2021年12月27日月曜日

議論なき日本とその貧弱な外交と内政

1)政権を握る政治屋集団

 

日本の貧弱な政治の原因は、意見の相違で政党が出来上がっていないこと、そしてそれらの間の活発な議論の無いことである。つまり、日本の国会における政権政党の主なメンバーは、数世代にわたる家業を引き継いだ人で形成されており、政治思想を共有する人の集まりではない。日本の国会でまともな政党は、マルクス主義で団結している日本共産党のみとも言える。(追補1)

 

自民党の国会議員で家業を継承した人の所属政党は、当選前から決まっている。そのため党内での政治思想が不均一な形で分布している。彼らの間には派閥という集まりがあるが、その人的コネクションは政治思想とは別のものであり、ヤクザや相撲部屋にあるような主従関係に似ている。

 

天皇制の在り方についても意見の統一がなされていないし、対中国、対米国などの外交方針についても、同様である。それに、議論をして互いの考え方をブラッシュアップするという政治文化などない。それでも政治家としてやっていけるのは、日本の文化が関係している。

 

例えば、彼らの対中国外交の背景にあるのは私益であっても、政治思想や国益ではない。天安門事件で世界が騒いだ後、早々に中国に円借款を開始した海部俊樹、天皇訪中を行った宮澤喜一、ピンクトラップに掛かった橋本龍太郎などが次々と首相になった。しかし、日本が米国の不沈空母だと言った中曽根康弘は自民党から離党せず、何も言わなかった。これが政権与党の自由民主党の姿であり、その本質は上述のようにヤクザと変わらない。(補足1)

 

従って、政党としての体裁を維持するためには、どうしても党議拘束を必要とする。そして、その党議拘束に唯々諾々と従うのが自民党議員である。この点、党議拘束のない米国の政治と根本的に異なる。

 

衆参両院の議員数(括弧内)とともに日本の政党名を挙げると、自民党(372)、立憲民主党(140)、公明党(60)、日本維新の会(56)、国民民主(23)、日本共産党(23)などとなる。両院には9つの政党に所属する議員(約685名)と無所属議員(25)が存在する。彼らが本当に議論をすれば、3つ位の政党に纏まる筈である。この点でも、第3党や無所属議員の極めて少ない米国と際立った対照を為している。

 

更に言えば、日本の国会は法律を作る所ではない。後に内閣に入る政治家を養う牧場でしかない。法案の大多数は内閣から出されたものであり、立法機関は議論した振りの後、形だけの採決するのが仕事である。行政と立法の癒着が著しい。議員内閣制の特徴だと人は言うだろうが、それなら何故、三権分立というのだろうか? https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA12B660S1A810C2000000/?unlock=1

 

しかも、最高裁は完全に行政におもねった判断をしている(補足2)ので、日本には一権の存在しか明確ではない。それにも拘らず衆参両院で709名の議員(補足3)を抱えて、「1日で1ヶ月分の文書交通費の問題」を議論しているのは茶番劇以外の何ものでもない。

 

この劣悪な日本の政治は、一体何が原因で生じているのだろうか? 明治維新で持ち込まれた天皇制が、独裁権力の中心に成長した昭和史の名残なのか、それとも日本文化の特徴によるのか?

 

私は両方だと思うのだが、ここでは後者だけを取り上げたい。もちろん、両方が協奏的に停滞した日本を作っているとすれば、一方が改革されれば他方は自然とふさわしい形に落ち着く。つまり、本来の天皇制(政治から独立した日本神道の中心としての天皇)と健全な政治を実現できると思う。

 

2)主権国家としての体裁を未だ持たない日本

 

国家の政治には、先ず全体的・基本的な国家のかたち及び国家としての目標を立てることが不可欠である。

 

国家のかたちとしては、基本的人権と個人の自由を最重視する福祉国家の体制、国際社会に向けては主権国家「日本」と世界の平和と経済へ貢献できる体制、を夫々持つこと。そして、の経済的繁栄と独立国家としての日本を長期維持することが、国家の目標だろう。

ここで、国家とは法治の枠組みとその維持のための権力と財政を持った国家組織のことであり、国とは国家、領土、国民、法人、文化などを含んだ日本のことである。

 

この国家の枠組みを、国の伝統文化などを考慮しながら明示したものが、日本国憲法である。その憲法の前文及び9条に、日本国の権力の構造が主権国家体制の実現維持が可能な様に明示されていないことが大問題である。中国共産党政権の膨張政策(戦狼外交による)で緊張している国際社会において、日本も主権国家を形成することや主権国家体制を支持することを、明確に国内外に宣言できていないのである。

 

その一方、「結党の目的が自主憲法の制定である」と自民党議員は言う。しかし、結党から65年たっても、自民党は自主憲法草案を国会に議案として提出していないのだから、憲法改正の意志が非常に薄弱なのは明らかである。上記自民党議員の言葉はブラックジョークだろう。

 

もう一つ例をあげると、日本の首相が“拉致被害者を取り戻す”という決意を表明してから久しい。しかし、その解決の手段を与える根拠である筈の憲法改正に向かって、上記のように一歩も進んでいない。つまり、“北朝鮮という国家”による日本国民拉致を、日本国の主権侵害の問題として考えずに、単に悪党の犯罪と歴代首相は考えているのである。彼らは何もわかっていない。

 

彼らは、家業の政治屋を継いでいる人々の業界団体である。それでも国民は懲りずに自民党に票を入れて、自分は何もせず発言もせず、ただ論理的でない不満をブツブツ言っているのである。

 

尚、自民党議員は憲法改正案は既に出していると言うかもしれない。しかし、法案は国会に提出したことで、「出した」と言える。内輪の出版物にだけにプリントして「憲法改正案を公表した」と言う神経の図太さと、言葉使いの杜撰さには呆れるばかりである。https://www.jimin.jp/policy/policy_topics/recapture/pdf/063.pdf

 

最初に支持が少数でも、国民を議論に巻き込んで郵政民営化法案を成立させた小泉政権のことを考えれば、「国会に提出をしても成立しなければ何にもならない」というのは、国会議員という職業を失うことを日本国の崩壊以上に恐れる政治屋の台詞であることを証明している。(補足4)

 

3)議論なき日本

 

上記日本国の体たらくは、国会議員を中央から利権を剥ぎ取ってくる役としか考えていない未発達な日本の政治文化の姿である。「小選挙区制導入は、政権交代できる2大政党を育てるため」というのは嘘で、小沢一郎は自民党の政権維持だけを考えて提案したのだろう。https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12466516222.html

 

この国には現在、論理を用いて政治的主張をするという130年前に導入した西欧型政治の伝統は残っていない。明治維新からデモクラシーの大正までの政治として学校で教えられた日本の議論する政治は、移植後枯れてしまったのだろう。

 

現在、日本人の多くは仕事以外で井戸端会議以上の議論をしないのではないだろうか。都会の老人も、国会における議員も、まともな言葉の交換で何か新しいものを構築・決定できない。(補足5)大勢が深いところから協力して、言葉の作品(憲法もその一つである)を作りあげることなど出来ないのである。

 

西欧型の近代社会においては、多くの優秀な人たちが「言葉の世界」を共有することで、社会と国家を改善するのが普通である。そのような“言語空間”が社会(個人や私的関係以外の空間)に一定の割合で存在しない場合、そのようなネットワークを持つ外国人(つまり米国人、中国人、朝鮮人など)に国を乗っ取られるだろう。

 

つまり、秀才が個人としてすぐれた議論をしても、それは限られた分野の限られたテーマにおいてだけであり、それを元にして知的空間を多くの人が参加する形で構築するまでにはなかなか至らない。しかし、そのプロセスなくして、日本の政治の成熟はないのである。

 

最近、茂木誠さんの日本が太平洋戦争に突っ込んだ理由というyoutube動画を紹介した。https://www.youtube.com/watch?v=RxcRfRiO20s

 

そこでは、人間の歴史には大衆の貧困が常にベースとして存在し、1930年代の世界不況が引き金になって共産主義という今では愚かな思想が世界を席巻したことが、語られている。その新しいが不完全な理論に惹きつけられた近衛文麿が、風見章や尾崎秀実などを近づけ、敗戦革命とという悲劇のシナリオに向かうことになった。(補足6)

 

ただ、その茂木誠さんの日清日露戦争に関する他のyoutube動画での語りは、私には貧弱に見える。何故なら、近代史の中でのユダヤ資本の働き、その一つとして日本の明治維新が存在すること、日露戦争にもそのユダヤ資本の意志が働いていることが十分考慮されていないと思うからである。https://www.youtube.com/watch?v=CUtb9nseHNk

 

 

もし、馬渕睦夫さん、西鋭夫さん、林千勝さんを加え、彼らが自分の高いプライドに優先して議論に参加すれば、もっと広い背景から日本の近代史が書けるかもしれない。その議論が、更に大勢の他の人たちを巻き込めば日本の近代史の総括が出来、それを背景に日本の政治文化も画期的に改善されるだろう。

 

4)日本は言霊文化の国か?

 

日本では、優れた人でも古代ギリシャの人のようには対話を欲しない。対話は、日本では議論から討論となり、最後は言い争いから喧嘩となる。得てして、人格を賭けた勝敗の世界のことになってしまう。それは、日本では言葉は戦いの道具であっても、建設の材料や道具と見なされることは極めて稀だからである。

 

その背景に、日本は言霊文化の国であることが存在する。ある人が言葉を発すれば、それは「その人の言葉」ではなく、その人物そのもの、つまり言葉=人物なのである。そのような言語文化の国では、安易に対話や議論は出来ない。(補足7)

 

人の言葉が公の空間に出た以上、その個人の内部と同一視され、場合によっては個人の尊厳まで剥ぎ取られる危険がある。四人が議論すれば、一人は勝利し尊敬されるかもしれないが、残り三人の尊厳は奪いとられる危険性がある。そして新しい見方が構築されず、ただ殺伐とした戦場の風景が残るのみに終わるのだろう。本当はそうとばかりは言えなくても、そのような誤解を大衆は持ち、それを押し切って議論するには、何か別の強い動機が必要である。

 

その結果、かなり知的な人物の間で話し合っても、知識の不均一な分布はなくならない。“知的建造物”の高さは、元々のもの以上にはならない。多くの知的人物がいても、そこに知識の都会ができあがることはない。それが多少とも存在するのは、国際的な基盤の上にある自然科学系の学会のみだろう。

 

この事態を克服するには、教育の改革が第一だろう。学校の授業は教師のイントロの後は、全ての時間を議論に当てる。そして、数人の議論からより優れた共通の考えを作る訓練をするのである。単なる暗記は、自宅ですれば良い。サンデル教授の授業風景として日本でも放映されたあのスタイルである。

 

編集:9:20、橋本龍太郎の件、政界はヤクザの世界という細川護貞の言葉の件、補足1に移動; 14:20 補足1を修正;12/28/5:30 小編集後最終稿

 

追補1:立憲民主は“反自民”の政党であり、従って考え方の分布は広い。国民民主と日本維新の会は、全国的には未だ十分認知されていないように思うが、将来が期待できる政党だと思う。(17時40分、追加)

 

補足:

 

1)橋本龍太郎が中国のピンクトラップに引っかかったことに関する記述:https://www.news-postseven.com/archives/20140826_269773.html?DETAIL 

政治はヤクザの世界: あの戦争の最大の責任者とも言える近衛文麿の孫の細川護煕氏が政界に入る際、彼の父親はそれに反対した。そして「そんなヤクザな道に入るのなら、家とは縁を切ってくれ」と言ったという。(ウイキペディアの「細川護煕」参照)後に日本国首相になる細川護煕氏は、近衛文麿の日本近代史における役割を本当に知っていたのだろうか?

 

2)砂川事件の最高裁判決で示された、「日米安全保障条約のように高度な政治性をもつ条約については、一見してきわめて明白に違憲無効と認められない限り、その内容について違憲かどうかの法的判断を下すことはできない」(統治行為論)は、この行政の下に位置する最高裁の姿を示している。https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12466516114.html

 

3)衆議院は465人(小選挙区289人・比例代表176人)、参議院は245人(大選挙区147人・比例代表98人)

 

4)小泉純一郎と言う人は何かのためには、自分のかなりの部分を犠牲にする覚悟を持つことのできる稀有の自民党政治家だろう。しかし、その後彼は大きな仕事「自民党をぶっ壊す」を放棄した。https://www.nikkei.com/article/DGXMZO62969650U0A820C2I00000/?unlock=1

 

5)職場の上下関係や男女関係以外では、同郷や同窓の関係に瞬間的感覚(ウマが合う感覚)を合わせたものでしか人間関係が築けないのが、日本の現状ではないだろうか。宗教的関係は、それだけでは宗教戦争を避ける知恵は浮かばないので、本質的に知的言語的関係ではない。

 

6)この敗戦革命の筋書きは今年4月に紹介した林千勝さんの解釈とほとんど同じである。すこし違うのは、林千勝さんの場合は、「藤原氏再興」的な動機が語られていた点である。茂木誠さんの解釈では主導権は近衛文麿ではなく、完全に尾崎秀実や風見章にあったことも異なる点である。https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12670982397.html

 

7)般若心境の「色即是空」がありがたいのは、その言葉が真実を深いところから表現しているからではなく、その言葉自体がありがたいのである。従って、意味を考える必要などなく、ただ唱えれば良いのである。日本の仏教のお経は、日本人の言霊信仰の証明である。受験生のいる家庭では、ハンカチを落としても、「落ちた」という言葉を発してはいけないのである。うそのような本当の話である。

 

2021年12月20日月曜日

グローバリストの企みか? 外国人参政権附与とその根っこの部分

米国ニューヨーク市の議会において、129日、市民権の無い1ヶ月以上の在留期間しかない外国人、更に、不法移民として入国した外国人の若者に対してまで、市長や市議会議員の選挙権を与えることになったようだ。

 

これをyoutubeで報じた及川幸久氏は、「民主党は次回の下院中間選挙までに、不法移民にまで国政選挙の選挙権を与えるつもりだろう。つまり、このままでは共和党に勝てないので、民主党支持になると予想される外国人にまで国政選挙権を与え、自分達の政権を安定させる為である」と言う。

 

https://www.youtube.com/watch?v=Af5jThLmP8k

 

ニューヨーク市のこの異様な方針は、民主党を中心に進めているもっと大きな戦略の準備、つまり、堤を崩壊させる為のアリ穴の穿孔だろう。民主党政権下での国内政治の安定化というレベルの話で終わる筈がない。(補足1)

 

この譬え話で堤とは、主権国家がその存立を懸けて守る国境や国土のことである。グローバリストらは、不法移民の流入歓迎から、主権国家としての米国を崩壊させ、国境を超えた専制国家(世界帝国)を目指す企みを持っているのだろう。

 

日本においても、外国人に参政権を与えるかどうかの問題が、最近話題になっている。今日のテレビ「ザ・プライム」でも、武蔵野市において、外国人に住民投票の権利を与える条例が、議会本会議で可決される見込みだと論題になっていた。

 

この件に反対する自民党の新藤義孝衆議院議員(元総務大臣)に対して、レギュラー解説員の橋下徹元大阪市長が、条件付き賛成論を展開していた。橋下氏の理屈は日本で税金を納めているのだから、相応の権利附与は当然のことだというものだが、それは詭弁である。
https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12624713557.html

 

外国人が収める税金に対して、日本国に滞在するという特別の権利が附与されている。そして、日本のインフラの恩恵を受け、行政サービスを受けている。日本の将来を決定するのは、日本国民固有の権利であり、税金(行政メリットへの支払い)とは無関係である。

 

日本にも米国民主党系グローバリストの影が見える。例えば、小泉内閣の時から米国グローバリストの意向を日本の政治に持ち込んだ人、現在は世界経済フォーラムの役員としても知られるパソナのCEOなどがいる。更に、米国から新しい強力なグローバリストと思しき人が送られてきた。

 

 

2)エマヌエル新駐日米国大使

 

今回、駐日米国大使に決定したRahn Emanuelは、シカゴを不法移民の聖域都市とした前シカゴ市長である。https://jp.reuters.com/article/usa-immigration-sanctuary-chicago-idJPKBN1AN2LJ 

 

この人の考え方やこれまでの政治における業績は、昨日のyoutube・カナダ人ニュースの解説が非常に参考になる。それによると、シカゴ市長在任期間後期の支持率は1827%、同不支持率は6762%というひどい状況だったようだ。

 

https://www.youtube.com/watch?v=TROM2t_kojw

 

このことから、シカゴ市民の反対を押し切って、シカゴを不法移民のサンクチュアリーとして育てたことがわかる。

 

駐日大使となるエマニュアル氏は、元民主党下院議員でもあるユダヤ系の大物で、クリントン、オバマ、バイデンの大統領選挙での資金集めなどで特別の功績があった人だと言う話である。民主党の国政上の方針も、国民の反対を押し切って、米国をまるごと不法移民のサンクチュアリーにすることだろう。

 

エマニュエル氏の赴任は、米国からではなく米国大使館からより正確に、日本のグローバル化に圧力をかけるためだろう。

 

3)世界に陰謀が存在するとすれば、陰謀論が正論に旧正論は愚論に転化する?

 

上に述べたように、不法移民に寛容な米国民主党の政治は、ニューヨークなどに限ったローカルな現象ではない。米国民主党の大部分は、計画的に米国の国家としての崩壊を目指している様に見える。例えば、バイデン就任後メキシコ国境からの不法移民を取り締まるのは表向きだけで、実質的には積極的に受け入れている様にさえ見える。

 

 

我那覇真子さんの現地レポートやHaranoTimesさんの報告などによれば、不法移民は一端警察に逮捕されるのだが、裁判の日程と出頭命令の紙を手渡された後、すぐに釈放されるという。不法移民は100%裁判には出頭せず、その後はうやむやになる。移民側もそれが分かっていて、警察に簡単に捕まるという。(補足2)

 

民主党支配下の都市では、彼らにも選挙権を与えることで民主党の勢力拡大を図っているようだが、この移民歓迎の動きは、主権国家としては極めて異常である。これも既に述べたが、米国という国家共同体の崩壊も計算の中に入れた動きの筈である。

 

もし、聖書の予言のような世界の崩壊を自ら計画しているのでなければ、近代の主権国家体制を否定し、国境の無い世界、単一の政治権力による全世界の全体主義政治を目指していると思わざるを得ない。従って、民主主義や個人主義は否定され、中国のような不要な個人は臓器摘出のための牧場に移送されることになるだろう。この点は正に旧約聖書の世界である。

 

米国崩壊のプロセスは、本来のシナリオでは未だ先の話だったと思う。しかし、トランプの米国の主権と利益を追求する動きが、反グローバリズム的運動となったため、彼らネオコンと称される人たちの根っこの部分に居るユダヤ人(資本家や学者たち)の長期計画が暗礁に乗り上げた。

 

更に、このトランプ支持が米国での大きなうねりとなり、民主主義の衣装や主権国家体制維持の衣装などもカナグリすてて、これに対抗する非常手段に出たのだろう。

 

国際関係において、主権国家体制は近代西欧が作り上げたよく出来た国際政治文化である。これを嫌ってきたのが、国家を持たないがプライドの高いユダヤ人であった。英国(将来性が限定的)から米国に軸足を移した彼らは、第一次大戦後には大統領選挙を完全に乗っ取り、ウイルソンを当選させ、FRBを設立して米国の金融支配を完成した。(補足3)

 

その後、マイノリティの権利拡大という左派思想を用いて、黒人奴隷の子孫や南米からの移民等を巻き込んで、米国の政治を支配した。米中国交回復の1971年から、世界の金融を支配したユダヤ人たちと、世界の軍事を支配しようとする中国共産党とが暗黙の結託をして、世界支配を企んできた様に見える。彼らの使用人として働いているのが、現在では、米国民主党とメジャーなマスコミである。

 

4)米国ネオコンが演じる世界戦略:

https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12553015761.html

 

繰り返しになるが、米国が世界の経済を支配し、それにより世界の政治を支配する。その後、米国の主権国家体制の内部崩壊と、軸足を中国共産党支配の国に移して裏からそれを制御し、世界革命を達成する。それが、米国ネオコンの影に身を潜めるユダヤ人たちの計画だったのではないだろうか。(補足4)

 

彼らは、米国の政治を支配した後、米国の経済的地位を高めるための政商的政策、軍産共同体的政策をおし進めた。20世紀の世界規模の戦争の背後にほとんど常に彼らが存在したのではないだろうか。生じた国際的トラブルを解決するという名目で、国際政治機関を設立し、グローバル経済を発展させた。

 

全ての主権国家を破壊するため、その基礎に存在する民族主義の破壊、国々の伝統的文化の破壊、更には人類共通の伝統的思考の破壊などで、世界を知的混乱に陥れる方法を用いる。具体的には、あらゆる性的マイノリティーを含めて男女の概念を破壊すること、大人と子供の境界も破壊すること、人種の境界を破壊すること、あらゆる民族の歴史を破壊すること、などである。

 

そして、中途半端な知性の理想主義者を先頭に立てて、人類共通の文化を作り上げると信じさせるのである。そのように考えると、米国でのBLM運動、キャンセルカルチャー運動、不法移民歓迎政策、反トランプ、反プーチンが理解できるだろう。

 

トランプが大統領のとき、上記図式を多分意図せずにあきらかにした。それは、没落した米国建国の民であるアングロサクソン系白人の地位を取り戻そうとしたからであった。

 

  追補:外国人の政治参加の権利について、12月23日、茂木誠さんが解説しています。(youtube動画)たいへん参考になりますので、引用します。https://www.youtube.com/watch?v=sSmr6Lw6r3k

 

補足:

 

1)民主党政権維持だけなら、主権国家体制の崩壊につながる不法移民増のような方法を摂る筈がない。この比喩だが、中国の韓非子に「千丈の堤も螻蟻の穴を以て潰ついゆ」という言葉があり、それから「蟻の穴から堤も崩れる」ということわざができたという。因みに、マイノリティの権利を保障するという小ささ正論から、米国という大国の政治をひっくり返すユダヤ人のやり方は、人類の古い知恵(多分、タルムードか何か)に学んでのsophisticatedな戦術だろう。https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12674960725.html

 

2)多分健康状態や米国で安い労働力になるかどうかなどのチェックを受けるだろう。ただ、子供を連れている場合には、無事不法移民として米国に滞在できるようで、場合によっては子供を借りるなど具面するそうだ。

 

3)再選が確実視されていた共和党タフト大統領から政権を奪うために、民主党からウイルソンを立てたのだが、当選が危ういと思ったので、あのセオドアルーズベルトを三人目にたてて、共和党支持者の分断を計った。その時の手法は、新党の設立である。

 

4)ウィキペディアのネオコンの解説を引用する。「アメリカ合衆国における新保守主義(英: Neoconservatism、ネオコン)は、政治イデオロギーの1つで、自由主義や民主主義を重視してアメリカの国益や実益よりも思想と理想を優先し、武力介入も辞さない思想。1970年代以降に米国において民主党のリベラルタカ派から独自の発展をした。それまで民主党支持者や党員だったが、以降に共和党支持に転向して共和党のタカ派外交政策姿勢に非常に大きな影響を与えている

保守でありながらイデオロギーが前面に出る、その名称自体に形容矛盾を抱えた不思議な勢力である。つまり、操り人形のこころを読むことは諦めて、系を発見してその出どころを探すことが、理解には必要だろう。

2021年12月15日水曜日

ロシアとの軍事協力体制の樹立はインドにとって賢明な判断だろう

インドが、軍事や経済の面でロシアと協力体制を築くと言う話が、及川幸久氏により流された昨夜のサプライズニュースだった。ロシアからインドへのS-400地対空ミサイルシステムの供与が、開始されたというのである。

 

そこに紹介されていたWSJ(ウォールストリートジャーナル)の記事には、「Russia, India Cement Military Ties Despite U.S. Pressure」という表題が付けられている。https://www.wsj.com/articles/russia-india-cement-military-ties-despite-u-s-pressure-11638817730

 

Cement Millitary Ties “堅牢な軍事協力体制”という言葉が印象的であり、将来軍事同盟に発展する可能性すら存在するだろう。それは米国からの圧力を跳ね除けてのモディ首相の決断であった。https://www.youtube.com/watch?v=9WKXYYpQrCs

 

 

 

現在米国では、プーチンのロシアがウクライナとの国境付近に大軍(10数万人の兵士)を集結させていることへの批判が高まっている。バイデン大統領による警告(補足1)を無視して、プーチンはロシアを離れインドのモディ首相を訪問したのだった。

 

そして、2025年までに貿易額を3倍(300億ドル)にすること、外務防衛両相の2+2会談を始めること、S-400地対空ミサイルシステムをインドに導入すること、を発表した。貿易では、ドル決済システムから離れて自国通過で決済するとのことである。

 

この動画に、以下のコメントを投稿した:

 

大きな時代の流れを感じる。米国DSそして世界経済フォーラムに関係するグローバリストたちの世界支配のプログラムに対する新たな障害が現れたことになる。中国の習近平が倒され、米国グローバリストと中国共産党が手を組み直しても、この困難は残る。モディ首相も日本の総理とは大違いの知的に優れた人だったようだ。馬渕睦夫さんの意見がまもなく出てくるだろうと思うので、是非聞いてみたい。

 

ロシアと中国は同盟関係にはなり得ないことは、地政学的常識として認識されている。最近両国が対米関係において協力しているが、プーチンは中国とは同盟関係にないと明言している。中国にとっては、今回のロシアとインドの間の軍事協力はさぞかしショッキングなことだろう。

 

2)米国の国際政治における地位の低下:

 

米国と同盟関係にある欧州、日本、韓国などは、米国の国際社会における相対的地位の低下を考えて、将来の外交・防衛問題を考える必要がある。

 

2019年に米国からの警告にも拘らずNATO加盟国の一つのトルコが、ロシアからS-400ミサイルシステムを導入した。そして202012月、トランプ大統領時代の米国から制裁を受けた。(上記動画で及川氏が紹介している。)https://www.jetro.go.jp/biznews/2020/12/ba2e60b6f5ec5cd0.html

 

トルコがロシアからミサイルシステムを導入したのは、NATOに盤石の信頼が置けないからである。中東に近いトルコは、シリア問題などで明らかなように、米国とも時として衝突する。それに加え、米国はトルコよりも絶対的に重視する国が中東に存在する。それらの事情もあるが、トルコによる警告無視の背景には、米国の力の減退があるだろう。

 

今回、インドのモディ首相が米国の警告を無視してロシアと軍事協力した背景には、バイデン民主党の“隠れた親中の思い”も関係していると思う。「米国がインドの対中防衛に協力してどのような得があるか?」を考えた上での、冷静な決断だろう。

 

インドはQUADの一角であるとの表現もあるが、AUCUS(英米豪の同盟)は同盟だが、QUADは協力を話し合うという程度の関係である。対中国関係が非常に深刻化している現在、QUADでは十分役立たないと判断し、ロシアとの軍事協力関係を樹立したのだろう。

 

このあたりのことは、日本は深刻に考えるべきである。ロシアにとっても、日本にとっても潜在敵国は中国であるなら、日露の接近のポテンシャルは当然存在する。それに北方領土問題という楔を打ち込んで、妨害しているのは米国であることをもっと日本は知るべきだ。

 

北方領土問題:https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12466516752.html

宮家内閣参与は米国の味方:https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12466516600.html

(18:00、小編集あり)

 

補足:

 

1)ウクライナ問題は、米国民主党政権とロシアの対立現象の一つである。ウクライナをロシアから引き離して欧米側に迎えるというのが、米国民主党政権の方針であり、その作戦の一つとして2014年、ヤヌコーヴィチ政権へのクーデター工作を行ったという説がある。そのオバマ時代のウクライナ政策責任者がバイデンであった。数日前の及川さんyoutubeでは、この2014年の件には触れていないが、全体的に参考になるので引用する。因みに、ウクライナガス会社の重役にバイデンの息子がなったりして、バイデン一家は当時多大の経済的利権を得た。https://www.youtube.com/watch?v=53I4KyxUat4

2021年12月12日日曜日

中国人民の月収分布

中華人民共和国(以下中国)の国務院総理である李克強が、月収1000元以内の国民が約6億いるといって、一時話題になったことがあった。しかし、中国人の爆買いなどで、中国の経済発展が相当進んでいることを実感していた我々には若干意外だった。

 

しかしその後、6億人と言っても赤ちゃんも青少年や老人も含めての話であり、勘違いしてはいけないという指摘が中国専門家の遠藤誉氏よりなされた。そして、習近平との政争の中での発言であったことも影響して、今ひとつ頭に残らなかった。

https://news.yahoo.co.jp/byline/endohomare/20211109-00267232

 

しかし、12月10日のEpock Timesが提供する新聞看点というyoutubeサイトで、李沐陽氏が中国経済の今後には暗雲が立ち込めているという内容の話の中で、月収分布という形でかなり詳細なデータを紹介した。中国の大手投資会社の中金公司(公司とは中国語で会社の意味)が、全人口を月収で11の層に分け、そこへの分布を公表したのである。それにより、李総理の発言の意味が正確にわかるようになった。

https://www.youtube.com/watch?v=vIYbFP0oFIs (640〜)

上に引用の李沐陽氏の6:40からの話は、2億2000万人余りの月収が500人民元未満だというデータ紹介で始まる。

 

表によれば、中国では月収0の人が546万人居る。未就学児童や老人の人口を合わせば、数億人になることを考えると、ここでの月収は世帯の収入を世帯人数で割った値としての一人当たり月収と考えられる。また、それ以外には考えられない。(補足1)

 

つまり、上に引用の遠藤誉さんの言葉も不正確だったことがわかる。(追補1)おそらく、中国では世帯や家族という単位が、現代日本の家族などより明確であり、おそらく個人よりも重要な単位として存在するのだろう。一人当たりの月収を議論する際、日本なら家族単位で考えるという定義を予め示す必要があるが、中国ではそうではないのだろう。(補足2)

 

このデータ紹介が本ブログ記事の目的である。それだけで終わるのは貧弱なので、そのデータからジニー係数などを計算してみたので紹介する。

 

因みに、ジニー係数とは全人口の所得を下位から積み上げたグラフの両軸を1.0で規格化した曲線(ローレンツ曲線)から計算した所得の不平等分配を表す指数である。引用のウィキペディアの記事によれば、0.4以上が社会騒乱多発の警戒ラインである。(補足3)

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%83%8B%E4%BF%82%E6%95%B0

 

下にその分布と解析図を示す。右上のグラフが月収分布曲線であり、縦軸は人数(億人)横軸は月収(人民元;一元はほぼ17日本円)

 

ここでは、月収500 元以上800元未満を800にラベルして示している。更に、二万元以上を仮に3万元として示した。月収二万元以上の人たちの収入分布は、特に大きな範囲に亘っているだろう。この部分の平均月収は、中国人民の暮らしむき(経済ではなく)を考える上でそれほど大きな意味を持たないが、ジニー係数には大きく効く。

 

図右下のローレンツ曲線から計算したジニー係数は0.476である。財務省の広報誌「ファイナンス」に発表された「中国における格差」という論文(2019年)には、各国のジニー係数が図示されており、その図を読めば2017年の値は0.48である。(因みに日本は約0.34である。)

https://www.mof.go.jp/public_relations/finance/201903/201903l.pdf

 

以上から、上記月収分布のデータが、ほとんど正確に中国人民の経済状況を表していることになる。今日はデータとその簡易的な分析を示して終わる。

 

尚、最初の李沐陽氏のyoutube動画は、今後の中国経済には暗雲が垂れ込めているという内容である。この中国の景気後退は、最初恒大不動産の倒産から不動産不況の形で始まるだろう。

 

 

この影響を、日米欧などはどのように受け、反専制主義を現在掲げている民主国のネットワークが、今後どれだけ維持できるか解らない。兎に角、来年は大変な年になると思う。

 

(18:00 編集、追補1を追加し、補足番号を整理)

 

補足:

 

1)月収0元の人とは、完全に自給自足で生きている少数民族だろう。自給自足とぶつぶつ交換では、月収として計上されない。0から500元も多くは自給自足にたよる農村部だろう。月収8500円は少ないようだが、日本の1950年台の農村部&大家族の家ではかなりあったと思う。

 

2)「こどもの貧困」が現代日本の問題として提起されているが、これも正しくは子供の親の貧困である。https://kodomohinkon.go.jp/hinkon/ また、最近の年収960万円以下の家庭の子供に10万円配るという話でも、政府与党は世帯の年収という言葉の定義を曖昧にして混乱を引き起こした。

https://news.yahoo.co.jp/articles/104dc7a4d5246063e9ee6292af30d74fd79f683c あらゆる問題に言えることだが、本質的な解決にはゼロから考える必要がある。そしてその為には、必然として言葉の定義には慎重且つ厳格でなければならない。https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12466515785.html

 

3)ジニ係数は所得再分配後の値を示すのが普通であるが、時たま再分配前の値が出ることもあるので注意が必要。再分配とは、富者から税金をとり貧者に分配する制度である。社会保障や公的負担を通じて行われる。世界のジニ係数(再分配後)は以下のサイトにある。

http://top10.sakura.ne.jp/CIA-RANK2172R.html

 

追補1)遠藤さんの記事内では、”「働いている人の月収が1000元程度」と言っているのではなく、働いている人の世帯人口で割り算した一人当たりの収入を指している。”と書かれている。

この文の意味は、後で読み返して上記定義と同じだと分かった。「世帯人口」ではなく、「世帯の人数」と書いてあれば、さっと読んだとき誤解しなかっただろう。この点で誤解があれば謝ります。

2021年12月9日木曜日

マグニツキー法制定はC国に対する内政干渉になるのか?

125日の記事「日本に人権外交をする資格は? マグニツキー法んが制定できる国になるべき」に、米国在住の方よりコメントを頂いた(姉妹サイト)。そこには以下のように書かれている。

 

マグニツキー法は人権侵害のある他国への罰ではなく、国際間の貿易法です。だから他国の法や内政には関与していない。この法の前の法に、ロシアがユダヤ系のイスラエル移民を妨害しないことを一つの条件としてロシアを貿易優待国にする、というのがあり、その延長戦上でマグニツキー氏の死に責任ある人や組織の米国内での金融活動をさせない、という法です。

 

コメントへの返答としては、議論が長くなるので、別記事としてここに掲載することにした。マグニツキーの死以前に、古いバージョンがあったとの情報は、先ずは勉強になる。この指摘文の中での“国際間の貿易法”というのは、おそらく貿易に関する国際協定の例外規定(GATT21条など)という意味だと思う。その前提で以下議論する。自分の勉強結果をそのままブログ記事にしたので、冗長になっている点ご了承ください。

 

 

1)WTO協定:

 

国際間の貿易に関してはWTO協定が重要である。その前段階的な条約としてGATT(関税と貿易に関する一般協定)がある。両方とも現役の国際協定である。GATTは、工業製品の貿易について、加盟国に最恵国待遇(補足1)を与えるという条項が重要である。

 

WTOでは、サービス業や知的所有権についてまで対象範囲を拡大している点、そして協定だけでなくそれを実施する機関を運営する点が、GATTとの大きな違いである。この発展過程及びGATTWTOの関係については、以下のサイト参照。https://liberal-arts-guide.com/gatt/

 

WTOで、自由貿易の方向への協定つくりが進まなかったので、二国或いはそれ以上の国家間で自由貿易協定が結ばれることになった。例えばNAFTAからUSMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)に代わった北米での自由貿易協定などである。(補足2)

 

WTO加盟国が他のすべての加盟国に最恵国待遇を与えるというのは、USMCAなどローカルな自由貿易協定が存在することから考えて、原則論でしかないことがわかる。更に、“加盟国による正当な国内政策の実施を縛るものではない”ので、例えば安全保障に関する国内政策と結びつけて、貿易障壁を設けることなどが可能である。これは、安全保障例外と呼ばれる。(GATT 21 条)

https://www.meti.go.jp/committee/summary/0004532/pdf/2016_02_04.pd

 

マグニツキー法の位置は、おそらく上記安全保障例外のような国内政策上の要請からの例外規定と理解できる。つまり、「人権重視は米国の国是であり、その部分に瑕疵のある国には最恵国待遇は与えられない」という考えに基づくものである。

 

 

2)マグニツキー法制定が関係相手国の内政干渉になるのか?

 

GATTWTOは、経済のブロック化や孤立化などで、将来重大な国際紛争の原因とエネルギーが国際間に蓄積しないようにするため、国際間の経済関係を拡大する目的で制定・設立された。従って、例外を設けてでも、経済交流を重視する規定が設けられたのだろう。

 

ソ連が崩壊しロシアとなっても真の民主主義体制は一朝一夕には完成しない。そのためロシアは、かなり専制主義的な政治体制で漸く国家としての安定を保っているだろう。この国に対しても、WTO加盟を許したのは、将来民主主義や人権尊重といった近代政治文化の発展がロシアに期待されるからだろう。

 

この場合、それら近代西欧の価値基準が定着することに(将来に)期待するか、現在の人権軽視を問題視するかで対応が異なる。将来、民主的な国家群を形成する仲間となる期待が薄いのなら、マグニツキー法などで現状重視の姿勢で望むことになるだろう。

 

それは間接的だが、反体制派を擁護することになり、ロシアの崩壊と内戦につながる可能性がある。その意味で内政干渉になると前回の記事に書いた。

 

更に、主権国家体制や民主主義といった近代の西欧政治文化を受け入れる予定のない国に対して、WTOが門戸開放をするのは、西欧先進国にとっては非常に危険である。相手国の経済発展を手助けることで、国際社会の価値(民主や人権重視)を崩壊させられる危険性がある。それが当に、中国共産党政権(C国)の超限戦(補足3)による中華グローバル帝国を作り上げる企みに対する危惧である。

 

この問題の根本には、米国のウォール街を中心にしたグローバル化勢力が、WTOを用いて、中国共産党政権(以下C国)と彼等の経済的巨大化のために協力したことにある。つまり、独裁政権下、奴隷労働で安く工業製品を製造する国をWTOに加盟させ最恵国待遇を与えると、当然その国は非常に有利に貿易を行い、WTO加盟国の産業は打撃を受ける。

 

その稼いだ金で軍事力を整備して、世界制覇をこころみるような事態になれば、人類の未来は暗い。米国がもしこの過ちに気付いたというのなら、マグニツキー法をC国に適用するのは賢明だろう。敵対国と決まってしまえば、その国の内政に干渉するなどの諜報活動は当然である。

 

日本がC国を対象に“マグニツキー法”を制定するには、安全保障の問題を熟慮する必要がある。日本が一人前の独立国になって、その問題がクリアされるまで、その制定は無理だろう。この点の指摘が125日の記事の内容であった。

 

3)マグニツキー法の適用は冷戦的対応である

 

マグニツキー法”(英国等を含む)は、国内における貿易及び国際金融取引上の活動に影響力を持つ国内法だと思う。従って、国内に存在する外国人の財産や、外国人の入国審査などを対象にする。裁判は国内の裁判所が担当するが、証拠の収集はまともに出来ない以上、最初から明らかな事実がなければまともな裁判は出来ない。

 

例えばC国共産党員が、ウイグルの人権抑圧に関係したとして銀行口座を凍結されたとして、そんな事実は無いと米国の裁判所に訴えたとする。しかし、C国がウイグルでの人権抑圧などの事実について正確な情報公開をしなければ、まともな裁判など出来ないだろう。従って、“マグニツキー法”の制定とそのC国及びC国共産党員への適用は、超法規的に行うことになるだろう。つまり、冷戦的対応にならざるを得ない。

 

つまり、マグニツキー法は国内法だが、特定の国とその国民に対して適用される。名目上は、他国或いは他国民が関与する国内経済活動や入国管理に関して、自国の価値観で規制を掛けるだけだと言えるだろう。しかしその規制は、対象国の複数の政治勢力の一部を冷遇することになり、実質的にその国の内政に影響を及ぼす。

 

しかし、このような法律を特別に制定しなければならない程、C国の人権に関する価値観が米国のものと著しく異なるのなら、WTOに加盟の段階で考慮すべきことだった。

以上、現在各国で進行している“マグニツキー法”の制定は、民主主義圏と言われる米国を中心とした国家の集まりによる、C支配層を国際経済活動において冷遇する、冷戦的対応である。

 

(17:30 全体を編集しました。)

 

補足:

 

1)関税など貿易条件において、第三国以下の待遇を適用しないという規定。WTO加盟国でありながら、相手国が第三国(WTO加盟国であってもなくても)と自由貿易協定などを結ぶと、WTO条項違反となる。ただ、それが安全保障や特別な事情によることが説明できれば、WTO条項違反にはならない。それが例外条項である。

 

2)EUのように政治と経済を含めた協定があり、最終的には加盟国は主権国家と呼べなくなる方向に進む可能性がある。更に、EUと日本の間のEPA協定なども出来、WTOは経済交流拡大のための協定のベース部分を為すことになったと思う。

 

3)中国空軍の喬良、王湘穂は、今後の中国が行う戦争を、あらゆる手段で制約無く戦うものとして捉え、超限戦と名付けた。(ウィキペディア参照)

 

2021年12月6日月曜日

モンティ・ホール問題について

モンティ・ホール問題とは:
3つの見た目が同じ箱A, B, Cがあり、ホストがその内一つに当たりくじ、残り二つにハズレくじを入れる。その準備はゲストに隠して行う。
1)ゲストが最初に3つの内一つを選ぶ。箱は開けないでおく。
2)その後、ホストが残り二つの内、ハズレくじが入った箱を開けて(つまりホストは当たりの箱を知っている)、そこでゲストに「選択を変えても良いですよ」という。
3)ここで、最初の選択を変えないままにしたほうが、当たりの確率が大きいか、選択を変えた方が当たりの確率が大きいか、どちらでしょうか?
という問題である。

正解は、変えた方の当たりの確率が2/3で、変えない場合の倍である。

ウィキペディアの解説に以下の様に書かれている。
1990年9月9日発行、ニュース雑誌「Parade」にてマリリン・ボス・サヴァントが連載するコラム「マリリンにおまかせ」で、上記の読者投稿による質問に「正解は『ドア(本ブログでは箱)を変更する』である。なぜなら、ドアを変更した場合には景品を当てる確率が2倍になるからだ」と回答。すると直後から、読者からの「彼女の解答は間違っている」との約1万通の投書が殺到し、本問題は大議論に発展した。

投書には、1000人近い博士号保持者からのものも含まれていた。その大部分は「ドアを変えても確率は五分五分(2分の1)であり、3分の2にはならない」とするものであった。サヴァントは投書への反論を試み、同年12月2日、数通の反論の手紙を紹介した。

この騒動が面白くて、本ブログで紹介することにした。この問題を知ったのは、何時も中国問題について興味ある情報を配信している妙佛DEEP MAXというyoutubeサイトの中で、余談として紹介された時である。以下の動画の8分10秒あたりから始まる。

 


ここで大事なポイントは、ホストがハズレひとつを開けた後「選択を変えても良いですよ」と言ったとき、残り二つから「改めて選択する」のではなく、①最初の選択を変える場合と②変えない場合のどちらかから選ぶ点である。ここで、「改めて選択する」の意味は、最初の選択を忘れ、新たな2択問題とする場合で、当たりくじを手にする確率は1/2となる。

① ホストがハズレの箱を開けたあと「選択を変える」と予め決めて居た場合:

最初にゲストが正解の箱を選択した場合、ホストが次にハズレの箱を一つ開けたあと、必ず残りのハズレを選択する。一方、最初にゲストがハズレを選択した場合、次にホストが必ずハズレを選択してくれるので、ゲストは最初の選択を変えて、必ず当たりを選択できる。従って、正解の確率は3つの箱から最初にハズレを選択する確率の2/3となる。

② ホストがハズレの箱を開けたあとも「選択を変えない」と予め決めて居た場合:

正解の箱を当てるのは最初の選択で決まるので、その確率は1/3となる。

これだけの話なのに、誤解して10000通もの投書が届いたのは、問題を正しく言葉で伝達することがなかなか難しいということを示している。

ホストがハズレを選択して除外したあと言う「選択を変えても良いですよ」の言葉は、「選択を変えても変えなくても良い」の意味だが、人は得てして「自分が現在当たりを選択しているので、ハズレの方に誘導しているのだろう」と考えガチである。

ウィキペディアでは、この点からこの問題を「一種の心理トリックになっており、確率論から導かれる結果を説明されても、なお納得しない者が少なくないことから、本項~プロブレムの他、~ジレンマあるいは~パラドックスとも称される」と記述している。

(おわり;なお追補は削除しました;15:30;ややこしい表現に消去線を入れました;翌日13時)

 

 

2021年12月5日日曜日

日本に人権外交をする資格は? マグニツキー法が制定できる国になるべき

1)マグニツキー法の制定

 

ロシア税務当局による汚職を暴き、獄中で死亡した税務弁護士セルゲイ・マグニツキーを念頭に、人権無視の組織や個人を罰するために所謂マグニツキー法が2012年に米国で制定された。

 

この法律の特徴は、米国の内政の及ばない国や地域での出来事を対象に処罰する点である。人権無視の政策に携わった組織や政権幹部などが米国内に保持する財産を差し押さえたり、個人の入国を制限するなどが処罰の内容となる。

 

セルゲイ・マグニツキーは、何らかの犯罪の疑いで刑務所に収容され、刑務所内で色々な病気になった。その治療を受けさせてもらえず、更に暴行を受けて一年ほどして死亡したと言われる。ロシアは未だこのような人権無視・非合法なやり方で、政治の安定を確保している。

 

国内犯の場合、検察などの捜査で証拠が集められ、その後裁判で有罪の判決がなければ、どのような犯罪も処罰されない。しかし、米国と雖も、ロシアの刑務所内の出来事について、まともな捜査が出来る筈はない。

 

従って、この法の制定と適用は、単なる犯罪処罰というより外交上の敵対措置という色彩が強い。必然として外交問題に発展するので、それを念頭において制定される。この法律は、20世紀の西欧的政治文化を逸脱するものである。(勿論、21世紀の地球規模の政治文化の主流となるべきと言えるかもしれない。)

 

つまり、主権国家体制の下では、他国の内政には干渉しないという原則があるが、それに反しているのである。ロシアの政治を担う人たちに人権思想や遵法精神が乏しいと言えるのだが、それでも他国の内政に干渉することは、20世紀の国際法の思想からは逸脱していると私は思う。

 

法治の原則が可能となるには、相応の文化的文明的素地が必要である。例えば半世紀遅れた政治文化しか根付いていない国家が、政治的安定を得るために超法規的措置を取らざるを得ない場合があるだろう。それを、強力な経済力と軍事力を持つ先進国が、その周囲を取り巻く国家群に見せつける形で制裁するのがマグニツキー法の本質である。

 

特定の国を対象に、”所謂マグニツキー法”を制定し施行することは、本来政治文化上での途上国である敵対国に対する冷戦的対応である。

 

 

2)中国共産党政府の人権無視と各国の“マグニツキー法”の制定、そして日本政府の跛行外交

 

中国共産党政権によるウイグル人の人権無視政策が、国際的に非難の的になっている。米国トランプ政権によって、中国共産党政権の人権無視の姿勢が鮮明に浮き彫りされ、香港の民主政治も廃止されることになった。更に、台湾侵攻の意思表明などもあって、米国を始めとする“民主主義国”との対立が深刻なレベルになっている。(””は無駄に付けた訳ではない。)

 

米国は、上記マグニツキー法の対象国として、当初のロシアの他に中国も含める措置をとることになり、また英国、EU、カナダも同様のグローバルに人権保護を謳う法律(各国版のマグニツキー法)を制定した。そして最近、オーストラリアも豪州版マグニツキー法を制定することになった。

 

 

何れの場合も、中国の外に出なければ拘束などされる訳ではないが、この法律を施行している国に持っている財産の凍結や、その国への入国制限などの制裁措置が取られることになる。

 

今後日本が同様の法律の制定に動くかどうかが、国際的に注目されている。①「もし、主要な自由主義国の中で日本だけが制定しないとなると、日本が中国共産党幹部の財産の隠し場所になる可能性がある」と、岸田内閣が新設した国際人権問題担当首相補佐官の中谷元・元防衛相は話していた。https://mainichi.jp/premier/politics/articles/20210513/pol/00m/010/002000c

 

その中谷氏は、「制裁に伴ってどういうことが起こるかしっかり検証しないといけない。日本は対話と協力で(中国との様々な問題に)対応してきた」と、24日のBS11TV番組で、自身の主張をトーンダウンさせた。https://www.jiji.com/jc/article?k=2021112800101&g=pol

 

私は、出来るなら日本もマグニツキー法(日本版)を制定すべきだと思う。その法律には、特定の国家や個人を明示する必要などないので、もし日本が普通の国なら、他国に一切遠慮する必要は無いと思う。セクション1)に示したように、平和な時代の主権国家体制堅持の原則に反するかもしれないが、ここでは民主主義の国々と歩調を合わすべきだろう。

 

しかし、日本は普通の国ではない。それに気付かなかったのが、中谷元氏であり彼を新設した国際人権問題担当首相補佐官に指名した岸田新首相である。

 

法案に特定の対象が書かれてなくても、ウイグルや香港などでの人権侵害に対して憂慮の念を中国に伝達してきた以上、差し当たり中国共産党現政権や共産党幹部が対象になっていることは明らかである。従って、制定には中国と深刻な対立関係を覚悟する必要がある。

 

もし日本が日本版マグニツキー法を制定すれば、中国からは例えば「チベットや香港の問題に干渉するのは、内政干渉である。そのような外交をとるのなら、日中平和友好条約の破棄も考えざるを得ない」など、強い反発が予想される。

 

つまり、「このレベルの中国との対立を想定してでも、この種の法案を政府から提出する覚悟があるのか」と、誰かが岸田総理に尋ねたのだろう。中谷元氏のトーンダウンも、このような指摘があったことが原因だろう。

 

岸田内閣内には外交の専門家と名乗る人も居る。その人が閣内でまともな議論をしていれば、中谷氏の華麗な発言と、その後の無様はトーンダウンは無かっただろう。ひょっとして、中国関係者からの声が何らかの形で岸田内閣に届いたのかもしれない。

 

日本が第一に優先ですべきことは、日本の防衛体制をまともな独立国のものに改正すべきことである。そのために、憲法改正案を国会に即刻提出すべきである。議論は、それからすれば良い。それが現在の自民党議員にできないのは、安定な家業である政治屋という職業を失う危険があるからである。その程度の人たちが日本の中枢を形成しているのである。

 

3)日本は先ず、まともな国家になるべきである

 

日本政府の無様な外交を指摘すれば山程あるだろう。それらは全て、知的能力の低い元代議士の二世や三世が家業の政治屋を相続したことと、どこかの有名大学を猛勉強で入学した人たちだけで日本国の官僚組織を占有していることとの結果かもしれない。

 

例えば、フランスから本音を日本に投げてくる2チャンネルの創始者や、知事になり公営バスの運転手の給与を民間並みに強引に値下げした弁護士の方など多彩な本音を語る人たちが永田町や霞が関に多くなれば、日本は変わるだろう。人材がいない訳ではないし、国会内にも多少は居るだろう。

 

今更遅いかもしれないが、国民がめざめることである。そのためには、テレビと新聞をやめて、インターネットで情報を得るようにするべきかもしれない。兎に角、即刻憲法改正案を国会あるいは内閣から提出すべきだ。そのあと議論になれば、国民も少しは考えるだろう。

 

付録:

 

最後に、中国問題として国防動員法に関するメモを残す。国防動員法とは、国家(中国共産党)がイザとなれば、全世界の中国人を夫々の現地で戦闘行為などに動員させる法律である。

 

この他国の内政を無視する法律を制定した国家の民を対象に、日本政府はまともに考えないで多数の日本在留ビザを発行している。現在100万人以上が日本国内に在留するのである。https://kamome.5ch.net/test/read.cgi/news4plus/1306144259

 

山谷えり子参議院議員(伊藤貫氏の姉)が、国防動員法に関して内閣に質問した記録が公表されているので、その一部を記載する。この問題は単独でブログに取り上げたかったが、そのような根気は現在持っていないので、このメモだけにする。

 

中国における国防動員法に関する質問主意書から一部抜粋:

 

本法により、中国国内はもちろん海外在住の中国人も動員の対象となるだけではなく、中国国内で活動する外国企業や居留権を有する外国人も、動員・徴用の対象となる可能性がある。そこで以下のとおり質問する。

 

一 本法により、日本に在住する約六十五万人の中国人は、中国政府の命令で動員され、中国に進出している日本企業は中国政府の命令で動員・徴用の対象となることも考えられる。日本政府として本法が日本に在住する中国人及び中国に進出している日本企業に適用されると分析しているのか示されたい。

 

二 中国に進出している外国企業の施設、物資の徴用を可能にしているが、在中国の日本企業などにも適用されると考えるか、日本政府の見解を示されたい。また、適用される場合、日本の主権はもちろんのこと、中国に多数進出している日本企業を守る日本政府の防護策についても示されたい。

 

三 本法第四十九条では、「満十八歳から満六十歳の男性公民と満十八歳から満五十五歳までの女性公民は国防役務を担当しなければならない」と規定されている。この「公民」には日本在住の中国人も含まれるが、現在、本条に該当する日本在住の中国人が何人いるのか示されたい。https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/syuisyo/177/syuh/s177044.htm

 

内閣総理大臣菅直人からの答弁: 

御指摘の「国防動員法」は、他国の法律であることから、同法律の個々の規定の解釈について、政府としてお答えすることは差し控えたい。なお、平成二十一年十二月末日時点で、外国人登録法(昭和二十七年法律第百二十五号)により外国人登録原票に登録された国籍を中国としている外国人のうち、十八歳から六十歳までの男性は二十五万七十八人、十八歳から五十五歳までの女性は三十五万二千二百七十四人である。https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/syuisyo/177/touh/t177044.htm

(12/5/18:00 文章の文法上の誤りや、単純ミスの修正をおこなった)おわり。