2020年5月30日土曜日

中国の国家安全法と香港問題:日本の採るべき姿勢について

1)香港問題と米国トランプ政権の対応

 

香港の自由確保のデモ等を禁止する国家安全法が、中国全人代最終日の28日に可決された。この結果、香港のアジアにおける国際金融の中心としての地位の喪失、中国の元安から高いインフレが高確率で起こると予想されている。(及川幸久氏;https://www.youtube.com/watch?v=MjDsnY8CvHM&t=0s

 

現在、中国は外貨の大部分を香港市場で手に入れているという。その香港を他の一般都市と同様にしてしまうのは、中国にとって大きな損害だろう。今後香港が住みにくくなると感じる富裕層は、台湾などへの移民を既にしているか、その準備をしているようだ。

 

中国政府は、6月4日の天安門事件の記念日に例年開催される、香港でのデモを警戒しているだろう。それが大騒動になれば、ウイグルやチベットへ飛び火するなど、全国規模の騒乱となる可能性もある。現在の中国では、それを期待する勢力、つまり反習近平派が姿を表しているのだろう。つまり、習近平は、中国全体の経済よりも、自分の政権安定の方を優先している。https://www.excite.co.jp/news/article/EpochTimes_55368

 

この法案は、香港返還の際に英国と共同宣言の形で出した、50年間一国二制度を採用し、香港に高度の自由を保障するという約束に反する。そして、香港が国際金融のアジアでの中心地であり続けたということは、それは実質的に国際的な約束となっていたとみなされる。(補足1)

 

米国は、その中国が維持保障してきた香港の自由を、今後も約束することを期待して(圧力をかけるため)、2019年香港人権・民主主義法を制定している。北京政府は内政干渉だと批難しているが、米国国内での方針であり”狭い意味”では内政干渉にあたらない。

 

この法律は、例えば「香港の情勢を取材しているジャーナリストに対する脅迫や、自由への抑圧があった場合、その責任者の米国内資産を差し押さえる」などの条項を含む。それらは、厳しい情報統制の中国内政に、影響を与える可能性が当然あるだろう。しかし、全て米国内で完結することなので、内政干渉ではないと言い張ることは世界一の強国には可能である。(法律の内容:https://money1.jp/archives/9229

 

中国政府は、通貨安(元安)へ高まる圧力を考慮して、一ドル7.13元程度の元安相場に設定している。輸出には有利となっているが、中国からの資産の海外逃避が進めば、通貨崩壊に繋がる可能性があるという。(補足2)トランプ政権は、追加関税等を発表するなどの措置を今日明日発表する可能性があると思う。

 

2)日本の運命はどうなるか?

 

今後、世界の政治と経済の動きが、中国デカップルの方向に加速される可能性がある。日本関係では、これで習近平の国賓招聘は無くなったと思う。安倍政権は、壁の上を歩いて両方を眺めていただろうが、これで米国側に着地することになるだろう。

 

それを象徴するような場面があった。5月25日の夕方、安倍総理は緊急事態宣言の撤廃を発表した記者会見で、ウォールストリート・ジャーナルの記者が質問した。「今、米国と中国がウイルスなどをめぐり激しく対立している。日本はどっち側につくでしょうか?」(夕刊フジのニュース)それに対して、安倍総理は以下のように答えた。

https://news.yahoo.co.jp/articles/aea5f0fe9dea72b34ffbd87d58a74965d0ae3183

 

 

現在、米国と中国の間で、新型コロナウイルスの発生源をめぐり、激しく議論が行われている。日本政府は『ウイルスが中国から世界に広がった』のは事実だと考えている。今後の日本の役割は、今回のようなパンデミックが起こったとき、『世界がどう行動すべきか』について提示していくことだ。こういうときは、世界中が協力しなければならない

 

ただ、日本の外交・安全保障の基本的立場としては、米国は日本にとって唯一の同盟国である。『自由と民主主義』『基本的人権』『法の支配』という基本的価値を共有している。日本は米国と協力しながら、さまざまな国際的な課題に取り組んでいきたい。

 

中国も、世界において極めて経済的にも重要な国であり、プレーヤーだ。それにふさわしい責任も果たしていただきたい。国際社会は『日本と中国がそれぞれ、地域や世界の平和や安定、繁栄に責任ある対応を取っていくこと』を期待している。中国がそういう対応を取ってくれることを期待したい。

 

安倍総理のこの答えは、非常によく出来ていると思う。この質問と安倍総理の答えは、準備されたものだったのだろう。(補足3)この発言に対して、中国外務省の報道官が「ウイルスの発生源を政治的に利用し他国に汚名を着せる行為に断固反対する」と批判した。https://www.youtube.com/watch?v=GRd6gF1xSQA

 

この批判は非常に不思議である。何故なら、中国は新型コロナ発生直後に、武漢海鮮市場のコウモリから発生したと言っていた筈である。ただ、この報道官の言葉は、これでも幾分抑制的なのかもしれない。

https://www.reuters.com/video/watch/idOWjpvCAQU3O7TLTC1LKEFOCZQDQDGGN

 

ここで日本政府および国会は、今後の中国との関係を深く考えるべきである。中共と米国自由主義圏との争いが激化したとき、中国は日本を攻撃の的にすることも念頭にいれなければならない。それを避けるために習近平を国賓に招聘するのなら、それは止めた方が良い。何かで恩を売ったと日本が考えても、それにとらわれるほど中国は簡単な国ではない。

 

それよりも、上記日本の立場を「日本の意思は明確だ」と欧米自由主義圏特に米国と英国に思われた方が、遥かに得である。中国という国は、全ての人物が「厚黒学」(補足4)を学んで第一線に出世する国である。中国相手に、本音を隠すような老練な外交は目指さない方が良い。中国に敵うわけがない。

 

台湾併合に中国が動く場合には、台湾の反撃も相当なものと考えているだろう。もたもたしているうちに、諸外国の本格的な体制整備で、第三次世界大戦に進む可能性がある。それが核戦争に発展した場合には、世界の終末という事態も想定される。しかし、尖閣を占領する作戦の場合、日本の自衛隊の反撃は、日本本土ではないので、腰が引けるだろう。つまり、中国側から米国側への攻撃の恰好標的として、日本の尖閣や石垣島を考えている可能性がある。中国は日本を舐めきっているからである。

 

台湾はその後の標的だと思う。その時、日本は中国の属国に明確な形でなるか、それとも戦場になって国民の30%が核ミサイルの犠牲になるかの選択を迫られる事態も想定されるだろう。万が一のことを考えて、トランプ大統領から、早期に大量の核持込みをしてもらう以外に手はないだろう。(補足5)否、日本のトップに米国から核兵器を奪い取る位の迫力がなければ、日本の生存は難しいだろう。 (以上は、元理系研究者のメモです。;午後6時30分編集)

 

補足:

 

1)アヘン戦争の時に英国領となった香港が中国に返還されたのは1997年である。それは1984年の中英連合声明に基付いて行われ、そこには返還から50年間「高度の自治」が明記されていた。(ウィキペディア、香港問題参照)

 

2)中国の元は固定相場制であるが、その前後の狭い範囲で変動が許容されている。(及川氏の動画参照)

 

3)この質問までは、緊急事態宣言解除や、黒川弘務前東京高検検事長に関する質問が続いていたと書かれている。この米国の記者に学ぶべきである。首相に質問する機会を得ながら、新型コロナや黒川問題だけで済ますのは、時間と機会のロスである。また、この重要な質疑について、翌日の毎日新聞等一部新聞はほとんど何も書いていないのは、日本の報道のレベルが非常に低いことの証明である。日本の報道が、外国特に韓国や中国に乗っ取られているのだろう。

 

4)厚黒学とは、「面の皮は厚く、腹は黒くあるべき」という考え方である。華僑の必須科目だと聞いたことがある。兎に角、日本レベルの外交など通用しない相手である。

 

5)東大法学部の憲法学を教えるI教授のように、憲法9条を金科玉条のように考える日本では、のぞみ薄である。どうしようもない。日本は、幻の国家が要望と言う形で命令ができる不思議の国なのだから。

 

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