2019年11月12日火曜日

安倍総理は何故親中策に舵を切ったのか

1)日本の政治評論家は、米中覇権戦争は決着がつくまで続き、中途半端な終息はないだろうと声を揃えている。もしそうなら、安倍総理が中国との関係を深めようとする姿勢がわかりにくい。モスクワ在住の北野幸伯氏が、何度も日本に向かって警鐘を鳴らしているように、日本は二度目の大敗戦の前夜なのかもしれない。https://www.mag2.com/p/news/423231

一度目の大敗戦に至るプロセスは、米国の巧みな戦争への誘導だった。それはGHQのトップだったマッカーサーの議会証言や、Fルーズベルトの前任大統領だったフーバーが歴史を再評価して書いている通りである。(補足1)

大恐慌から抜け出られない自国の“出口のない状況からの脱却”を解決する方法として、米国は戦争への参加という方法を選んだ。ドイツに宣戦布告をする口実がないので、日本を標的にした。(補足2)そして、軍縮条約締結から経済封鎖策を経て、戦争に誘導した。日本の敗北は、二発の原爆によらずとも戦争前から明らかだった。(補足3)

戦後その日本を、占領から完全な従属国にして、二度と立ち上がれない状態に整形した。日本を非武装中立という脆弱体質の国家に仕上げ、そこからの脱却を企むようなまともな政治家を全て潰し、官僚という政治家の適正が皆無な人種が政治を担う国家に仕立て上げた。(補足4−1)

講和条約を米国の忠犬となった元内務官僚の吉田茂政権の時に締結し、その後の完全独立を防止した。その後、東アジアの覇権支配の基地として、日本を不沈空母(やはり米国の忠犬的な元内務官僚、中曽根康弘元総理の言葉)にして、ドル基軸体制を、不換紙幣を用いながら続けた。(補足4−2)

今回、異星人的な人物が大統領になったのを機会に、日本を独裁国の中国の犠牲になるよう仕向けて、東アジアから撤退しようとしている。その方法として、あの戦争の時と同様に、全て日本の責任でシナリオが進むようにしたいのである。その罠に、安倍総理が引っかかった可能性がたかい。

2)安倍政権は、来春中国の習近平主席を、国賓として日本に招く予定をしている。それは、トランプ政権の対中国外交に盾突く外交である。それを国会でもどこでもほとんど議論しないのが、レベルの極めて低い日本の国会議員や主流派の政治評論家である。地上波のテレビも新聞も何も言わない。

この問題に関連して、10月25日のトランプ政権のペンス副大統領による演説が行われ、昨年に続いて中国を批判した。しかし、若干融和的姿勢が見えていると中国専門の遠藤誉氏が指摘しているが、それはその通りだろう。https://news.yahoo.co.jp/byline/endohomare/20191028-00148588/

その後、10月30日には副大統領演説を補強するかのように、ポンペオ国務長官がハドソン研究所において何とか賞の受賞講演として、中国共産党政権は米国やその他の民主主義諸国の価値観を否定しているとして激しく非難し、全世界の民主主義諸国が団結して中国と対決することを求める演説をした。https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/58150

ただ、副大統領や国務長官が中国非難をしても、肝心のトランプ大統領はこれまでの習近平とは信頼関係が出来ているという態度に、変更を加える発言をしない。トランプのこれまでの外交は、米国の利己主義を100%他国に押し付ける極めて身勝手な姿勢を、見せたり隠したりしてきた。つまり、トランプにとっては、日本などどうなっても構わないかの様である。

ヨーロッパ諸国は、中国は第二ではあっても第一の仮想敵国ではないので、そして、米国とのNATOも(フランス大統領は批判したが)、トランプ退任後はまともになるだろうから気楽である。しかし、非武装中立の日本は、米中対立の中でどちらにも付かないで独自路線を取るのは、両側に絶壁を持つ稜線渡りと同様に困難である。そこで、トランプを信じられない安倍政権は、中国との関係を改善する方向に少し向かったのだろう。

次回の大統領選挙でトランプが敗北することが確実なら、おそらく日本側はポンペオ長官の言う通りに、中国を敬遠する方向に舵を切るだろう。しかし、習近平はいい奴だとか、金正恩と仲がいいとか言って同盟国を馬鹿にするトランプ大統領の再選の公算は大きい。そのような大統領を産むほど、米国も病んでいる。(補足5)

安倍総理とその取り巻きは、この複雑怪奇なあるいは“マッドマン”(補足6)を大統領に持つアメリカの情況を十分読むことが出来ないのだろう。丁度、80年前に平沼麒一郎首相が、独ソ不可侵条約の締結を知って、「複雑怪奇」と声明を残して総辞職したことを思い出す。その後、一年ごとに首相が代わるという混乱の後、東條英樹が首相になり戦争がはじまった。

この歴史に学ぶべきだが、もう遅いようである。それを示す出来事がすでに起こっている。天皇の即位礼にペンス副大統領は参加を取りやめて、全く日本では名前が知られていない一長官が代わりに参加した。おそらく、中国の王岐山と顔を合わせるのを嫌ったのだろうが、その辺の経緯は日本では全く議論されない。

3)日本が反中国の姿勢を取った時、中国はより一層国際環境の中での孤立感を深める。そこで米国は中国との関係修復に動くだろうと安倍総理は疑っている可能性がある。それは、自身の損害を最小限にし、中国に最大の譲歩をさせる米国トランプ一流の利己的外交である。

その後、日本が中国からイジメを受けるのは、日中の二国間問題であり、アメリカは無関係であるという姿勢をトランプなら採るだろう。

トランプ退任後の可能性が高いが、何れ米軍は東アジアから撤退するのは、伊藤貫氏の指摘の通りだろう。そこで、米国の負担を最小にして、日米の関係を切りたい。上記シナリオは従って一石二鳥である。そのような酷い事でも、トランプならやりかねない。

何も報道せず、何も議論しない日本である。日本国民は未だ寝ぼけている。安倍さんがもし天才的政治家であっても、そして、伊藤貫さんが主張するように憲法改正から核武装実現を狙ったとしても、日本国内の猛反対と、米国、ロシア、中国などからの非難大合唱にあうのは必然である。(補足7)

日本では、その極めて危険な賭けをしている安倍政権を、まともに見ないでおこうと言う政治屋とその使い走りが多い。彼らは、その代わりに断然簡単な韓国批判で国民の目をそらせている。

もう一つ、日本の政治屋とその取り巻きが期待しているのは、中国の経済崩壊である。しかし、中国は崩壊する時には、元は紙くずになるが、ドルによる外国債務は残さないだろう。経済に詳しい李克強は、そんなヘマはやらない。(補足8)

習近平政権が潰れれば、中国は世界のほとんどの国同様にパニックになるが、それでもその後は共産党独裁の経済大国として短期に復活するだろう。再びチャイナ7が政権を支える体制に戻るだけだろう。

日本の若者や小さい子供を抱えた夫婦は、ジム・ロジャーズの言う通り、出来るなら日本脱出を考えるべき時である。

補足:

1)マッカーサーはGHQ総司令官を退任後、議会で証言している。また、ハーバート・フーバー著「裏切られた自由」か、その解説本に書かれている。私は解説本しか読んでいないが、元の本を引用しても許されるだろう。

2)桂ハリマン協定を破棄した日本に対して、米国は腹立たしい気持ちに満ちていた。そこで、日本を戦争の標的にするのは、当然だとも言える。

3)オバマ大統領が、広島訪問の数日前に核兵器予算を大きく増やしたことを、伊藤貫氏は指摘している。核廃絶に互い努力しようと広島で呼びかけた数日前の事である。その冷酷無比とも言える国際政治の現状を考えるべきである。

4)1.孫崎享著「アメリカに潰された政治家たち」に書かれている。2.不換紙幣によるドル基軸通貨体制は、オイル取引に米ドルのみを用いる制度を作ることと、世界のユニポーラ-覇権で維持された。 5)これについては、2、3日中に伊藤貫さんの講演を引用して、書く予定である。

6)トランプ外交を“Madman Theory”を採用していると言われるので、トランプの形容にそれをそのまま用いただけである。 https://en.wikipedia.org/wiki/Madman_theory

7)日本の現状は、国民の大半は「火事だ」と叩いても、今「寝ている最中だ」と怒り出すほどの、白痴的平和ボケである。日本の政治家のうち立憲民主党などを含め、半数近くは、中国や朝鮮半島出身かと思われるほどの、非武装中立論者である。多分、かれらは日本が崩壊するときに、隣国に逃げるつもりをしているのだろう。

8)中国のトップ周辺には本当の秀才が多い。李国境は経済指数を作るほどの経済通であり、王岐山はハエやトラを叩くだけでなく、非常に優秀な政治家だと言われている。日本の政治家とは、それこそ雲泥の差である。

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