2021年4月9日金曜日

対中国外交で跛行する米国バイデン政権

3月18−19日アラスカで行われた米中2:2会談で、中国の楊潔篪が予定時間を大きく超えて、米国の対中姿勢を攻撃した。中国は、鄧小平の韜光養晦外交から習近平の戦狼外交にスイッチを替えたことを世界に印象付けた。多くの人は、一度出来上がった米中の対立は、簡単には修復不可能だと考えた。

 

そして、この米中の関係を背景に、322日、米国、カナダ、英国に加えてEUが、ウイグル人権問題での制裁に動いた。

 

しかし、アンカレッジでの会談の2日後3月20日に、米国と中国の橋渡役のヘンリー・キッシンジャーが、中国の北京で開催されたThe China Development Forum 2021にビデオで参加し、今こそ米中は協力的な関係を強めなければならないと、挨拶していたのである。https://www.youtube.com/watch?v=KWnD1pbWik8

 

「大統領から周近平へのプレゼント」と第するyoutube動画 で、元記者の”motoyama”(ハンドルネーム)氏は、その会議での米側の参加者として、キッシンジャーの他に、クリントン政権のときの財務長官のロバート・ルービンや、オバマ時代の官僚、世界銀行の関係者らを挙げている。

 

 

中国新華社の子会社新華網が配信する英語版ニュースでも、上記中国発展フォーラムの様子が配信されている。それによると、元国務長官ヘンリー・キッシンジャーは、協力的でポジティブな米中関係の重要性を強調し、それに向けてこれまで以上の努力を呼びかけた。

 

キッシンジャーは次の様に発言した。現在、米中は二つの偉大な社会であり、個々には別の文化と歴史を持つため、時として異なった方向を見ることは当然だろう。しかし同時に、世界の平和と繁栄は両国の相互理解に依存しているため、現代の技術、地球規模の意思疎通、およびグローバル経済は、これまで以上に両国の集中的な協力的実践を必要としている。( require that the two societies begin ever more intensive efforts to work together.) http://www.xinhuanet.com/english/northamerica/2021-03/20/c_139823698.htm

 

アラスカでの楊潔篪のパーフォーマンスは、一般には中国の国内向け発言だと理解されている。しかしその裏で開催された、本音を喋る非公開の会議において、米国バイデン政権は明確に米中の関係親密化に動いていたのだ。従って、アンカレッジでのパーフォーマンスは、米中共演の全世界向けだった可能性すら存在する。

 

北京五輪に対する姿勢も、このバイデン政権の対中姿勢の本質を表している。ニューズウィーク日本版の8日の記事によれば、「米国務省は当初、北京五輪のボイコットも選択肢のひとつだと示唆していたものの、その後、ボイコットの問題についてはまだ議論されていないと修正した」と報じている。https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2021/04/post-96018.php

 

つまり6日、ネッド・プライス米国国務省報道官は定例記者会見で、「米国が同盟国と北京五輪の共同ボイコットを協議しているのか」という質問に「明らかに我々が議論したいことだ」と答えた。

 

その後、中国から”スポーツの政治利用だ”という猛烈な反論にあった。

 

その勢いに動転したのか、翌日の7日、ジェン・サキ米国ホワイトハウス報道官は定例記者会見で「我々は、同盟国やパートナーとの共同ボイコットに対するいかなる議論もしておらず、現在進行中の議論もない」と述べた。https://news.yahoo.co.jp/articles/a3ccece42feef9ca9303befb43894fbe85febbe6


これでは、米国に同調して対中制裁に動いた国は、はしごを外されることになる可能性がある。今後米国の自由主義陣営のリーダーとしての能力が相当弱まるだろう。善意に解釈すれば、バイデン政権は、対中外交において跛行しているのだろう。(4月9日午後7時30分編集)

 

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