2020年4月10日金曜日

国と国家のあり方について考える:(1)国の動物モデル

国家という言葉は、通常国の管理運営組織を意味する。現在の多くの国では、行政、立法、司法という3つの機能を持つ組織で構成される。軍隊は、通常行政の1組織であるが、複数の軍隊を持つ国もあるだろう。トップは国家元首であり、共和国では普通大統領がその役割を担う。

 

国のハードな面としては、国家(組織)と国民、及びその領土領海領空等から構成される。国の伝統や文化は、国のソフトウエアであると考えれば、上記国のハードな部分に加えて、国の構成に数えるべきだろう。

 

国民の生命と生活の安全は、殆どの場合、所属する国の浮沈と伴にある。従って、国(例えば日本国)は、国民を構成員とする共同体である。(補足1)

 

日本国は民主制を採用しており、その国家組織の目的は、国民に生命と財産の保全及び自由な活動の場を、制限付きの権利として保障することである。国家とは、それらを目的とする機能体組織である。(補足2)一方、国民の義務は、国家にその目的遂行に必要なものを供出することである。

 

国を考える際、動物一体の構造と機能がモデルと成り得る。そのモデルにおいて、国民は動物の各種細胞に対応する。国民の一部をメンバーとする多くの会社・法人などは、動物では器官や臓器に相当する。(補足3)

 

動物の器官は、国などの公的機関及び法人に相当する。そこで、細胞が集団となって機能体組織をなしていると考えられる。そこでの細胞は、それぞれ専門的な機能をほぼ完璧に果たす。

 

それら諸器官を含め、動物の全ての細胞は、生死を共にする共同体の構成員とも言える。国のあり方を考える際、動物とその細胞のあり方と比較することで、有用なヒントが得られる。ただし、国における国民が、諸機関の構成員であるのは、1/3の時間のみである。この「国の動物モデル」で、大事なことは、この1/3の時間と残りの2/3の時間の峻別である。

 

動物の命は、他の動物との戦いに負けたり、獲物が得られず生命維持出来なかったりすることで短くなる。その原因は、その動物が外的との関係を正しく把握しなかったこと、そしてその対策を取らなかったことである。それらは、全て動物の脳と四肢の能力が劣っていたということによる。

 

つまり、国家における立法及び行政組織などは、動物の脳に相当し、軍事的能力や産業的能力は、動物の四肢や内蔵に対応する。つまり、国の栄枯盛衰は機能体組織として国家が機能するかどうか、産業界が能力と競争力を維持出来るかどうかに依存する。(補足4)

 

動物においても、生命活動における最良の結果は、国における国家の部分(脳と四肢)と産業活動に関する部分(内蔵)が優秀な場合に得られる。動物細胞は機能体組織の構成員として理想的に働き、情報交換も言葉ではないが、ホルモンと神経により緻密におこなっている。(補足5)

 

このモデルを頭において、国家と国民の基本的関係について考えると、話がわかりやすくなるだろう。今回はここで一応話を終わる。

 

 

補足:

 

1)ここで、共同体と機能体に分類する社会組織論があるが、それはある存在全体の一部(部品あるいは部品的組織)の性質を言っているのである。その全体が統一性を持って存在し続けるためには、それらすべての組織は大きな共同体の構成員として含まれなければならない。例えば、日本の企業、国家、自治体などは、機能体組織や共同体組織に分類される。しかし、それらがもっと大きな枠組みである日本国の共同体の構成員でなければならない。この考え方を取らない人たちがいる。それはグローバリストたちである。それは、国家と破壊し、機能体組織である企業体の増殖に価値を置く考え方である。今回のモデルでは、悪性腫瘍に見える。

 

 

2)国家は機能体組織であるから、国の上記目的を効率良く実現する様に組み上げられるべきである。機能体組織という言葉は、ゲゼルシャフトという用語を意識して使った。

 

3)民主国では、個人の基本的人権を国家の最高価値と見做すので、会社や法人はあくまで国の準構成員或いはバーチャル(仮想的)な構成員である。米国のように、本来バーチャルである筈の法人が政治資金の多くを拠出し、政治をコントロールするのは民主国の考え方に整合的ではない。ただ、個人の政治姿勢が十分成熟しない(し得ない)状況では、民主国は絵に描いた餅なのかもしれない。西部邁さんは、オルテガなどの本を引用して、その指摘をしておられた。そうすると、米国型の関節的に賢者の意見に重みをもたせるタイプの修正民主政治が最良かもしれない。(この「修正」は、本当は「modified」にすべきである。私は、この修正とか改正とかの正の漢字に何時も引っかかる。)

 

4)国民が、国家の中の機関や法人として働く1/3の時間に自分の脳を使うが、それは残りの2/3の時間の脳の使い方とは異なるだろう。後者の脳の使い方は、自由度が高く、機能体組織の中で働く能力を磨いたり、国の文化の向上の栄養素となったりするだろう。

 

5)例をあげる。体液量が多く心臓の負担が増加したとき、心房細胞はANP(atrial natriuretic peptide)というホルモンを分泌する。それが腎臓の傍糸球体細胞に作用して、レニンの分泌を抑制し、腎臓でのナトリウムの再吸収を減少させ、体液量を減少させる。心臓の細胞は、仕事が増加して苦しくなったとき、この体液量調節システム(レニンーアンジオテンシンーアルドステンロン系)に働いて、負担を軽減してもらうのである。

 

0 件のコメント:

コメントを投稿