2020年6月6日土曜日

マイノリティの米国支配とグローバリズムの正体

1)マイノリティとマジョリティ:

 

マイノリティとマジョリティという言葉は、人の社会での少数派と多数派の意味に夫々用いられる。現在、多くの国では幾つかの民族が共住し、マイノリティの権利や尊厳を守ることは一つの課題である。

 

マイノリティには、先住民族と流浪の民族の二つがある。先住民族の場合は、マジョリティの中に飲み込まれ、自治を許されてそのまま存在することもあるだろう。大きな国の少数民族などがその例である。しかし、歴史的には悲惨なケースが多いだろう。

 

流浪の民が作るマイノリティには、華僑(中国人)やユダヤ人(ディアスポラの民)などがある。流浪の民が、ある場所に棲みつく場合には、マジョリティの先住民との摩擦が起こることが多い。多くの場合、マイノリティが虐めの対象となる。西欧やロシアでのユダヤ人が虐めの被害者となったことは良く知られている。

 

ただ、文明に大差がある場合、マイノリティがマジョリティを虐殺して、その土地を奪ってしまう場合もある。南北アメリカ大陸やオセアニアがその例である。人類の歴史は、そのような生存競争の連続だった。それを現在の善悪で裁くのは愚かなことである。

 

その人類の歴史の中で稀有な出来事が、マイノリティであるユダヤの人たちが米国を実質的に支配したことである。その背景に、米国の国是であり建国の精神である、「自由、平等、フロンティア精神」があると思う。アメリカの理想論が、ユダヤ民族の実力発揮の環境として最適であったということになる。

 

そんな世界史の中で、米国社会をユダヤ系がどの様にして支配するに至ったかについて、元ウクライナ大使の外交評論家の馬渕睦夫氏が、動画「ひとりがたり」のシリーズ8回目で、語っている。最初にそれを紹介して、あとで私が議論する。

 

2)馬渕睦夫氏の分析:米国を支配するユダヤ系が主力のディープステート

https://www.youtube.com/watch?v=Z85BnnOPmZ4&t=412s

 

馬渕氏の仮説(理論)では、米国の政治を支配しているのが、ユダヤ系が主力のDeep Stateである。(補足1)

 

マイノリティであるユダヤ系が米国を支配するに至ったプロセス(あるいは手法)は、米国のユダヤ系政治評論家のブレジンスキーが、著書(The Choice; 邦訳 孤独な帝国アメリカ)に書いている。それは「マイノリティの地位を向上させること」であったという。他のマイノリティとしては、アフリカ系黒人、ヒスパニック、アジア系などである。(上記動画の7分ころ)

 

その具体的手法は、(A)メディア、金融、司法(司法省、FBI、裁判所、弁護士)を支配するである。このDeep Stateの原型ができたのが、ウィルソン大統領の時代であり、新たに大統領直属機関として、広報委員会が創られた。そこで働いていたのが、エドワード・バーネイズやウォルター・リップマンであった。

 

エドワード・バーネイズは著書「プロパガンダ」の中で、「アメリカ国民の考えを、国民が知らない様に誘導できる者が真の支配者である」、そして「そう言う勢力が目に見えない統治機構を構成している」と言っている。ウォルター・リップマンの言葉「アメリカの民主主義は幻想である」は、この別表現である。

 

アメリカのオバマ大統領までを決めてきたのは、そのディープステートである。二大政党というのは表の現象であり、深層ではこの一つの支配機構により大統領も決められている。大統領の側近の多くはユダヤ系であり、優秀な彼らがこの重要な活躍の場を得ることになったのは、上記マイノリティの権利が拡大されたからである。

 

カーター政権時のブレジンスキーやニクソン&フォード政権時のキッシンジャーなどが著名である。ブレンジンスキーの「マイノリティの地位を向上させる」運動の中で、他のマイノリティをユダヤ人たちは米国支配のために利用したのである。

 

この動画の20分以降の主旨は、「ディープステートの考えに基づいて行われたグローバリズムは、米国民のためではなくユダヤ人の思想実現のためである。それに反旗を翻したのが、トランプである」と要約される。馬渕氏は、トランプのアメリカ・ファーストは、同時に各国ファーストであり、反グローバリズムであると言っている。(補足2)

 

 

3)私の考え:

 

上記の話を私なりに分解すると、大きく分けて以下の三項目となる。一つ目は、①「マイノリティの地位の向上」、二つ目は、②「政界等の分野(上記A)へのユダヤ人の進出」、三つ目は③「ユダヤ人の考え方・思想によるアメリカ及び世界の政治経済の支配」である。

 

これらのうち、一つ目と二つ目は、既に最初のセクションに書いたように、(異民族の)社会の中で生きる術に長けた人が多く居たとしても、米国の国是である自由、平等、フロンティアの精神と理想論及び論理を大切にする国柄があってこそ、その支配が可能になったのだろう。

 

つまり、流浪の民であったユダヤ民族にとって、アメリカという新参者が集まって作った、歴史や文化の浅い国を見つけたのは、ラッキーだったと言えるだろう。

 

自由、平等、論理(理想論)を国是とする国では、マイノリティと言えども、平等のレベルまでその地位は向上させられるべきである。また、フロンティア精神の国では、潜在能力が高く知識と技量を身につけた者が高い地位に登るのは、当然である。

 

馬渕氏の解説の最後の方で「ユダヤ系が他のマイノリティを利用した」というのは、偏見のように感じる。むしろ、他のマイノリティもその恩恵を受けたというべきだろう。コリン・パウエル、スーザン・ライス、コンドリーサ・ライス、バラク・オバマなど、ユダヤ以外のマイノリティが政界の中心に進出できたのは、その良い例であると思う。

 

むしろ、マジョリティの分裂と、その左翼の部分つまり民主党が、その勢力を利用して政界の主力の座を獲得したと思う。ウッドロー・ウイルソンやフランクリン・ルーズベルト、最近ではビル・クリントンなどである。

 

三つ目「ユダヤ人の考えかた・思想によるアメリカ支配」だが、これが共産主義思想に始まるグローバリズムの考え方である。共産主義とそのロシアでのスタートは、マルクス、レーニン、トロツキーなどユダヤ系が担った。その思想は被支配者の解放という点で、ユダヤの民には福音だったと思う。

 

ただ、理想論を翳す人たちは、理想論の弱点を見逃して失敗する。理想主義者は、当然その理想に向かって直進する。しかし、現実は理想主義者が思うよりも複雑である。例えば、共産主義の計画経済を企画する人は、人間を単純に見てしまうだろう。その失敗例の典型が、毛沢東の大躍進運動(補足3)である。

 

グローバリズムでも、理想と現実の乖離はすぐに始まった。30年程で、グローバリズムは単に中国の農村戸籍の安い労働者を奴隷のように使って、ニューヨークの資本家と中国の政治中枢の一部が、そしてキックバックを受ける米国の政治家などが、利益を蓄積するシステムに成り果てた。

 

従って、中国共産党政権の抑圧政治が、現在のグローバリズムにとって必須である。グローバリズムとは、観点を変えれば、地球規模の奴隷制度である。その土地では、生きた下級奴隷の内蔵も商品である。その現実をわざと見過ごしたのがオバマとヒラリーの8年間ではなかったのか。

 

理想論者が予期しないファクターに出会った時に採る行動は、理論の変更ではなく、嘘による誤魔化しである。考え方を、即座に替えるのは現実主義者のすることである。新しいファクターを次々に取り入れて、新理論組み換え出来るのなら、彼らは理想主義者とは呼ばれないだろう。単に、優秀な現実論者という分類となる。理想主義者と現実主義者の分類は、横の分類であり、縦の分類(つまり優秀か馬鹿か)ではない。

 

この誤魔化しのために利用するのが、メディアである。(補足4)理想的な看板を掲げ、メディアでプロパガンダを行い、裏で誤魔化す。それが横に現実主義者をおいた時の理想主義者の姿である。現実主義者は、木訥でのろまに映るだろう。

 

勿論、現実の政治には、これらの二つのベクトル合成した政党が存在するだけだろう。理想論を掲げて出発した政党が、対立する政党よりも現実的になったりすることもあるだろう。赤狩りの結果、米国の民主党がどのように変化したのだろうか? 素人の私にはこれを書く十分な知識はない。

 

国家の先頭に立つ人を選ぶには、優秀な人を選ばなければならない。華麗な看板を掲げて、嘘を付くタイプを選ぶのは破滅への道である。そして、大衆は優秀で誠実な候補者を育て、大衆の中から選び出さなければならない。政治貴族を作ってしまうのは、政治の腐敗の出発点である。(補足5)

 

そのために、大衆も学ばなければならない。謙虚でなくてはならないが、議論の場においては積極的でなくてはならない。そのために、言葉を十分知らなければならない。大衆が退廃的享楽的になれば、政治の世界には理想主義者も現実主義者もいなくなるだろう。嘘とインチキを競い合う人たちだけになるだろう。(15時30分、編集)

 

補足:

 

1)Deep Stateという明確な組織があるわけではない。秘密結社などで結びついた人たちがシンクタンクや報道機関などを支配して、米国の政治を誘導すると考えられている。そのための多額の資金として、欧州(英国を含む)ロスチャイルド家などが蓄積した金融資産が使われたと考えられている。石油王のロックフェラーとの関係についても諸説あるだろう。

 

2)グローバリズムはアメリカが維持する世界秩序が前提であった。トランプのアメリカファーストは、そのアメリカのリーダーシップを放棄する匂いがある。従って、私は完全にはトランプ大統領の支持が出来ない。

 

3)大躍進運動は「鉄は国家なり」という言葉を信じた毛沢東が、農業や工業の発展の基礎は鉄であるから、その大増産を行わなければならないと考えて、素人まで鉄の生産を行った。鉄が供出出来なければ、自分たちが使用している鍋釜を出して、共産党役人の攻撃を避けた。この話は、小説「ワイルドスワンズ」に描写されている。

 

4)オバマ政権時代に、ヒラリー・クリントンは自分の仕事の内容を誤魔化すために、公職にありながらメイルアドレスを私的なものに変更していた。これだけでも、選挙に負けるのに十分なのだが、それでも投票数でトランプを超えたというのは驚きである。

 

5)無能な政治貴族が支配する国が日本である。総理や副総理は言うまでもない。昨日通産大臣の姓に聞き覚えがあったので調べたら、やはり父の地盤を受け継いで政治家になった人だった。

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