2020年8月5日水曜日

米国の対中姿勢に関する日本の新聞記事について

昨今の新聞記事は、新型コロナ肺炎と大雨災害に関するものばかりであった。辟易としているところに、昨日かなり本格的な国際情勢に関する記事が、購読している毎日新聞にも掲載された。(補足1)内容は、継続的にブログに書いてきた米中対立に関するものであり、興味をもって呼んだ。日本の新聞をどのように読むべきかという点を含めて、その要約と私の考えを記す。

 

1)毎日新聞の「対中包囲網:困惑と思惑」という記事

 

昨日朝刊の毎日新聞三面トップに表題のような記事が掲載された。「米中対立が先鋭化して、両国と安全保障及び経済の両面で関係の深い日本や東南アジア諸国を困惑させている。世界の二極化に対抗する動きが今後出てくるのだろうか」という導入部で始まっている。

 

主要部は、副見出しが、「日本:米国寄り迫られ」(青木純氏)と「インド:距離おき第三極」(松井聡氏)の二つに分かれている。()内の指名は執筆者だろう。視点は、現在の視点のみであり、毎日新聞が見た世界の政治的表面についての観測である。予備知識の想定や問題発生の背景についての記述はここには無い。副題「新冷戦、揺れる世界」及び南シナ海を中心にしたここ二ヶ月ほどの軍事的動きの要約が、地図とともに掲載されている。

 

日本の部分については、「日本は日米同盟を基軸としながら、中国とも協調する従来方針を維持する“両睨み”の外交戦略を描いてきた。だが、米中対立が“極めて異例なレベル”(外務省幹部)まで激化する中、徐々に米国よりの立場を取らざるを得なくなっている」と書いている。それに続いて、王毅外相の「主要な力を相互利益の協力に集中すべきだ」という言葉と会談相手の茂木外相の「日本は両国の協力関係を深めたい」と応じたとある。

 

この部分“極めて異例なレベル”は、米中関係に関する歴史的且つ必然的方向だという理解がない。(補足2)そう言った外務省幹部が居たとすれば、「異例」の意味をもっと聞くべきである。その後の、“徐々に米国寄りの立場を取らざるを得ない”という自分の運命の流れのような記述には、日本の意思は何もない。その外務省幹部に聞いたのかどうかもわからない。ただ言えるのは、毎日新聞が現在の日本の姿をそのように見たいのだろう。

 

インドに関する部分については、「民主主義国の新たな同盟が作られるときかもしれない」というポンペオの考えに、ジャイシャンカル外相の発言として「我々は同盟のシステムの一部になったことはないし、今後もならないだろう」を引用する。加えて防衛大准教授の伊藤融という方の考え、「インドにとっては、米中が適当に対立している情況が好ましい」を、インドの基本的姿勢と書いている。

 

米中対立激化の中での将来の方向として、“インドシンクタンクのベテラン研究員”の言葉、「インドは従来行ってきた日米印の海上共同訓練マラバールにオーストラリアを招いて、4ヶ国での軍事面強化を目論んでいるが、中国の反発を考えると、連携強化はそう簡単ではない」を引用している。そして上記伊藤氏の言葉、「ロシアやフランスとの第三極を形成し、多極化を目指す可能性が高い」という言葉で締めくくっている。

 

2)記事の解釈:

 

上記毎日新聞の記事は、安倍総理によって提案されたインド太平洋構想のようには、世界は動かないという見方である。つまり、対中包囲網が出来るのではなく、米国中心の世界の動きは成長せず、世界は多極化の時代に入ると見ることも可能だという意味だろう。

 

しかし、まともな報道機関なら、問題の原点を考えるべきである。対中包囲網は単に中国いじめではなく、中国人民と中国共産党政権を明確に区別し、その後者に対する包囲網であること、それは言葉を替えれば「民主主義と独裁主義の対立」である。事情を殆ど知らない大衆向けの新聞メディアであるから、導入部にはその問題の本質を隠さず書くべきである。

 

毎日新聞は記事を書く際、現職例えば外務省幹部(日本)や外務大臣(インド)の発言と、民間人(学者や研究員)の発言を引用する際(引用する際)、何らかの区別をしているのだろうか? 現職は、公式見解を述べ、民間人は本音を述べる可能性が高い。

 

また、その発言をどういう意図でしたのか、それを書かないで発言者の氏名を併記して書くのは好ましくない。発言者に、印刷前に記事を送り了承を得たのなら、その旨も書くべきである。

 

専門家から意見を貰った場合、その鍵となる言葉の意味とその意見全体の意味を自分で解釈をして、自分の考えを書くべきである。最後に執筆者の名前が引用されている今回の記事の場合、尚更である。

 

私は以下の様に思う。インドは静かに問題の本質を考え、如何にして中国からの反発を避けながら、日米豪の海軍の輪に加わるか、ロシアやフランスと協力して三極目を装って、如何にして米国中心の極の支店的なものを作るかを考えている。つまり、スウィングしていても、片方を見る目と、もう一方を見る目は全く異なるだろう。三極といっても、次の次を狙う三極ではないだろう。

 

毎日新聞の記事は、米国の呼びかけは結局失敗或いは挫折に終わるであろうと、日本国民を洗脳するためなのかと疑わせる記事である。毎日新聞の記事の内容を殆ど変えずに、文章の語尾を少し変えるだけで、上記私の考えのように文章を変えることは可能だろう。それは、毎日新聞の記事内容とは全く逆を意味にする。

 

私は、最終的には中国共産党政権は崩壊すると考える。そして、これまでメディアにも完全に無視されてきた農村戸籍の人たち、ウイグル、内モンゴル、チベットなどの辺境の民なども、中国の都市戸籍の人たち、更に1億に満たない共産党員の人たちなどと、平等の地位を得るようになるだろう。

 

このような記事を書く場合、本来なら社説や解説記事などの形で、多数の視点の羅列の他に、この新聞の読者を含めて、日本国民の将来に利益になるように、日本が取るべき方向と考えることを明確に書くべきである。

 

しかしそのようなものは一切ない。つまり、日本国民が持つべきインテリジェンスが見つからない記事である。この記事は、中国の意向を相当汲んで書いたのだろうと私は推測する。

 

補足:

 

1)毎日新聞購読は、ただ折り込まれるスーパーの広告などを目的にしている以外には、日本の新聞の報道はどんなものかを知るためである。

 

2)米国がもたらした異例なレベルの米中関係に関して、例えばポンペオ国務長官のニクソン記念図書館でのスピーチなどの紹介があるべきだが、米国高官と日本外務省との話し合いの記載は全くない。”異例なレベル”とは何なのか、大衆紙であるから、その一般読者にこの言葉だけでよいのか? そのような配慮は全くない。しかも、”異例”は日本語の感覚では、良くない意味を持つ。

 

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