2020年4月25日土曜日

新型コロナ肺炎: NY州での抗体検査結果と集団免疫戦略の合理性

1)NY州での抗体検査の結果とその解釈:

 

昨日朝のヤフーニュースの記事では、NY州で3000人を対象に行われた抗体テストの結果、州の住民13.9%にCOVID-19 の抗体が確認されたという。それを州の人口1945万人を掛けると、累積感染者数として270万人が推定される。

 

米国の記事には、クオモ知事の言葉「この数字と死亡者集計値から算出した推定死亡率は0.5%となる。これは、一部の専門家が懸念していたよりも低い水準」が掲載されている。疑問が専門家から出されているので、検査の詳細を再検討することが必要であるが、以下検査は正しく行われたとの前提で議論する。(補足1)

 

上記0.5%という推定が成立するためには、抗体検査の日(4月20、21日)に陽性となった人と同時期に感染した人のほとんど全てが、既に死亡か回復のどちらかに割り振られていなければならない。この判断に必要な「感染後どのくらいの期間で抗体が出来るか?」という情報を探していたら、国立感染症研究所の報告を見つけた。そこに、RT-PCR法(補足2)で発症が確認された人の血清を用いて、抗体検査を行った結果が示されていた。

 

それによると、IgG抗体産生の率は、発症後1−6日で7.1%、7-8 日で25.0%、 9-12日で 52.4%、 13日以降で96.9%だった。IgM抗体は、発症後1−6日で陽性率0%、12日まででは高々10%の検出率であり、COVID-19の感染検査には、IgGのみが有用であると書かれている。

https://www.niid.go.jp/niid/ja/diseases/ka/corona-virus/2019-ncov/9520-covid19-16.html

 

つまり、検査を受けたがIgG抗体生成のための感染(及び症状の発現)が大体4月10より前であり、大体4月15日の累積死者数が13500人以下なら、クオモ知事の計算はほぼ正しいこととなる。つまり、米国ニューヨーク州では、新型コロナ肺炎の致死率は、インフルエンザの5倍程度ということになる。

 

もちろん重要なのは、1675万人は未だ未感染であるということである。致死率が0.5%程度だと喜ぶのは如何なものかと思うが、最大限の人的被害が見えた点は、大きな安心材料である(繰り返す:検査キットが完璧だということが前提)。インフルエンザの5倍程度の致死率なら、今後は日本風に、集団免疫をつける方向に舵を切るだろうか?

 

2)NY州における抗体検査結果の解釈;

 

現在までこの病気(COVID-19)を見てきた専門家の考えでは、感染後5日程で何らかの症状が出て、更に一週間後位の間に感染者の80%は回復する。そして残りの20%位の人に肺炎症状が現れて、入院するようである。

 

これらの情報は、Medcramという医師のYoutube動画サイトによる。ただ、下に引用のこの動画では、80%が回復するとき、生得免疫でウイルスと対決するとある。その際、或いは、その記憶により、獲得免疫を得ると考えなければ、上記NY州の結果は説明不能である。(下記動画では、8;20あたりで、生得免疫で対決すると解説されている;補足3)https://www.youtube.com/watch?v=H1LHgyfPPQ8&t=617s

 

もし、感染者の多くが無症状であるか入院を要しないレベルであり、それらの多くが、獲得免疫を得るがPCR検査は受けていないのなら、NY州の結果は十分ありえる話である。この米国のような情況の場合、PCR検査は単に”後追い”をしていただけで、ほとんど患者の救済に役立っていないことになるだろう。

 

今朝の番組「ウエイクアッププラス」で驚くべき結果と言っていたが、それほど驚くべきことではないだろう。日本でも、PCR検査数を抑えているので、抗体検査をすれば、現在把握している感染者数の10〜100倍以上の感染者数がでるだろう。

 

3)集団免疫を付ける対策を実施する国々:民主的に実行するスウェーデンと、国民を騙して実行する日本

 

NY州知事が算出したこの低い致死率を見て、COVID-19対策として集団免疫を付ける方法を採用する国が増加するだろう。元々十分に近代的な手法で対策をとることが出来なかった国々は、安心しただろう。

 

感染者の80%が、ウイルスを撃退し、20%の入院でそのうち10%が重症で、5%程度が死亡するとしても、感染者の最大95%に免疫がつく。しかも、この病気は糖尿病など基礎疾患が無い場合、死者のほとんどは70以上の老人である。経済や財政を考えれば、これほど無能な政権にとって有利な疫病はない。日本が行った統計は下図に示されている。

先進国で集団免疫戦略をとったのは、スウェーデンである。つまり、老人を隔離して、仕事をしている若者や壮年の間で広がれば、自然に70%位の人に免疫がつく。その時点で、再生産係数が1以下になり、この病気の流行は終わる。(補足4)

 

ここで重要な点を指摘したい。都市のロックダウンなどで免疫獲得率が僅かの情況で、感染を終焉させた場合、感染第二波が起こる可能性が高くなる。しかし、スウェーデン方式で感染が完全に終われば、そこでの再生産係数が1以下になったと解釈される。そのような情況では、第二波は起こらないか非常に小さいものになる。

 

この際、注意が必要なのは再生産係数は、季節に依存すると想像されることである。オーストラリアなどは、COVID-19肺炎の流行は、ほぼ終結している。しかし、これから冬になり、ウイルス感染が起こりやすくなれば、再生産係数は大きくなり、第二波が襲う可能性が高い。

 

現在スウェーデンの人口100万人あたりの死者数は213人である。その数値は、フランス、英国、ベルギー、オランダなどの国よりも低い。ほぼ完璧な対策をしていると考えられるスイスの184人に近い。スウェーデンでの死者は、40代や50代もかなりあるだろう。スウェーデンは、①特効薬など1年以内には出来ない。②経済の停滞による悲惨な情況を避ける、以上二つの目的を考えての政策だろう。

 

スウェーデン政府は、この集団免疫の方針を周知し、それを国民は支持しているようである。国家と国民の間に信頼感があるから、そのような方法が可能となるのだろう。https://www.jiji.com/jc/article?k=2020042300702&g=int

 

日本では、国家と国民の間に信頼感がないので、国家は国民を騙す方法で、スウェーデンと同様に集団免疫をつける方法を採用しているようである。与党の若手有力議員の松田学氏が、youtube動画で知人の東大医学部卒の著名医師の代弁という形で語っている。

 

「言葉の定義にもよると思いますが、放っておけと言いたいです。今の外出自粛は逆効果だと(思う)。」https://www.youtube.com/watch?v=TDnyYYtTd4Q この動画に対する反論は、以下に書いた。上記セリフは下記ブロクの補足2に書いたので、上記Youtube動画のどこかで、松田議員が語っている筈である。

https://rcbyspinmanipulation.blogspot.com/2020/04/blog-post_15.html

 

しかし、安倍内閣は、近代国家としての国際的体裁を損なわないようにしながら、結果として「放っておく」政策を取った。その方法は、PCR検査を受けることを狭き門にすることである。そしてその正当性を、専門家会議を用いて理論化したのが、「クラスターを潰す」という手法の採用である。 (補足5)

 

精一杯やっているように見せながら、国民を騙す巧妙な方法である。しかし、国際的には、韓国の文在寅政権に比較して、非常に低く評価されている。

 

クラスターを潰す方法にPCR検査を用いれば、一人の患者の周囲の多くの元気な人が検査対象になり、陽性率はひくくなる。同時に総PCR検査数を非常に低く絞れば、実質的に野放し状態である。医療崩壊が起こらないが、自宅での死亡が増加する。この場合、老人の死者はスウェーデンより多い筈である。

 

しかし、もし症状がCOVID-19だと医者が考える人をPCR検査の中心にすれば、60歳以上の患者が多くなり、ICUをすぐ満杯にして、政治の貧困がマスコミ報道などで強調されることになる。(補足6)そして、政府は国民に攻撃される可能性が高くなる。それに、オリンピックが開催できないなど、アベノミクスで漸く見つけ出した観光業による経済復興(それは中国依存の極めて愚かな経済政策である)に響く。

 

実際、PCR検査を受けた人数と感染者数は、3月31日までで(30088人、1887人)、4月1日から4月10日までで(27037、3359)、4月11日から4月20日までで(37701、5362)である。感染率を%で表すと、6.3、12.4、14.2%と増加している。これは狭き門を通って、症状を抱えてPCR検査を受けた人数が増加したからである。https://toyokeizai.net/sp/visual/tko/covid19/

 

また、4月中旬でも日本全国で行われたPCR検査の1日当たりの人数は3770名である。この異常な低い値の唯一合理的な説明は、「出来るだけ死者を老人に集中させ、集団免疫の獲得を目指す」という究極の経済及び財政優先策である。

 

それでも安倍内閣を支持するのは40%程度も居るのが、日本国である。日本国民のほとんどは、知性を去勢された家畜の群れである。

 

この生命の選択を経済優先で行う日本政府の姿勢は、既に17日の記事に書いた。そして、その仕事を全国の保健所(PCR検査実施者を選択する機関)にさせるのである。多くの仕事を都道府県知事などに任せることで、日本政府が責任回避を行っているのである。

https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12590209168.html

 

4)追補:

 

下図は、日本、ドイツ、韓国の把握した感染者数である。X軸の左端は3月1日である。日本は2月中旬までは世界第二の感染国であった。韓国のような大きな集団感染は無かったものの、十分なPCRテストを行っていれば、韓国と同様の感染者数のグラフが描かれていたのではないだろうか。

 

 

3月20日の感染者数は、韓国8565名、ドイツ15320名、日本924名である。日本の異常な感染者数の低さは、ほとんど感染者が隠されていることを示している。つまり、上図で一番上の茶色のカーブが、十分にPCR検査をしていた場合の感染者数の予想曲線である。そこで赤い両矢印で示された部分による死者は、老衰、細菌性肺炎、風邪、血管梗塞などで死亡したことになっているだろう。

 

今回の説明以外に既に集団免疫が出来ていたという考え方があるが、それは中国から韓国や日本に長期にわたりウイルスが流れて来ていたのか、類似の風邪が既に東アジアで流行したことがあったのかもしれない。一昨日の記事は、想像をたくましくして非常に恐ろしい事態を想像したものである。

https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12591256497.html

 

仮に数千人死んでいたとしても、1日あたり100人位なら、数%程度の死者数増加である。老人を中心にしたある程度の死者には目をつぶり、早期に集団免疫を達成する方が経済的に有利だと、安倍内閣は考えたのかもしれない。もしそれが事実なら、恐らくその背後には、この病気の被害を私よりも遥かに小さく、単なるインフルエンザ程度だと考える人達が居るのだろう。それは:https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12589838716.html

 

 

補足:

 

1)ここで、抗体検査キットで本当にSARS-CoV-2の抗体を選択的に検出しているのか、類似のコロナウイルスの抗体に反応していないかという懸念があるだろう。以下は、選択性は完全であったという前提で議論する。このヤフーの記事の詳細は、例えば以下の記事を参照。

https://www.marketwatch.com/story/early-antibody-tests-find-21-of-new-yorkers-have-had-covid-19-2020-04-23

 

2)RT-PCRには紛らわしい二つの意味がある。一つは、Real Time-Polymerase Chain Reactionと、Reverse Transcription-PCRである。ウイルスの検出に用いられるのは、後者である。前者は遺伝子の定量分析に用いられるようだ。

 

3)8分前から始まる説明の概略;「感染5日後、症状が出て救急室に行って症状を訴えても、入院の基準に達していなので、帰って様子を見るように言われる。その後、20%でウイルスは患者の免疫機能を抑えて深く侵入し、肺炎症状を起こして入院となる。」 図のinnate immunityとは生まれつき持つ免疫で、初期免疫と呼ばれる。この初期免疫では抗体を用いないのだが、生得免疫でウイルスを撃退しても、その検出は行われ、その後IgGが生成されるのではないだろうか。この辺りのことは専門家の意見を聞きたい。https://kibou-mori.jp/immunocell-kind/

 

4)再生産係数とか言う。一人の患者がr人に感染させるとした場合のrがそれである。その一人から始まる全患者数は、初等数学の級数、1+r+r^2+r^3+。。。になる。これはrが1より小さい場合、有限な値になる。つまり、感染は終了する。

 

5)致死率が高く感染速度(感染力)がクラスターを潰せる程度に遅いのなら、そして、感染クラスターの在処が分かっているのなら、①クラスターを中心に検査する方法をとるべきである。しかし、感染速度が未知の疫病の場合は、①以外に、半分を②医師の判断で検査を実施すべきだと私は考える。②の感染率が①の感染率を超えたときには、PCR資源が限られている場合、②の方法に多く割り当てるべきである。今回の場合、長期にわたり中国からの入国と国内通行を自由にしていたのだから、ほとんどのクラスターの在処は、最初から把握出来ていなかったのではないだろうか。

 

6)症状が殆どない陽性者は、咳もクシャミもしないので、感染拡大にあまり寄与しないと考えられる。PCRは感染者の割り出しと治療のために使うべき。政治が行う対策としては、感染症病棟のベッド数の増加、ICUの増加、老人たちの隔離、を中心にすべきだと思う。若い元気な人を感染から遠ざけるのは、ワクチンなどが早期に出来ないとすれば、集団免疫の見地からはマイナスだろう。

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