまり、構造として、そしてメカニズムとして、その種の疑惑は明らかになりにくい。ウクライナの前検事総長が直ちにバイデン父子の調査は不要であるといったのは、その国のエゴイズムに起因すると考えても間違いではないだろう。その調査依頼を多少の圧力を感じる形でするのは当然ではないのか?(補足3) ①https://www.bbc.com/news/world-us-canada-49871909 

バイデンが大統領選に出る可能性も、何処かの一国民が大統領選に出る可能性も、ゼロではない。従って、バイデンが大統領選の候補者だからということを根拠にしたトランプ批判は民主主義の原則からみて非合理的である。そして、明確な理由なく大金が動いたことの裏には、物理的にと言って良い位の確実性で必ず不正がある。その疑惑解明よりも、トランプの電話での捜査依頼を憲法違反だといって騒ぐのはおかしい。

これらの背後には、トランプ批判の人々が「トランプは無法者」という色メガネを掛けて、政治を見ていることがあるように思える。この疑惑の元になった電話の内容は、ホワイトハウスから公開されている。NYタイムズは、言葉尻を捉えてトランプのウクライナ疑惑を批判しているが、バイデン父子のウクライナ疑惑を完全に見逃す不思議を消す努力はしていない。 ②https://www.nytimes.com/interactive/2019/09/25/us/politics/trump-ukraine-transcript.html 

2)ウクライナ疑惑の経緯について若干の追加

疑惑の具体的な話に戻ると、反日ほど前に出たFOXニュースでこの件が取り上げられている。それによれば、2014年4月16日にデバン・アーチャーはホワイトハウスでバイデンと私的に会っている。(ホワイトハウスの記録に残っていると書かれている)その二日後、バイデンの息子ハンターがブリズマの役員となり、更に三日後の4月21日にバイデンは、ブリズマに対する支援の約束を持って、ウクライナに向かったという。(John SolomonというFOXニュースの寄稿者) ③https://www.foxnews.com/opinion/steve-hilton-ukraine-scandal-us-cash-gas-bidens-dems

この件、その後ウヤウヤになった理由は、バイデンがウクライナの検事総長Victor Shokin(2015/2/11 – 2016/3/29)を首にしたことであると、政治コメンテーターとして有名なGlenn Beck(Wikipedia参照)は動画で解説している。 ④https://www.youtube.com/watch?v=5nUZekJ3pfM

BBCは、前のウクライナ検事総長Yuriy Lutsenko(ウクライナの前検事総長2016/5/12 - 2019/8/29)はこの件でバイデンを捜査する必要はないといったというが、何の為にこのようなニュースを流したのかわからない。聞くのなら、当時検事総長だったVitaly Yarema( Jun.19/2014 –Feb.11/2015) 、Viktor Shokin (Feb.11/2015 – Mar.29/2016)、Yuriy Sevruk (Mar.29 – May. 12/2016)らに聞くべきだろう。

既に、Viktor Shokinはバイデンにより首になった理由を明確に語っている。当然のことながら、バイデンは息子から疑惑が発覚するのを恐れたと推理している。それと同時に、既に述べたように米国の不正を暴くことはウクライナの得にならないので、政権側の人は米国の利益と一致すると考えなければ真実を語らないだろう。BBCの人には、何処に猫の首に鈴をつけるネズミがいるか聞いてみたい。(文献①)

「ウクライナ政変に絡んで私腹を肥やしたバイデン親子の調査が大事か、ウクライナへの軍事費支援が大事か?」という問題だが、過去の捜査とリアルタイムの安全保障問題の比較であるから、前者を重視する考え方自体は、健全であると私も思う。従って、トランプはそれほど長期に亘って、軍事支援金を出さなかったわけではないだろう。

尚、以上の考察は「chukaのブログ」氏へのコメントとして書いた。その元の記事を以下に引用しておく。 ⑤https://83k2ho1ux7ti.blog.fc2.com/blog-entry-296.html

3)世界は混乱の入り口にあるのか?

米国の政治情勢は、定性的には、韓国の情勢に似ている。韓国では、クーデターの前夜的な雰囲気のようだが、米国もトップの地位の危うさという点では同様に見える。ただ、米国の場合は副大統領が後任として控えているので、トランプ以前の情況にまで完全に戻ることはないだろう。しかし、それはたいしたことではないのだろうか?

日本のトランプを見る有力な一モデルは、グローバリズムを推し進めてきた米国の影の勢力と戦っている大統領である。そして、もしトランプが失脚すれば、西欧近代国家の主権国家体制が崩壊に向かうという人類史の3年ほど前の情況に戻るのだろう。その時から10年ほどすれば、力をもって世界を支配するのは、経済的力をつけた中世的独裁国、つまり中国かロシアになるだろう。それは日本にとって悲劇的になる可能性が大である。

トランプ政権が米国民に対して明らかにしたのは、米国が国家という価値を認めない一派により影から支配されてきたことである。グローバリストと呼ばれる人たちは、国境の破壊を意図し、難民のような移民を世界中にばら撒いてきた。その姿勢は、かれらは国民国家を理解し、それを維持するという責任感を持たない人たちだからだろう。土着のナショナリズムを持たない人達が、巨大な経済的力と政治的力を隠し持った国が、米国であった。

トランプは、以前から一部で用いられているディープ・ステートという言葉を彼らに対して用いている。その中でより明確な姿を出したのが、ホンジュラスなどから米国に向かう難民を支援した団体である。未だにメキシコと米国の国境付近の町に住んで、彼らは悲惨な毎日を送っている。

この大量移民は、トランプを窮地に陥れようとする企みであることは、明らかなに見えるのだが、それは捏造だと言われればそれまでである。その米国への移民希望の家族が「ニカラグアで暴力的に追い払われた。我々には帰るところは無い」と話す家族をテレビは映していた。大量難民発生のどの段階から米国の勢力が絡んでいるのかわからない。その図式は、北アフリカからヨーロッパへ向かう難民と相似的である。

トランプが、その支配を打ち破ろうとしていると言う説を精力的に主張しているのが、元ウクライナ大使の馬渕睦夫氏である。植民地と奴隷制の中世から、近代国家を経て、世界の先頭に発展した米国は、自由、民主主義、法の支配を外に向かって主張する世界の手本に見えた。その建前論は、世界の国々にとって目標であったが、その本質は上記の一派が支配する現実主義的国家であった。多くの国々にとっては、米国の現実主義のマネはできない。

つまり、自由、民主主義、法の支配の近代国家モデルの輸出は、それに相応しい文化を持たない国々に混乱を招く結果になるだろう。ウクライナのオレンジ革命を初め、カラー革命と呼ばれる多くの政変で、米国は中心的な役割を果たしたと言われている。このウクライナの政変でも、そのような不正が生じたのだろう。それを振り返る事なしに、トランプを批判するのは疑問に思う。

(17日早朝 セクション1の語句編集)

補足:

1)この件、10月7日のブログにも書いたが、ここでも少し書く。2014年2月にウクライナのヤヌコビッチ大統領が亡命した直後の2014年4月に、当時の米国副大統領バイデンがウクライナを訪問した。それと同時期に、バイデンの息子のハンターと当時米国国務長官ケリーの(義理の)息子のデバン・アーチャー(Devon Archer)は、疑惑の中心であるガス会社のブリズマの役員になる。 https://rcbyspinmanipulation.blogspot.com/2019/10/blog-post_7.html

デバン・アーチャーとハンター・バイデンはビジネスパートナーで、一緒にローズモント・セネカという会社を経営している。それから一年あまりの間に、彼らの周囲に千億円以上の金が流れた。 同様の疑惑が中国を舞台に存在するが、ハンターは「もし父親が大統領なら中国企業の取締役を退任し、外国での仕事はやらないと言った」と報じられている。つまり、中国と民主党はズブズブの関係であることは、この事実からも明らかである。

2)バイデン当時副大統領が、息子ハンターと、そのハンター・バイデン氏がどういう訳か突然に取締役になり多額の報酬を貰う事になったウクライナのガス会社のブリズマを刑事訴追から守るためということになる。

3)不正にならない圧力の範囲を想定する事は、「法の支配下の検察や司法」にも必要だろう。推定無実を相手にいかなる圧力も掛けるべきではないと100.00%主張するのは、現実主義的ではない。死刑を廃止し、且つ、犯罪の取り調べに圧力があってはならないという理想主義の主張は、現在の検察及び司法を機能不全にするだろう。現行犯を疑われた時点で、警察が射殺する欧米の姿勢は、その理想主義が招いた不正な警察の姿ではないのか。

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