2020年1月23日木曜日

有識者会議を利用する政府の反民主的立法

今日の記事も及川幸久氏のブログ記事の紹介である。有識者会議という反民主主義的手法を用いて、官僚独裁の政治を行う現政府を批判した内容である。

 

 

https://www.youtube.com/watch?v=9-6H9ujDFzQ

 

政府が検討しているインターネット課税は、言論の自由という民主政治の基本に抵触するので、恐らく国会に出せないだろう。ただ、そのようなとんでもない法案でも、日本なら成立する可能性がある。この件は、議論が本格的になったとき、再度考えることにして、今回は有識者会議そのものについて少し書きたい。

 

政府は、有識者会議の権威を否定し以下のように言うだろう:

有識者会議は、法案提出の前に一度意見を国民から聞く組織として利用している。その上で、国会議員から再度意見を聞き、法案を修正の後決議する。つまり現行の方法は、二重に国民の意見を聞くことになり、より民主政治の精神に近い。

 

言い訳はいかようにも可能である。有識者会議で権威付けされて国会に提出された法案は、まともな議論を経ずに可決される。日本社会は、大学でも会社でも何でも、入口だけに関門のある不可思議な社会である。政府が意見を聞くための代表として、国民が国会議員を選出していることなど、実質的には無視しているのである。

 

以前、女系天皇を容認する皇室典範の改正法案を国会に出そうとした小泉内閣が、その法案の権威付けに有識者会議を用いた時、それを批判した。その記事はこのブログサイトの何処かにあるだろう。その有識者会議の出した結論は、内閣総理大臣決済と表示され、堂々と首相官邸のページに掲載されている。https://www.kantei.go.jp/jp/singi/kousitu/houkoku/houkoku.html

 

この有識者会議の座長の吉川弘之氏は、工学部出身の人で当時産業科学研究所理事長であった。産総研は、日本最大の理系研究機関であり、独立行政法人として経産省官僚の天下り機関となった、元工業技術院という役所であった。当時の実態は筆者がよく知っている。

 

この吉川氏は、皇室と日本文化などに全くの無知な人だった。(補足1)その方が政府の脚本通りに、”ロボットのように”動いてくれるから好都合だったのだろう。米国や西欧諸国では、think tank が議論した行政方針をそのまま、行政機関トップのHPに掲載したりしないだろう。

 

有識者会議を利用して行う“行政府による立法” (補足2)と行政は、及川氏の指摘する通り、官僚独裁政治の一環である。官僚たちは全てを丸投げしてくれる内閣を利用して、政府を大きくして、自分たちの天下り先を拡大することに精をだしているのだ。

 

日本では、議員が法案を提出し国会での議論を経て法律を作ることを、まるで特殊であるかのように「議員立法」と呼ぶ。一般国民やマスコミは、別ルートの行政府から提案された法案を基に立法する形式を、殊更「内閣立法」などと呼ばない。国民は、そのように洗脳されている。

 

その一方、法案の中身を議論検討する筈の国会では、野党が、森友問題、加計問題、桜を見る会などを取り上げて、予定されたボケ役をしている。大事なことは全て、官僚が考えてくれた案を立法化して、政府がやってくれると思っているのだろう。彼ら与野党議員たちは、日本に巣食う政治家貴族である。与野党に分かれて劇を演じているだけである。その影で、内閣が作った重要法案は殆ど議論されずに、可決成立している。(補足3)

 

民主政治の基本が出来ていない日本には、米国のような共和制が必要だろう。効率の悪い政治になるだろうが、政治家だけでなく国民も、議論して何かを決めるという苦労を強いられることで、政治の質が改善されるように思う。

 

 

補足:

 

1)吉川弘之と論文で検索すれば分かる。ロボット工学が専門であったようだが、日本文化や天皇制に関する論文は一つもない。https://ci.nii.ac.jp/nrid/1000020010689

 

2)議員立法とことなり、政府提出の法案が国会で可決成立する確率は90%程度である。行政府は、実質的に立法府も兼ねている。国会は、三権分立制度という建前上の飾りに似ている。

 

3)例えば、国政上非常に重要な新入管法やアイヌ新法などは、ほとんど議論されずに、政府提案通りに可決成立している。

https://rcbyspinmanipulation.blogspot.com/2019/02/blog-post_7.html

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